エミリー・アームストロング(LINKIN PARK)の歌声はどう変わった?Dead Saraの生々しさから、自分の声を生かすまで

2026年9月24日、「Unshatter」プレミアでのエミリー・アームストロング(Jerritt Clark/Getty for Warner Records) エミリー・アームストロング
2026年9月24日、「Unshatter」プレミアでのエミリー・アームストロング(Jerritt Clark/Getty for Warner Records)

エミリー・アームストロングの歌を知ったのが、リンキン・パークの再始動だった人も多いでしょう。
ただ、あの声には、Dead Saraで仲間と音をぶつけながら曲を作ってきた長い背景があります。
その歩みをたどると、叫びの迫力を生かす場面と、曲に合わせて声の役割を選ぶ場面の両方が見えてきます。

2025年に発表された「Unshatter」は、その接点を示す一曲です。
『FROM ZERO』の制作初期に録音された曲で、エミリーの大きな歌声が、新しい編成の可能性をメンバーに感じさせたと紹介されています。
それまで育ててきた声が、新しい仲間の曲の中でどう働いたのか。
Dead Sara時代から曲作りを振り返ると、その声が新しい場所へ届いた理由も見えてきます。

「Unshatter」公式ビジュアライザー(2025年)。

2012年のDead Sara――ライブの生々しさを、そのままレコードへ

Dead Saraのデビューアルバムが出た2012年、エミリーは、まずライブで求める音を録音に持ち込みたかったと説明しています。
ファンからも、生々しい部分をもっと聴きたいという声があったそうです。

代表曲「Weatherman」の作り方にも、その姿勢が表れています。
ギタリストのSiouxsie Medleyが出したリフにエミリーが歌い、メンバーが演奏を重ねて骨組みを作ったと、二人は振り返っています。
そこへベースのフレーズが加わると、同じリフを繰り返すだけだった曲に、別の展開が生まれました。
完成した伴奏へ歌を載せる前から、声がほかの楽器と一緒に曲を動かしていたのです。

面白いのは、その場で歌った言葉を、エミリー自身は後で変えようとしていたことです。
ところが、メンバーはそのフレーズを気に入り、残すことを強く勧めました。
彼女は即興の言葉を起点に、何を意味する歌にするかを考えていったといいます。
歌う本人のひらめきを、仲間の反応が一曲へ育てた例でしょう。

同年には、リフから始まったジャムを録音し、気に入った部分を取り出して曲にする方法も話しています。
歌詞は自分で書き、リハーサルで生まれる曲の雰囲気から言葉が引き出されるという説明でした。
当時の彼女にとって、歌うことと、自分で言葉を見つけることは深く結びついていました。

この時期の強さは、大きな声を出せるという能力だけでは説明しきれません。
仲間の音に反応し、その場で歌いたくなるフレーズをつかむこと。
エミリーの歌の出発点には、そうしたバンドの呼吸があります。

Dead Sara「Weatherman」公式MV(2012年)。

2018年――ポップな要素を加え、歌の置き場所を広げる

2018年のEP『Temporary Things Taking Up Space』では、制作にほかの書き手やプロデューサーも加わりました。
エミリーは、新作にはポップな要素が加わったと話しています。
自分をよりさらけ出し、多くの人が重ねられる物語を曲に込めることも、この作品について語った点でした。

Dead Sara「Anybody」公式MV(2018年)。

収録曲「Anybody」は、通常の録音に加えて、編成を絞った「Stripped」版でも披露しました。
一つの曲を、異なる伴奏の形で届けたわけです。
本人が語る、より自分をさらけ出した曲作りと合わせて考えると、強い声を持つ人が、何を歌として伝えたいかに踏み込んでいく時期と捉えられます。

「Anybody」Stripped版(2018年)。

ただし、ポップな要素が加わったからといって、ライブの勢いを手放したわけではありません。
会場の空気やその日の感覚によって歌う言葉が変わることも、当時話しています。
他の書き手と作品を作る経験を増やしながら、その場で生まれる歌も大切にしていました。

2018年のIMPRINT本人取材に掲載されたエミリー・アームストロング(Luke Usry撮影)
2018年のIMPRINT本人取材に掲載されたエミリー・アームストロング(Luke Usry撮影)。
画像出典:画像掲載元

2024年――共同ボーカルとして、新しい曲を一緒に作る

2024年9月、エミリーはリンキン・パークの共同ボーカルとして発表されました。
公式の紹介によると、仲間同士のセッションが録音へ発展し、アルバム『FROM ZERO』が形になっていったといいます。
「The Emptiness Machine」は、その新しい編成を示した最初の新曲です。

