森重樹一(ZIGGY)の歌い方|ハスキーな声の揺れと、ピアノを求める理由

森重樹一(2024年の「Real Sound」掲載写真) シンガー
森重樹一(2024年の「Real Sound」掲載写真)

森重樹一の歌声には、ハスキーな質感とビブラートに注目した評があります。
その声を、本人は、ピアノの響きとの相性からも考えています。
声そのものの聴かれ方と、その声が生きる演奏の組み合わせが、歌い方を知る手がかりになります。

『ROCK SHOW』(2018年)収録の「この夜の向こうへ」のミュージックビデオ。

声の質感と、伸ばした声の揺れ

2018年の「ボーカル☆レーダー」の歌唱評は、森重の魅力として、ハスキーで切ない歌声と、ビブラートの軽やかさを挙げています。
ハスキーさは声の質感、ビブラートは伸ばす声の揺れについての言葉です。
声をどんな音色で出し、その音をどう続けるかという、違う要素を見ているのです。

同じ評者は、当時の「この夜の向こうへ」を取り上げた部分では、ビブラートのかけ方が目立つとも評価しています。
その受け取り方は好意的なものばかりではありませんが、揺らし方が歌の印象を左右するほど、目立つものとして聴かれていることがわかります。
これは、その歌唱に対する評者の見方です。

声のざらつきを感じる質感と、音を伸ばした先の揺れ。
森重の声の個性を、そうした複数の要素から捉えた評価になっています。

バラードで印象を残す、高い声の伸び

声の揺れに加えて、曲の終盤でどこまで声を伸ばしていくかにも注目できます。
『BARKS』に掲載された2019年8月24日の八王子公演のオフィシャルレポートでは、「君の笑顔より美しい花を知らない」の最後のサビが取り上げられています。
森重がアコースティックギターを手に歌ったこのバラードで、高音の伸びが印象的だったと評されていました。

同じ公演では、「BIRDS ON STRINGS」も、アコースティックギターを弾きながら歌う場面として紹介されています。
激しい曲が続くステージの中に、歌の旋律をじっくり聞かせる場面が置かれていたのです。
森重の声を、勢いのあるロックの歌だけで捉えないための具体例になります。

ビブラートは伸ばした声の表情を作り、高音の伸びはサビの到達点を印象づけます。
この公演評を踏まえてバラードに耳を向けるなら、サビの最後で声をどのように保ち、余韻へつなぐかも聴きどころになります。

自分の声が鳴る組み合わせとして、ピアノを選ぶ

森重自身が語っているのは、声と伴奏の響きが合う感覚です。
2018年の清春との対談では、ピアノと二人で演奏すると、ピアノの倍音と自分の声の倍音が、きれいに調和するところがあると話しています。
声と楽器の響きが重なる心地よさを、本人は感じていたのです。

その対談で、ボーカリストは、その人自身も含めて楽器のようなもので、一番よく鳴る組み合わせを求めるものだと説明しています。
同じ声でも、どんな伴奏と合わせるかが重要になる、という考え方です。

同じ年の別の取材でも、自分の歌には鍵盤が必要だというところにたどり着いたと話していました。
歌声を生かすために、伴奏の編成も選ぶ。
声の音色を、周りの音との関係から考えていることが伝わってきます。

森重樹一(2018年の「BARKS」掲載写真)
森重樹一(2018年の「BARKS」掲載写真)。
画像出典:画像掲載元

ギターの呼びかけに、歌で応じる

伴奏との相性は、音色が合うかどうかだけで決まるものでもありません。
ギタリストの山本陽介は、森重のソロデビュー20周年のアコースティックツアーについて、自分が演奏で仕掛けると森重が歌で応じ、逆に森重からの働きかけにはギターで返していた、と公式ブログに記しています。
共にステージに立った演奏者の言葉です。

そのツアーは、山本と鍵盤奏者の佐藤達哉が交代しながら回り、ピアノと歌、ギターと歌、さらに三人での演奏があったと説明されています。
山本は、同じ夜は一度もなかったという感想も残しています。
少人数の演奏だからこそ、相手の変化を受け取って返すことが、歌の表情に直結していたのでしょう。

ここから見えてくるのは、伴奏が決まった通りに進み、その上で森重だけが自由に歌うという一方向の関係ではありません。
歌の働きかけによってギターも変わり、その変化をまた歌が受け取る。
声の音色やビブラートという個人の持ち味に、共演者と作るその場の呼吸が重なっています。

一緒に歌う相手の、良さが出る高さを考える

別の歌手と歌う場合には、声がよく鳴る音の高さも考える必要があります。
2024年の『DI:GA ONLINE』で渡瀬マキと対談した森重は、二人の共演に向けて、互いの良さを出すためのキー設定や調整について話しています。
ただし、大がかりに作り替えるより、無理なく参加できる部分で相手の持ち歌を彩りたい、という考えでした。

これは、自分が得意な高さで全部を押し通すのでも、相手と同じ歌い方をするのでもない選び方です。
その人の歌としてすでに成立しているものを生かしながら、自分の声が入れる場所を探しています。
共演を前にした構想ですが、歌声の個性をどう組み合わせるかという、森重の視点が表れています。

ピアノとの倍音の相性、ギターとの応答、もう一人の歌手との音の高さ。
森重にとって声を生かすということは、周囲の音を聴き、自分が入る場所を考えることでもあるのです。

言葉を歌って残し、曲の起伏を確かめる

その歌の出発点にも、声で確かめる作業があります。
2024年の『Real Sound』では、歌詞を書き、それを見ながらボイスメモに歌って、フレーズの感触を残していると説明しています。
まずギターを弾きながら歌える形を試し、そこからバンドの演奏へ広げていくのです。

本人が考えるのは、何を歌いたいか、その曲で何を感じてもらいたいかということでした。
盛り上がる箇所だけを並べても起伏は生まれず、山と谷が必要だとも話しています。
ハスキーな声をずっと強く聞かせるだけではなく、曲全体のどこを際立たせるかを考えることが、歌の設計にもつながっています。

録音を土台にして、ライブで曲を育てる

2018年の『ROCK SHOW』発売時、森重は、録音を最終的な完成形とは考えていないとも語っています。
レコーディングで土台を作った曲が、ライブでこなれて、重みや湿り気など、違う性格を持っていく。
一緒に演奏する人の持ち味も、その変化に関わると考えていました。

「GLORIA」が客席の合唱する曲になったことも、バンドだけの力ではなく、聴き手と一緒に育てた結果として受け止めています。
歌う人の声と、その声へ返ってくる演奏や客席の反応が、曲の表情を作っていくのです。

「GLORIA」の公式映像。

ハスキーな声の質感、伸ばした声の揺れ、それがよく鳴る伴奏。
森重の歌い方には、声を出す人の個性と、その声を生かす組み合わせの両方があります。
歌のリズム上の位置や、2019年に本人が感じた歌いやすさの変化は、森重樹一(ZIGGY)の歌唱変遷で取り上げています。

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