AURORAの声には、歌の中で、違う人物や存在を演じる面白さがあります。
『アナと雪の女王2』の呼び声と、「To Be Alright」での声色の応答を手がかりに、その使い方を見ていきます。
イディナ・メンゼル、AURORA「Into the Unknown」(2019年)の英語版劇中映像。
歌う声で、登場人物を呼び寄せる
『アナと雪の女王2』でAURORAが担ったのは、エルサを未知の旅へ誘う、不思議な声でした。
英語版の劇中歌「Into the Unknown」では、エルサ役のイディナ・メンゼルの歌と、AURORAの声が組み合わされています。
楽曲を手がけたクリステン・アンダーソン=ロペスは、AURORAの起用について、家畜を呼び寄せる歌であるkulningを意識したと説明しています。
ここでは、歌う声そのものが、相手を呼ぶ存在の役目を持っています。
本人は2022年のOfficial Chartsのインタビューで、この声をロンドンの教会で録音したと明かしています。
制作側から求められたのは、大地や古い時代を感じさせる歌でした。
AURORAはそのイメージを引き受け、声に聴こえる残響は教会の自然な響きだと説明しています。
この話を知ると、声が出た瞬間だけでなく、出したあとの響きにも耳を向けたくなります。
一つの呼び声が空間に残ることが、不思議な存在を感じさせる一部になっているのです。
歌い手の声色と、声を受け止める場所の響きが組み合わされた録音といえます。
別室では制作関係者が聴いており、本人は少し圧倒されたとも振り返っています。
同時に、ノルウェーという自分のルーツにつながる映画で歌えたことを喜んでいました。
声の役柄だけでなく、その背景にも本人が結びつきを感じていた仕事です。
暗い声と明るい声を、会話のように歌い分ける
2024年の「To Be Alright」では、声色の違いを、別の形で使っています。
AURORA本人は、暗い声で歌うと明るい声が答え、二つの声が言い争うように感じられると説明していました。
頭と心が食い違うような、自分の中の対立を表すイメージです。
同じ人物の歌の中に、違う性格の声を置くことで、気持ちの揺れを会話のように聴かせています。
「To Be Alright」(2024年)の公式ビジュアライザー。
AURORAは、伝えたい内容をどんな声で歌うかを考えると話しています。
「To Be Alright」を収めた『What Happened To The Heart?』での歌い分けを、演劇的でもある楽しい試みとして振り返っていました。
この曲を聴くときは、一つの声色だけを追うより、暗い声と明るい声が、どう応え合うかに耳を向けてみてください。
一つの旋律から、重なる声を探し出す
AURORAの歌には、一人の声を聴く楽しさに加えて、声と声が重なったときの響きを味わう面白さもあります。
2016年のCoup de Main Magazineでは、ハーモニーをどう作るかについて尋ねられています。
本人の説明は、ラジオの曲を聴くときにも、自然と別の旋律を足そうとする、というものでした。
すでにそこにある響きを見つけ出すような感覚で、必要なハーモニーを探していくそうです。
主旋律を一つ完成させて終わるのではなく、その周囲にも声の動きを思い描いています。
同じ高さを大勢で歌うことと、別々の音を重ねることでは、声の広がり方も変わります。
AURORAの多重録音を聴くときは、前にある旋律と、周りで動く声を分けて追うと面白いでしょう。
同じ取材では、デヴィッド・ボウイの「Life On Mars」を歌う喜びも語っています。
有名曲をカバーする怖さはありながら、実際にその曲を歌う経験そのものが素晴らしいと感じていました。
自分の声で歌ったときの満足感も、作品や歌い方を選ぶ大事な基準になっています。

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歌う言葉が、どこから来たのかを知る
声色を変えることは、気分だけで声を飾ることとは少し違います。
2015年のNBHAPのインタビューでAURORAは、自分の物語なら、その由来を知っているので歌いやすいと説明しています。
なぜその一節があるのか、言葉の奥に何があるのかを理解したい、と話していました。
当時はほかの人との共作にも取り組んでいましたが、歌が自分のものだと感じられることを大切にしていました。
誰かが書いた言葉を発音できることと、その言葉を自分の声で届けられることは、本人にとって同じではなかったのでしょう。
歌の物語を理解することが、声に気持ちを与える土台になっています。
「To Be Alright」の暗い声と明るい声も、単なる音色の違いとして聴くだけでは惜しい表現です。
その声は何を言おうとしているのか、相手の声にどう応えようとしているのか。
人物の会話を聴くように追うと、歌い分けが曲の意味と結びついてきます。
広がる声と、リズムに入り込む声
2019年の『A Different Kind of Human (Step 2)』は、声の役割の違いを聴く入口になります。
NMEのレビューでは、「The Seed」の大きなドラムと舞い上がるようなボーカルが、映画のような広がりを生むと評されています。
声が楽曲全体の大きさを担う場面です。
その一方で、同じ評は「Apple Tree」のヴァースにヒップホップ的な要素を、「In Bottles」には細かく動くビートと暗い合唱のような響きを見いだしています。
伸びる声の美しさだけでなく、リズムや重なりの中で声が果たす役目も聴きどころです。
同じアルバムでも、曲によって声の置かれ方が変わります。
「The Seed」では歌と楽器が一緒に広がる場面を、「In Bottles」では声の重なりが作る雰囲気を意識してみてください。
声が目立つ瞬間だけを追う聴き方から、曲の空間を作る声へと関心を広げられます。
これは、音域の高さだけでは測れない表現の幅です。
声を出していない時間も、歌の一部にする
AURORAは2024年のThe Forty-Fiveで、ノルウェーの古い大聖堂でオーケストラと30人の合唱団と共演した経験を、大切な瞬間として挙げています。
印象に残ったのは、観客がとても静かに耳を傾けていたことでした。
音をたっぷり響かせる場面だけでなく、その間にある静けさも受け止めてもらえたのです。
本人はその夜、どれだけ余韻にとどまってもよく、沈黙も音と同じように意味を持つのだと感じたといいます。
ここでは、次々に声を出して聴き手を引っ張ることだけが、歌の強さではありません。
歌い終わった音が消えるまで待つ時間も、表現の一部になります。
冒頭の『アナと雪の女王2』の呼び声へ戻るなら、声の輪郭と、そのあとに残る響きの両方を聴いてみてください。
「To Be Alright」では声同士の応答を、ハーモニーの多い曲では声が重なる位置を追ってみる。
AURORAの歌には、声色を変えること、声を重ねること、余韻を残すことを通じて、言葉の先まで物語を広げる面白さがあります。
初期からの声の幅と、2024年作品での録音の試みは、AURORAの歌唱変遷で取り上げています。







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