ジミン(BTS)の歌い方には、曲に合わせて声の出し方を探し直す姿勢があります。
「With You」では力を抜きながら録り直し、「Butter」ではシンプルな声の出し方を研究し、『MUSE』では曲のキーと使う声の種類まで制作陣と調整しました。
本人とプロデューサーの説明から、具体的な工夫を見ていきます。
「Who」公式ミュージックビデオ(2024年、『MUSE』収録)。
「With You」は、力を抜きながら感情を残していく
2022年の「With You」について、ジミンは最初に仕上がった歌唱が、とても感情的だったと話しています。
そこから何度も力を抜いて歌い直し、さらっとした表現の中に、悲しさや何かを切に願う気持ちを込めようとしていました。
ジミンとハ・ソンウンの「With You」公式ミュージックビデオ(2022年、『私たちのブルース』OST Part 4)。
ここで本人が変えているのは、録音で歌うときの力加減です。
力を抜いた歌でも感情が伝わる形を、一度のテイクで決めず、歌い直しながら探しています。
初めに出てきた強い感情を、どれくらいの強さで声に乗せるかまで考えた録音でした。
取材では、普段歌う声より、話す声に近いと聞き手が指摘しています。
その指摘に対して本人が話したのは、細かな試みや録り直しを多く重ねた過程でした。
自然に聞こえる歌にも、声の出し方を何度も調整する作業があったことがわかります。
声の細部を録音に残す「Serendipity」
ジミンは2021年の取材で、「Serendipity」を、自分の声のニュアンスや表現の細部に初めてそこまで集中した曲として振り返っています。
意識した違いを録音の中に残すことは難しく、細かい部分まで表そうとしたからこそ、録る作業も大変だったそうです。
歌っている自分が感じる表情と、録音を通して聴き手へ届く表情が、いつでも同じになるとは限りません。
この話では、歌唱中の気持ちだけで完結せず、声に込めたものが作品に表れているかまでを課題にしています。
「With You」で力加減を変えながら録り直した姿勢にもつながる、録音で表現を確かめるこだわりです。
「Butter」で探した、シンプルな声の出し方
2021年の「Butter」では、従来のやり方で歌っても曲になじまなかったと、ジミン自身が話しました。
そこで求めたのが、もっと淡泊でシンプルな声の出し方です。
英語の発音にも、それまでとの違いを感じていたそうです。
BTS「Butter」公式ミュージックビデオ(2021年のオリジナル版)。
試す過程では、ジョングクに歌い方や練習の仕方を何度も相談していました。
採用された自分のパートだけでなく、ほかのパートを歌ったり、新しいアドリブを考えたりして、自分に合うものを探したといいます。
こうした録音の話からは、自分らしい声を保つことと、歌い方を固定することが別だとわかります。
ジミンは、すでに持っていた声の個性を大事にしながら、その曲で使える新しい出し方も探していました。
本人がそれを楽しい経験として語っている点にも、試しながら歌を作る姿勢が見えています。

画像出典:画像掲載元
「Dis-ease」では、自由に歌った声からメロディーが生まれた
完成したメロディーに声を合わせるだけでなく、歌って試した声が曲の一部になった例もあります。
『BE』の「Dis-ease」でジミンが手がけたブリッジは、Pdoggとの録音中、まだメロディーのない部分で自由に歌ったことがきっかけでした。
Pdoggにもう一度歌うよう求められ、その後、メロディーとしてまとめることになったと説明しています。
この曲では、本人は以前の韓国ヒップホップを思い浮かべながら歌ったとも話しました。
当時はボーカルの担当もまだ定まっておらず、自分の好きな方向へ試す楽しさがあった一方、自由にやりすぎて止められたこともあったそうです。
思いつきを出し、制作陣と曲に合う形へ整えるやりとりが、歌の表情を作っていました。
同じアルバムの「Life Goes On」では、声をどう聞かせるかを先に考えず、その時の浮遊するような気持ちを録ったと語っています。
曲によって、声の細部を積極的に作る場合もあれば、すでにある感情をそのまま持ち込む場合もあるのです。
ジミンの自然な歌い方を、一つの決まった方法として捉えにくい理由がここにあります。
『MUSE』では、声を生かすキーを曲ごとに探す
Pdoggによると、『MUSE』では中低音やファルセットも生かせるよう、曲のキーを何度も試しました。
高音の強みを軸にしていた以前の制作から、使う声の選択肢を広げる工夫です。
歌で使う高さを考えるときには、声の出し方とともに、曲がどのキーに置かれているかも関わります。
『MUSE』では、声の持ち味が出る高さを、作り手と一緒に探す過程がありました。
高音の印象が強い歌い手でも、それ以外の声をどう使うかによって、一曲の表情は広がります。
このアルバムでのキーの検討は、ジミンが歌える声の中から、曲に合う魅力を選ぶ作業だったといえます。
「Who」は、一人の声の中に違いを作る
英語曲の「Who」では、ポップスに近い歌唱を目指し、これまでと異なる発声も試したとPdoggは説明しています。
ソロ作品では高低の声やファルセットの違いを録音に残し、一人の歌にも変化を作っていました。
声の違いを出すというと、大きな高音や特別な一音に目が向きやすいものです。
制作陣の説明から見えてくるのは、一曲を通して声の表情をどう変え、聴き手を引きつけるかという工夫です。
踊る曲として作り、歌と動きを一緒に準備する
「Who」や「Be Mine」について、ジミンは2026年の取材で、踊るのに合う曲を作ろうとプロデューサーたちと考えていたと説明しています。
特に「Be Mine」では、ファンに見せたい振り付けも用意していました。
録音された声だけでなく、ステージで身体を動かす姿も、制作時に思い描いていた曲です。
Pdoggの2024年の説明では、アルバム制作を終えた後も、ジミンはマイクを着けて、実際の番組出演を想定するように歌とダンスを練習していたといいます。
曲の中で選んだ声を、動きのある場でも届けるための準備が続いていました。
声色やキーの選択は、そうした実演の準備と合わせて考えると、より具体的になります。
2026年にもジミンは、さらに歌を学び、練習して成長したいという意欲を語っています。
練習生の頃から声を聴き、合いそうな曲を薦めてくれたメンバーたちの影響も、大切に受け止めていました。
一人で録音を担う経験が増えても、周りから学びながら声を試す姿勢は続いているのです。
歌う力加減を変え、曲に合う出し方を試し、キーを調整しながら、複数の声を使っていく。
ジミンの発声と歌い方には、持っている声を、その曲のために選び直す作業が積み重なっています。
こうした工夫が育ってきた流れは、ジミン/Jiminの歌唱変遷でたどれます。

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