同年、エミリーはDead Saraでの作曲を、部屋で一緒に演奏し、まず雰囲気を作ってから歌詞を考える方法だったと振り返っています。
一方、リンキン・パークでは、一つの音から作業の方向が変わる日もあれば、言葉のフレーズから進む日もあったと、マイク・シノダが話しています。
エミリー自身は、小さなアイデアが皆の共同作業によって大きくなることを、新しい制作の楽しさとして挙げました。
バンドの演奏から歌をつかむ直感を、より多様な出発点のある制作へ持ち込んだのです。

「The Emptiness Machine」公式MV(2024年)。

その違いが具体的に分かるのが「Heavy Is the Crown」です。
マイクによると、サビの言葉は、リンキン・パークの再始動より前に別の依頼を受けて書いたものがもとでした。
数か月後、新しいデモにその言葉を試し、エミリーが歌った時、皆が良いと感じたそうです。
初期の「Weatherman」が、即興で出た彼女の言葉を仲間が残した曲なら、こちらは以前からある言葉が、彼女の歌で新しい曲として動き出した例です。

2012年に語った、自分で歌詞を書いて歌う姿勢から、他の人の言葉にも自分の声を生かす共同作業へ。
単に所属するバンドが変わっただけでなく、歌が生まれる過程で担う役割にも広がりが見えます。

「Heavy Is the Crown」公式MV(2024年・Worlds 2024アニメーション映像)。

その共同作業の手応えを示すのが、冒頭の「Unshatter」です。
発表は2025年ですが、録音は『FROM ZERO』制作の初期にさかのぼります。
後から歌唱力を証明するために加えた曲というより、新しい仲間と何ができるかを見いだした過程にあった曲といえるでしょう。

既存曲では、キーを合わせながら「自分の歌」を探した

新曲を作ることと、チェスター・ベニントンが歌った既存曲を引き受けることには、違う難しさがありました。
その準備を伝えるのが、2026年公開のドキュメンタリー『Unshatter』と、それに合わせたPEOPLEの取材です。

ドラマーのコリン・ブリテンは映画の中で、エミリーと数か月にわたって曲を練習し、歌いやすさと元の曲のエネルギーを両立するため、キーを何度も試したと語っています。
ジョー・ハーンはPEOPLEに、初めに取り組んだ曲として「Crawling」を挙げました。
目指したのは、エミリー自身の解釈で歌える形だったといいます。

エミリーも、誰もが知っている歌を自分が引き受けられるのか、不安があったことを話しています。
そのうえで目標にしたのは、リンキン・パークのファンとして自分が受け取ったのと同じような感情を、聴き手に届けることでした。
チェスターの歌い方をそのまま写すことより、曲が人の心を動かす力を、自分の歌でも伝えたいという考えです。

ジョーの説明では、「Crawling」を彼女なりに歌えると分かったことが、その後の曲にも取り組めるという手応えにつながりました。
キーの調整は、ただ高い音を楽に出すための変更とは限りません。
曲のエネルギーを保ち、エミリーが自分の表現として歌える場所を、仲間と一つずつ見つける作業だったのでしょう。

ここで変わったのは、声の使われる場所です。
自分たちの演奏から生まれた歌を届けるDead Sara時代から、すでに多くの人の記憶にある旋律を、自分の声に合わせて歌い直す役割へ。

2024年9月5日の再始動ライブでは、「Crawling」も披露されました。
2026年の取材は、この再始動へ向けた準備段階を振り返ったものです。

2024年9月5日の公式配信ライブ(10分17秒の「Crawling」から)。

2026年6月24日、スペイン公演でのデイヴ・ファレル、エミリー・アームストロング、マイク・シノダ(Mariano Regidor/Redferns)
2026年6月24日、スペイン公演でのデイヴ・ファレル、エミリー・アームストロング、マイク・シノダ(Mariano Regidor/Redferns)。
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エミリーの歩みには、持っている声をどう曲に生かすかを広げてきた過程があります。
ライブの勢いを録音へ持ち込むこと、ポップな曲の形を試すこと、新しい仲間の曲を作ること、既存曲のキーを合わせること。
それぞれの場面で声の役割を選んできたことが、リンキン・パークで歌う現在の背景になっています。

曲ごとの歌唱の工夫は、エミリー・アームストロングの歌い方で掘り下げています。

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