Moni(Chilli Beans.)の歌声の変遷|歌い方を絞る迷いから、声を近くに届ける録音へ

Moni(Moto名義で活動していた2022年/「Billboard JAPAN」掲載写真) Moni(Chilli Beans.)
Moni(Moto名義で活動していた2022年/「Billboard JAPAN」掲載写真)

Chilli Beans.のMoni(旧名義Moto)には、どんな歌い方で進むべきか迷っていた時期がありました。
その迷いをほどいたのが、バンドの仲間の言葉でした。
いろいろな声を使い、2024年の『blue night』では声を近くに届ける録音へ。
さらに「breath」や『HONESTY』では、外から受け取った世界に自分の表現を重ねていきます。
声を一つに決めず、曲に合う届け方を探してきた歩みをたどります。

『blue night』収録「escape」(2024年)のMV。

シャウトの印象が強かった結成初期

2019年に結成されたChilli Beans.では、カバー曲を合わせることから、3人の演奏が始まりました。
2022年のインタビューで、Lilyは、当初のMoniについて、メタルやパンクを好み、シャウトの印象が強かったと振り返っています。
一緒に活動するうち、さまざまな声質で歌える人なのだと気づいていったという話でした。

当時、Moni自身は、どういう歌い方で進むべきか迷っていました。
そこで他の2人が、一つに絞る必要はないと伝えます。
本人は、この後押しによって表現の幅が広がったと説明していました。

カバー曲や、それぞれのデモを試すことも、自分たちに合う曲や、仲間の作る音楽を知る時間になっていたとMaikaは話しています。
一人で歌声の個性を決めてからバンドに持ち込むのでなく、3人で試す中で、その選択肢が見えてきたのです。

「lemonade」(2021年)のMV。

「アンドロン」は、歌とギターのデモから3人で育てた

初期の作品「アンドロン」にも、Moniの歌を、仲間とともに作品へ仕上げた過程があります。
2025年公開の取材でLilyが振り返ったのは、Moniが持ってきた、歌とギターのデモでした。
歌詞や曲全体の雰囲気に惹かれ、すぐに完成させたいと思ったといいます。

それまでにない曲だったため、ギターや編曲にも新しい課題があり、3人でメロディも調整していきました。
Maikaは、柔らかく優しい雰囲気と、歌詞から人物の感情が浮かぶところに魅力を感じていたそうです。
シャウトの印象だけでは捉えきれない、Moniの作る歌の一面を、仲間が受け止めていました。

この取材では、誰かの曲を全員で膨らませる場合も、一人がほぼ作ってからほかの要素を加える場合もあり、制作方法は固定していないと説明しています。
Moniの歌も、そうした複数の作り方の中で、曲の形を見つけていきました。

「アンドロン」(2021年)のMV。

Chilli Beans.(Moniは手前/2024年「Real Sound」掲載写真)
Chilli Beans.(Moniは手前/2024年「Real Sound」掲載写真)。
画像出典:画像掲載元

『blue night』では、声を近く感じてもらう録音へ

2024年12月のミニアルバム『blue night』では、声の届け方に具体的な狙いが生まれます。
メンバーだけでほぼすべてを制作したこの作品を、Moniは、ありのまま、手作りでやってみた感覚が強かったと振り返っています。

今回は、歌詞やメロディを軸に、曲の最終的な形を決めていったといいます。
Lilyも、一人の内側にある世界や思っていることを表したかったため、声の感じを含め、なるべく加工しないようにしたと説明していました。
作り込んだ設定へ合わせるより、出てきたイメージを生かそうとした制作です。

Moni自身も、ボーカルをこだわって録音し、以前の音源より距離が近く聴こえると思うと話しています。
聴いた人にも、声を立体的に、近く感じてもらいたいという狙いでした。
どの声で歌うかに加え、その声を録音の中でどんな距離感に残すかも、表現として考えていたのです。

言葉を直接伝える恥ずかしさと、音から生まれるイメージ

Moniにとって、歌う言葉をどう聴かせるかも、表現の一部でした。
2026年5月の対談では、日本語の言葉を滑らかにつなげるように歌っていると説明しています。
前の言葉の終わりの音と、次の言葉の始まりをつなぎ、一つのまとまりとして歌う工夫です。

その始まりには、気持ちが直接伝わることへの恥ずかしさがあったといいます。
一度聴いただけでは何を言っているかわからなくても、よく聴くと意味がわかる歌詞を作りたかったという話でした。
一方、取材当時は、音から浮かんできたイメージを言葉にしている感覚だとも話しています。

言葉の意味と、音としてのつながり。
その両方を考えながら歌にする姿は、声質の豊富さとは別のところにも、Moniの表現の幅があることを教えてくれます。

「breath」では、外の物語に自分の表現を重ねる

2026年の「breath」は、ドラマ『ムショラン三ツ星』の主題歌として制作されました。
Moniは、かわいらしさではなく、厳しさや生きる力強さを求められたことを喜んだと話しています。
台本から受け取ったものに、自分の感じたことも重ねると、言葉が自然に出てきたという説明でした。

別の取材では、言葉の強さや一つずつの音が聴こえるよう、音数を抑えた編曲を考えたとも話しています。
『blue night』で近い声を目指したことに続き、ここでは、物語の重さを届けるために、声と言葉が置かれる空間を選んでいました。

「breath」(2026年)のリリック映像。

Moni(2026年「Real Sound」掲載写真/撮影:まくらあさみ)。
Moni(2026年「Real Sound」掲載写真/撮影:まくらあさみ)。
画像出典:Real Sound

同年のアルバム『HONESTY』について、Moniは、仲間の曲が持つイメージを受け取り、そこへ自分の色を足すことが、やりやすく、楽しいと感じたと話しています。
自分の気持ちそのものではない歌でも、仲間の言葉なら理解でき、自信を持って表現できたのです。

初期には、仲間に認められることで、歌い方を一つに絞らずにいられた。
その後は、自分の歌を仲間と仕上げ、録音の近さを選び、他の人の物語や曲に自分の表現を重ねる手応えも得てきた。
Moniの変遷には、持っている声を生かすことと、何を受け取って歌うかを広げていく過程があります。
「fu uh」の言葉を置かないサビや、「rose feat. Vaundy」での掛け合いは、Moni(Chilli Beans.)の歌い方で取り上げています。

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