レイヴェイの歌い方|低い声を生かす、語る歌とスキャットの動き

レイヴェイ(2021年掲載の写真) シンガー
レイヴェイ(2021年掲載の写真)

レイヴェイの歌には、低い声で語りかける親しみやすさと、声を楽器のように動かす楽しさがあります。
「From The Start」の話から、スタンダード曲の録音や自作曲での表現まで、本人の言葉をもとに歌い方を見ていきます。

レイヴェイ「From The Start」(2023年)のMV。

深く豊かな声を、自分の歌の手がかりに

レイヴェイは、エラ・フィッツジェラルドやビリー・ホリデイの、深く豊かな声に親近感を覚えたと話しています。
高く軽やかな声のポップ歌手に、自分の低い声を重ねにくかった頃のことでした。

チェロを弾いてきた彼女は、エラの声をチェロのようにも感じています。

言葉のある歌は、物語を語るように

レイヴェイは、この曲について話す中で、ボサノバの歌は物語を語るようで、話し言葉に近いと説明しています。
言葉を誰かに話すような感覚が、この歌い方を捉える手がかりになります。

チェット・ベイカーから学んだ、言葉を前に出す歌

2023年のGRAMMY.comの取材では、チェット・ベイカーの影響を詳しく語っています。
レイヴェイは、彼がトランペットのように歌うところに惹かれ、「Bewitched」では、控えめな歌い方をより取り入れたと話しました。

それまでビブラートや、音を滑らかにつなぐレガートを考えていた一方、このアルバムでは歌詞と物語を強調したかったそうです。
声の揺れや、旋律の美しいつながりをなくすという意味ではありません。
声の響きを聴かせることと、言葉を伝えることの、どちらへ重心を置くかという話です。

本人は、少し話し言葉に近いボサノバの歌い方が、曲を書くことにもよく合うと説明しています。
「From The Start」では、アストラッド・ジルベルトの「Beach Samba」からも刺激を受けました。
一つひとつの言葉を相手へ伝えるように聴くと、この曲の親しみやすさを捉えやすくなります。

また、「Bewitched」に収めた「Misty」は、トリオと一緒に、一回通して録音したと明かしています。
昔から歌われる曲を、演奏者同士が同じ時間を共有する形で残しました。
語りかける声も、共演する楽器との関係の中に置いて聴くことができます。

スキャットは、声をひょいと上に返す

スキャットは、歌詞の代わりに、特別な意味を持たない音を使ってメロディーを歌う表現です。

「From The Start」のスキャットについて説明するときには、声を上へ返すような感覚を挙げています。
声に任せ、受け止めてもらうような感覚も、笑いながら話していました。

部屋で歌う親密さと、楽器が加わる豊かさ

声をどんな音の中に置くかについても、レイヴェイは二つの楽しさを語っています。
2021年のFrom the Intercomの取材では、曲ができてすぐに、自分の寝室で短い映像を録ることが好きだと話しました。
出来たばかりの曲への高揚があり、身近で飾らない状態を残せるからです。

一方で、スタジオで録音し、制作を進め、友人たちがベースやピアノ、ギター、トランペットで参加することにも、別の魅力を感じていました。
本人は、この二つのよさから一方だけを選ぶことはできないと説明しています。
小さな場所で歌うときの近さと、楽器が加わって広がる世界の両方を大切にしているのです。

歌を聴き比べる際にも、声だけに集中する瞬間と、伴奏ごと受け止める瞬間を作ると、楽しみが増えます。
言葉が直接届く感じと、楽器の響きがその言葉を包む感じ。
録音の形が違えば、同じ歌い手の声から受ける距離感も変わってきます。

レイヴェイ(2021年掲載の写真)
レイヴェイ(2021年掲載の写真)。
画像出典:画像掲載元

「Bored」では、友人と話すような皮肉を歌にする

レイヴェイの語りかける歌には、優しい内容だけでなく、皮肉を含む言葉もあります。
W Magazineの2024年の取材で紹介した「Bored」は、その違いを見る曲です。

本人は、恋愛の重い主題を少し軽くしたいと考えていたそうです。
「Bored」の言葉は、女友達と話すときの自分の話し方に近く、皮肉っぽい自分の性格も表していると説明しました。
日常の会話の感覚が、そのまま歌の人物像につながっています。

声が柔らかく聞こえることと、歌っている人物が穏やかな気持ちでいることは、必ずしも同じではありません。
何を言おうとしているのかを追うことで、語りかける声の中にも、冗談や相手への距離を感じ取る余地が生まれます。
低い声の心地よさに加え、言葉の温度も味わいたい曲です。

同じ取材では、ツアー中は十分に眠り、公演後はホテルへ戻って休む生活をしていると話しています。
繰り返し歌を届ける日々には、ステージ以外の時間の過ごし方もあるのです。

弦楽器の響きと一緒に、歌の世界を広げる

チェロを弾いてきたことは、声への親しみだけでなく、曲全体の響きを考えることにも結びついています。
Classic FMの取材でレイヴェイは、美しい弦の旋律やオーケストラの編曲が好きで、自分の曲にもその色彩を持たせたかったと話しています。

歌の周りに弦の音があると、言葉が終わったあとの余韻にも耳を向けられます。
歌い手が語る部分と、楽器が聴かせる部分をつなげて受け止める聴き方です。
レイヴェイは、自分の音楽を入り口に、オーケストラの世界へ近づいてほしいとも考えています。

具体的な例として、2025年の「Forget-Me-Not」では、アイスランド交響楽団と録音しています。
GRAMMY.comの取材では、アイスランドの子守歌から着想を得て、初めて母語の歌詞を書いた曲と紹介されました。
声で伝える言葉と、身近に育ってきた楽器の響きが、一つの曲で重なっています。

穏やかさの奥にある、複雑な感情も伝える

2025年の「A Matter Of Time」をめぐるNMEの取材では、柔らかな印象だけでは伝わらない自分の感情を、作品に出したいと語っています。
レイヴェイは、怒りや不安も自分の中にあると話し、穏やかさと怒りが同じ一日の中にあってよいのだと考えていました。

アルバム評を兼ねたその記事では、「Tough Luck」の怒りや、「Mr. Eclectic」の皮肉など、曲ごとに異なる気持ちが取り上げられています。
声の低さや柔らかさという印象を、歌の感情の種類と結びつけすぎないことも大切です。
同じ歌手の声でも、言葉が向かう先によって、聴き手に届く表情は変わります。

「From The Start」で物語を語る感覚、「Bored」で日常の話し方を生かす感覚。
その先に複雑な気持ちを隠さず歌う姿勢まで重ねると、レイヴェイの歌は、声の美しさと言葉の率直さを一緒に聴くことで、さらに楽しめます。

自分の低い声に親しみを持てる歌手との出会いと、スキャットを学んだ歩みは、レイヴェイの歌唱変遷でたどっています。

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