SZAの歌では、声の響きと、言葉をどう旋律に乗せるかの両方に注目したい。
本人や制作に関わった人の言葉から、歌い方の手がかりを見ていく。
SZA「Snooze」(2022年)の公式音源。
会話のように運ぶ、言葉とメロディー
「Snooze」を共同制作したベイビーフェイスは、2023年のGQで、SZAの言葉やメロディーの運びを巧みな会話のようだと語っている。
言葉と旋律がどう結びつき、話しかけるような印象になるのかを聴いていきたい。
本人も2017年のRolling Stoneで、マイクを替えたことで、より会話に近い声の調子を探りやすくなったと話している。
録音で自分の声をどう聞くかも、この語るような歌に関わっていた。
The FADERの2013年の取材では、もともと書いていた詩を、ビートに乗せるようになった経緯も紹介されている。
言葉を音楽へ移していくことが、初期から作品作りの一部だった。
話すような旋律を聴くときも、リズムにきっちり収まる箇所だけでなく、言葉のまとまりがフレーズを作る感覚に注目すると面白い。
自分の言葉が出てくるまで、音の中で待つ
会話に近い歌が生まれる背景には、録音の進め方もある。
Billboardが『SOS』の制作陣に聞いた取材で、カーター・ラングは、SZAが自分の感覚に入るまで待ち、楽器を弾いたりビートを流したりすると説明している。
互いに急かされる感じがなく、音に刺激されて、彼女が歌を試し始めるという。
曲に合わせて用意した歌を置くだけでなく、鳴っている音から歌が動き出す。
この制作談を重ねると、SZAの旋律を、完成した音符の並びとしてだけでなく、言葉を探していく動きとして聴く楽しみが生まれる。
声が軽く進む部分と、一つの言葉にとどまる部分の違いにも注目したい。
同じ取材で制作陣は、作業する場所が離れていても曲を送り合い、互いの判断を信頼していたと話している。
自由に出た歌を、周囲の人と一緒に作品へ育てる環境があったのだ。
自然な歌の印象と、共同制作の丁寧な積み重ねは、両立している。
鼻にかかる響きや、少しざらつく声も含めて
SZAは2017年のRolling Stoneで、しっかり声を出して歌うと、鼻にかかり、荒く、少しざらつくと感じるため緊張したと話している。
アラバマ・シェイクスの歌を聴き、声の質感を前に出すことへの気負いが和らいだとも話している。
歌って聴き直し、言い回しを変える
同じ取材では、普段はまず一通り録音し、聴き返して言い回しを変えると説明している。
一方、「Supermodel」はフリースタイルで歌い、聴き返してから自分の中にあった思いに気づいたと話している。
SZA「Supermodel」(2017年)の公式MV。
Recording Academyの2017年の取材では、「Supermodel」の背景をさらに説明している。
繰り返されるギターの二つのコードを気に入り、そのループの上で言葉を出していったという。
紙に書くより頭の中で歌詞を作るため、繰り返しがあると、言葉や自分のいる位置を追いやすいとも話している。
伴奏が同じ形を保つ一方で、歌のほうには新しい言葉や感情が続いていく。
この曲では、伴奏の変化を待つより、反復の中で声がどう動くかに耳を向けたい。
話し続けるような歌の流れを、音楽の繰り返しが支えていると考えられる。
本人は、そのコードから呼び起こされる悲しさが、表現を途切れずに出す助けになったとも説明している。
即興的に歌うことと、感情が深く入ることは、ここでは結びついている。
曲の始まりと終わりで、言葉の勢いや声の印象をどう受け取るかを比べてみたい。

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「Kill Bill」は、準備した音と瞬間の歌が出会う
ロブ・バイセルはMusic Business Worldwideの取材で、「Kill Bill」の伴奏作りを振り返っている。
シンセサイザーで見つけた笛のような音色からコードとベースを作り、ラングがドラムなどの案を重ねていったという。
歌の土台にも、いくつかの形を試す時間があった。
その音を一度聴いたSZAが、数週間後にもう一度かけてほしいと頼み、その晩に曲を短時間で形にしたとバイセルは説明する。
聴いた瞬間にすべてが完成した、という単純な話ではない。
先に育っていた伴奏と、その日に出てきた歌が出会った制作だった。
彼は、自然に生まれた曲は、聴き手にも自然に届くことが多いという考えも述べている。
細部を整える曲もあれば、その場の流れが作品の中心に残る曲もある。
「Kill Bill」を聴くときは、旋律の滑らかさの中で言葉がどうつながるかを追うと、この制作の話を重ねやすい。
Varietyの別取材でバイセルは、完成版の歌声も、ほぼその晩の一、二回の録音を使ったと明かしている。
繰り返し歌って作り直すことだけが、録音の完成度を上げる方法ではなかった。
その時に出た声の流れを残す判断も、SZAの作品にはある。
ラップに近い運びと、歌い上げる声を使い分ける
『SOS』では、声の使い方にも幅がある。
Pitchforkの評論は、「Smokin on my Ex Pack」のラップと、「I Hate U」で強く歌い上げる声を挙げている。
会話のように感じる歌も、すべてが同じ声量や滑らかさで続くわけではない。
二曲を比べるなら、音の高さが動く面白さと、言葉のリズムが前へ出る面白さを聴き分けたい。
どちらの声でも、その言葉に込める態度が曲の表情につながっている。
ライブでは、観客に言葉を渡す
Recording Academyが伝えた2023年のブルックリン公演には、録音とは違う届け方も見える。
「Drew Barrymore」では、SZAがイヤーモニターを外し、同じ歌を歌う観客の声を聴く場面があったという。
自分の歌を会場へ送るだけでなく、返ってくる声を受け取っていた。
「Nobody Gets Me」では、客席を指しながら歌うことで、曲の相手が目の前の観客にも重なる場面が紹介されている。
録音では一人の相手に向けたように聞こえる言葉が、ライブでは会場の人たちへ開かれていく。
歌詞を変えなくても、誰に向けて歌うかで届き方は変わるのだ。
同じ公演評は、「Normal Girl」で、悲しさと希望が同居するように声の表情を動かしたとも捉えている。
一曲を一つの感情だけで歌い切るのではなく、途中で別の表情がのぞく。
そうした変化は、会話の中で気持ちが揺れる感覚にも重ねて聴ける。
SZAの歌を味わうときは、声の質感だけでなく、言葉が進む速さ、旋律がほどけるところ、相手へ投げかけるような瞬間にも注目したい。
録音の工夫やライブの具体例を知ると、親密に聞こえる声の中に、さまざまな表現の選択が見えてくる。
声を前に出すことに向き合った歩みは、SZAの歌唱変遷でたどっている。







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