ヤングブラッドの歌い方・発声|「Hello Heaven, Hello」の高音を歌い続けるために

ヤングブラッド(2025年のNME取材掲載写真) シンガー
ヤングブラッド(2025年のNME取材掲載写真)

『怪獣8号』の「Abyss」に続いて、歌い手としてのヤングブラッドを知る入口になるのが、2025年のアルバム『Idols』の「Hello Heaven, Hello」です。
9分に及ぶ曲の中で、彼は自分でも予想していなかった高音に出合いました。
本人が語っているのは、録音で初めて気づいた声の可能性と、その声をステージでも保つための取り組みでした。

Abyss (from Kaiju No. 8) — Official Lyric Video(2024年)

思いがけず出た高音を、コントロールできる声にする

『Variety』の制作解説企画「Behind the Song」で、ヤングブラッドはプロデューサーのマット・シュワルツと「Hello Heaven, Hello」を振り返っています。
録音の最中、それほど高く歌えるとは自分でも知らなかった、と感じたというのです。
それは、準備していた技術をそのまま披露したというより、その場で自分の声の新しい部分を発見した体験でした。

ところが、リハーサルに入ると、このアルバムは歌をごまかして乗り切れないと感じます。
そこで歌のレッスンを受け始めたと話しています。
本人が求めたのは、歌い方を初めて覚えることではなく、出せた声を自分でコントロールし続ける力でした。
録音で一度出た高音を、その後も使える声にする必要があったのです。

Hello Heaven, Hello — MV(2025年)

同じ企画では、勢いよくマイクに向かって歌ったため、録音に細かなノイズや歪みも入ったことが語られています。
そこには、そのときの感覚が捉えられていた。
歌う瞬間の勢いを残すことと、その声を扱う技術を身につけることを、彼らは両方とも大切にしていました。

レッスンで探した、感情の勢いを支える歌い方

2025年4月の『Kerrang!』では、その指導者としてメアリー・ハモンドの名前を挙げています。
以前は感情に引っ張られ、動物的な勢いで歌っていたけれど、自分の声でどこまで行けるのかを探り始めたというのです。
レッスンを経て、以前ほど歌うことが難しく感じられなくなったとも話していました。

ここで彼が求めているのは、感情を抑えて整った声だけを出すことではありません。
歌いたい気持ちに、実際の声をついてこさせることです。
「Hello Heaven, Hello」のように長く、いくつもの展開がある曲なら、一つの高音を越えたあとにも歌は続きます。
その先へ声をつなぐことまで含めて、コントロールが必要になります。

同じ取材では、ボクシングから得たペース配分の感覚や、呼吸の扱いを公演に生かしたとも語っています。
『The Jonathan Ross Show』で歌ったときにも、それを使ったという話でした。
番組で披露したのはテレビ用に短くした版でしたが、本人は勢いだけで乗り切るのでなく、学んだことを使って歌いたかったのです。
声の高さとともに、歌う間の力の配分にも意識が向いています。

ヤングブラッド(2025年のNME取材掲載写真)
ヤングブラッド(2025年のNME取材掲載写真)。
画像出典:画像掲載元

ステージでは、キーを半音下げる選択もした

声の出し方に加え、演奏する条件も調整しています。
2026年6月の『Guitar World』で、ギタリストのアダム・ワーリントンは、前年の米国公演に触れながら、「Hello Heaven, Hello」を半音下げたと話しています。
ヤングブラッドが歌うには難しい曲だったためです。

一度録音できた高さを、毎回同じ条件で歌うことだけが選択肢ではない。
練習によって声を扱う力を高めながら、ステージではキーも選び直していたのです。
声の力だけに任せず、曲を歌い続けるために演奏側の条件まで考える姿が見えてきます。

一曲を通して歌うと、録音とは別の課題が現れる

アルバムの歌を実際の演奏へ移す取り組みは、映画『Yungblud: Are You Ready, Boy?』にもつながっています。
2025年の『NME』によると、この作品はベルリンのハンザ・スタジオで、アルバム収録曲を一曲ずつ通して演奏する姿を撮影したものです。
本人は、10日間で意欲的な楽曲群を演奏し、その過程も撮る計画だったと説明しました。

アルバムの完成音源と、一曲を途切れず歌う演奏とでは、聴く側が注目できる点も変わります。
高い音の直前だけを切り取るのではなく、そこまでどのような強さで歌い、次のフレーズへどう進むのか。
声が前へ出る場面と、楽器の演奏を聴かせる場面を、一続きの時間の中で捉えられるのです。

本人は当初、ハンザで楽曲の演奏記録を残すことを考えていましたが、撮影はその過程を監督の視点で捉えるものになったとも話しています。
完成した歌だけでなく、それを成立させるまでの取り組みも、この作品の主題になっていました。
レッスンやキーの調整も、そうした実演へ向かう準備として見るとつながります。

「Changes」では、自分の声から客席の歌声へ

高音を自分一人で聴かせることとは別に、客席へ歌を渡す判断にも、彼の歌い手としての感覚が表れます。
2025年7月の『Back To The Beginning』で歌った「Changes」が、その例です。
『NME』の取材では、本人からバラードを歌いたいと申し出たことを明かしています。

翌年1月の『Loudwire』の取材で振り返ったのは、曲の終わりに観客を歌へ誘った場面でした。
これは予定していた演出ではなく、その場で決めたことだったそうです。
会場へ来ていたオジー・オズボーンに観客の大きな歌声を届け、安心してステージへ向かってほしかったと説明しています。

歌唱を聴かせる時間の中に、聴衆自身が声を出す時間を作る。
ヤングブラッドはそこで、誰へ何を届けるのかを考え、自分の声と会場の声をつないでいました。
高音の到達点に加え、どこまで自分で歌い、どこから人々を巻き込むかにも、ライブの歌い方があるのです。

声の高さに加えて、曲の中での役割を聴く

GRAMMY.comによる『Idols』の紹介では、旋律を生かした歌から、うなるような声、観客と歌いたくなる伸びやかな歌まで、声の幅に注目していました。
これらは、すべてを同じ大きさ、同じ質感で押し切るという説明ではありません。
一曲ごと、また曲中の場面ごとに、声が担う役割へ目を向けた評価です。

「Hello Heaven, Hello」を聴くときも、最も高い音だけを待つより、その前後の声の調子を追うと曲の展開を捉えやすくなります。
勢いのある歌い出し、旋律を聴かせる場面、歌い終わりから演奏へ戻る瞬間。
そうしたつながりの中に高音を置くと、なぜその声が必要になるのかという面白さが見えてきます。

録音で声の可能性を試し、それを保てるように練習する。
ヤングブラッドの高音をめぐる話には、その両方があります。
『Idols』で声の揺らぎも残した制作上の選択は、ヤングブラッドの歌唱変遷でたどっています。

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