相羽あいなは、Roseliaに入る前、歌うことはとにかく声を出すことだと思っていたと話しています。
そこから発声を学び直し、湊友希那としての声を保ちながら、長く歌うための方法を探してきました。
2026年には、初期曲を歌い直す機会も訪れます。
本人が変化を感じたのは、高音だけでなく、中音域の表現やアクセントでした。
相羽の歩みは、声の強さを失わずに、使える響きと歌い方を増やしてきた過程としてたどれます。
「BLACK SHOUT」公式配信音源(2017年のシングル版)。
初期の歌には、そのときにしか出せなかった力がある
2017年の1stシングル「BLACK SHOUT」には、「LOUDER」も収められています。
相羽は後年、当時の歌い方には負担がかかる面があり、今、同じ発声をすることは難しいと振り返っています。
ただし、初期の歌を、直すべきものとしてだけ見ているわけではありません。
当時の気持ちの入り方にも、今に残したい良さを感じていました。
「LOUDER」公式配信音源(2017年の「BLACK SHOUT」収録曲)。
相羽が見直していたのは、発声の方法を変えながら、そのときの歌が持っていた熱を、どう残すかでした。
今の自分で扱える声と、当時の気持ちの入り方を、両方大切にしていたのです。

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声を出すことから、マイクへ届けることへ
相羽が学び直したのは、声をマイクへどう乗せるかという基礎でした。
2025年の取材では、ただ声を出しても十分に届くわけではないと気づき、自分とマイクの向き合い方が変わったと説明しています。
当初は、自分に何ができて、何ができないのかもわからず、Roseliaのために頑張ろうと必死だったそうです。
スタッフから言われたことを懸命にこなすところから、やがて、メンバーと改善の案を出し合うようになりました。
観客に喜んでもらうには、バンドとして一つになるには、何ができるか。
発声を学ぶこととともに、歌を届ける側として考える範囲も広がっていました。
歌いたい声があることと、その声を、音楽の中へ届けられることは同じではありません。
友希那として目指す響きを、録音でもライブでも使えるものにしていく必要がありました。
2023年の佐倉綾音との対談でも、相羽は、ボイストレーニングを通じて発声を変えてきたと話しています。
曲に求められる高音や表現が広がる中で、演じる声の印象と、自分が歌い続けられる方法を結びつけていました。
「R」から「FIRE BIRD」へ、自分の持ち味に気づく
その途中には、自分がボーカルに選ばれた理由さえ、わからなくなる時期もありました。
相羽によると、上松範康は歌を聴き、磨けばよくなると評価してくれた人です。
それでも本人は、芯の強さや張り、高音があっても、人より優れているものが自分にあるのかと迷っていたといいます。
気づきのきっかけになったのが、2018年の「R」でした。
用意された高音を歌うことで、相羽は、自分の持ち味を曲から教えられたように感じたそうです。
作り手から直接そう言われたのではなく、歌って初めて受け取った手応えでした。
「R」公式配信音源(2018年のシングル版)。
そして2019年の「FIRE BIRD」で、高音が自分の強みだとはっきり認識し、そこをさらに磨こうと考えるようになります。
初期から高い音は出していましたが、当時は今ほどロングトーンを意識していなかったとも振り返っています。
相羽は、長く声を聴いてきた上松や藤永龍太郎が、その持ち味を見抜いてくれたのではないかと話しました。
曲が求める歌へ取り組むことが、自分の声に何があるのかを知る機会にもなっていたのです。
「FIRE BIRD」公式配信音源(2019年のシングル版)。
「VIOLET LINE」のころには、同じ低音の聴かせ方も選べるように
2023年の「VIOLET LINE」の取材では、相羽は、自分に合う発声がつかめてきたと話しています。
同じ低い音でも、出し方によって重く聴かせるか、軽やかに聴かせるかを考えられるようになったというのです。
「VIOLET LINE」公式配信音源(2023年版)。
以前から出したかった声を、ただ力を込めて出す。
そこから、聴く側へどう響くかを考えて、声を選ぶ段階へ進んでいました。
音程を出せるかどうかだけでなく、その音をどんな質感で届けるかが、歌の選択肢になっています。
周りの演奏の聴き方にも、変化がありました。
相羽は、初めは音程やリズムを合わせることで精いっぱいだったところから、楽器のアプローチに応じて自分の歌を考えられるようになったと話しています。
2023年のライブ「Farbe」で「FIRE BIRD」の冒頭を志崎樺音の伴奏で歌った際にも、音数の少ない中で、勢いに頼らずどう見せるかを考えたそうです。
高音を自分の強みだと知った曲で、今度は周りの音に合わせた届け方を探っていました。
この時期には、友希那たちが大学生になり、プロとして進むことも歌へ反映させようとしていました。
相羽が話していたのは、声を急に別物へ変えることではなく、曲に応じて少しずつ大人っぽい響きを加えるという考えです。
同年の対談では、高校生らしさを意識してファルセットを控えることも説明していました。
使える技術が増えれば、すべてをそのまま歌へ入れるのではなく、その時点の友希那に合うものを選ぶ。
歌手としての経験と、キャラクターが重ねる時間の両方が、声の聴かせ方に関わっていたのです。

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2026年の「BLACK SHOUT」で、中音域の変化が形になる
2026年8月のベスト盤『Lehre der Rose』では、ファン投票の上位6曲を、キャストの演奏と新たな歌で録り直しました。
その一曲が「BLACK SHOUT (10th anniv. ver.)」です。
「BLACK SHOUT (10th anniv. ver.)」公式配信音源(2026年の再録版)。
相羽は、初期の「BLACK SHOUT」を聴き返すと、声が軽く感じられると話しています。
当時も低くクールに歌うつもりで、ボイストレーニングに通い、自分の出せる力を尽くしていました。
ただ、キャラクターとして出来上がっていた友希那を、歌でどう表現するかは模索の途中だったのです。
相羽は、この録音に中音域の表現の変化がよく出ていると話しています。
一緒に活動してきた中島由貴も、音程が下がったわけではなく、低い部分がしっかりして、厚みが出たと捉えていました。
低くクールな声を目指す気持ちは、初期からありました。
その目標が変わらなくても、実際に使える響きは、歌い続けた経験によって変わっていきます。
今回の録り直しは、今の声で同じ曲へ向かうことで、その違いが作品になった機会でした。
相羽によると、約7年にわたって指導を受けているボーカルの先生も、以前との発声の違いを聴き、感慨を示していたそうです。
自分だけでなく、声を長く知る人にも伝わる変化として、今回の歌い直しを受け止めていました。
変わったのは、声の厚みだけではない
同じベスト盤の「陽だまりロードナイト (10th anniv. ver.)」については、相羽は、アクセントやリズムへのアプローチの変化も挙げています。
同じ旋律を歌い直しても、どこへ力を置き、どう言葉を運ぶかまで、以前と同じにはなりません。
「陽だまりロードナイト (10th anniv. ver.)」公式配信音源(2026年の再録版)。
一方、比較的新しい「礎の花冠」や「VIOLET LINE」では、初期曲ほどの差は生まれませんでした。
相羽は、声の質や気持ちが大きく変わっていない分、語尾などを少しずつ変え、どう違いをつけるか悩んだと話しています。
再録した曲が一律に新しい歌い方になるのではなく、最初に歌ったころから何が変わったかに応じて、手を入れる場所も違っていました。
「礎の花冠 (10th anniv. ver.)」公式配信音源(2026年の再録版)。
声を大きく出そうとするところから、マイクへ届ける方法を学び、同じ低音の重さを選び、リズムへの乗せ方も変えていく。
相羽の歌の変化は、音域が広がったという一つの説明には収まりません。
友希那の声として大切にしたいものを残しながら、その声を使える方法を増やす。
初期の曲を今の自分で歌い直せることは、その積み重ねがあるからこそなのでしょう。
中音域の厚みや、息の配分、キャラクターとして選ぶ響きは、相羽あいなの歌い方で詳しく取り上げています。

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