音乃瀬奏の歌声はどう変わった?|澄んだ強さから、声を選んで届ける歌へ

ReGLOSS(2024年掲載。音乃瀬奏は手前右) シンガー
ReGLOSS(2024年掲載。音乃瀬奏は手前右)

音乃瀬奏の出発点には、すでに澄んだ響きと力強さがありました。
では、デビュー後に増えていったものは何だったのでしょうか。
自分で録音を仕上げること、伴奏なしで一曲を担うこと、仲間と声を合わせること。
2023年から2026年までの歩みには、歌のうまさを見せる場面が増えたというだけでは捉えきれない、表現の選択の広がりがあります。

2023〜2024年、最初からあった声の強さと、作品を作る喜び

2023年9月9日、ホロライブのReGLOSSからデビューした音乃瀬奏。
初期の歌を考えるうえで手掛かりになるのが、「瞬間ハートビート」の録音に立ち会ったプロデューサーの証言です。
プロデューサーは、透明感とパワーを兼ね備えた歌声に驚いたと振り返っています。
普段の天真爛漫な姿とは違う、歌手としての一面が、最初のレコーディングですでに現れていたのです。

その後も音楽を活動の中心に置く姿勢は続きました。
2024年1月の時点では、毎週のように歌の配信を重ねていました。
デビュー直後の「名前のない怪物」など、作品として仕上げるカバーと、日々の歌の配信。
最初から両方の場を持っていたことが、後の録音とステージを考える前提になります。

1周年の時期には、日本のインターネットの文化や音楽に関わりたかったという思いも語っています。
歌手という肩書だけを目指すのでなく、自分の好きな文化の中で作品を作ることに、喜びを感じていたのです。
カバー制作を支えるクリエイターへの対価や、活動できる環境への感謝にも触れていました。
歌うことと、歌を作品にして届けることが、本人の中で近い場所にあったのでしょう。

2024年、自分で整えた「奏」と、声だけで担った一曲

その姿勢が具体的に表れているのが、2024年4月20日公開のスキマスイッチ「奏」のカバーです。
本人のクレジットには、歌だけでなくコーラス、Expression、ミックスまで並びます。
ピアノ伴奏はHiroのアレンジを使用し、本人は感情を込めて大切に歌ったと記しています。
歌の仕上がりまで、自分で担った作品でした。

同じ年の9月28日、ReGLOSSの3Dライブ「Reach the top!」では、「Departures~あなたにおくるアイの歌~」をソロで披露しました。
伴奏を付けず、アカペラで一曲を担う披露でした。

このソロパートは、収録映像での出演でした。
アカペラで歌うことと、配信の瞬間に生で歌うことは別の条件です。
それでも、伴奏を外した状態で一曲を届けるという選択そのものに、初期のカバーとは違う見せ方があります。
声の変化を考えるときには、音の高さや強さに加え、歌をどんな条件で聴いてもらうかにも目を向けたいところです。

二人で歌う「LAKI MODE」が広げた選択

2024年のアルバム『ReGLOSS』では、轟はじめとの「LAKI MODE」も生まれました。
奏は、はじめとは得意な音域が近く、二人に合う曲を歌えたことを喜んでいます。
相手と共有できる音域を楽しむ、デュエットの選択肢が加わりました。

奏がホロライブに入った理由として挙げていたのは、観客のいる会場でライブをする夢でした。
録音や配信で声を届ける経験の先に、仲間と一つの空間を作る目標があったことが分かります。

2025年、「メルト」から自分の歌「GREATEST」へ

2025年3月の「hololive 6th fes. Color Rise Harmony」では、奏は「メルト」を歌いました。
滑らかな高音を響かせ、間奏では憧れのライブに出演できた喜びを語っています。
配信で育ててきた歌を、会場の観客へ届ける場面です。

同日のReGLOSSの「フィーリングラデーション」では、息の合った歌を披露する一方、MCでは本人たちが緊張も明かしていました。
初出演の大きな舞台で、ソロの歌声を響かせ、グループでは仲間と歌をつなぐ。
録音の中で作った声だけでなく、舞台で人に向ける表現が前へ出る機会になりました。

音乃瀬奏「GREATEST」ジャケット(2025年)
音乃瀬奏「GREATEST」ジャケット(2025年)。
画像出典:画像掲載元

2025年4月には初のソロオリジナル曲「GREATEST」が発表され、4月21日に配信されました。
作詞・編曲はナナホシ管弦楽団、作曲は岩見陸。
カバー曲で他の作品の世界を歌ってきた奏が、自分の名前を掲げる一曲を持った節目です。
2026年9月のMV公開と、曲そのものが生まれた時期は分けておきたいところです。

そして2025年12月16日、ReGLOSSは有明アリーナで初の単独公演「Flashpoint」を開催しました。
2024年に語っていた目標が、観客のいる会場で形になった日です。
ソロ曲とグループ曲を持って同じ舞台に立つことには、一人の歌手としての色と、仲間と作る響きの両方が求められます。

ReGLOSS「Flashpoint」(2025年12月16日、有明アリーナ)
ReGLOSS「Flashpoint」(2025年12月16日、有明アリーナ)。
画像出典:画像掲載元

翌2026年4月、楽曲提供を続けてきたOHTORAは、奏のアーティストとしての個性が強まったと語っています。
各メンバーのソロに異なる色が表れ、それがグループの音楽にもつながっているという見方でした。
初期の録音で評価された声の強さに、その声を何のために使うかという個性が加わってきた、と読むことができます。

2026年、全編生歌唱と「You&合図」の新しい発声

2026年4月20日の生誕ライブ「IN PROGRESS」では、ゲストとのパートも含めて全編を生歌唱で届けました。
ワンマンライブの夢に近づくための挑戦でした。
2024年の収録によるソロとは条件が変わり、共演も含む公演全体を、その場の歌でつないでいく取り組みです。

「You&合図」では、曲に合う声を探し、新しい発声にも取り組みました。

さらに10月12日には、ピアノの生演奏と歌を組み合わせたアコースティックライブを開催。
翌13日には「アイシカケ」が配信され、ソロの作品も増えています。
大きなグループ公演だけへ進むのでなく、伴奏の形を変えて声を届ける場も持ち続けています。

音乃瀬奏の歩みを、年ごとに高音が強くなったという一本道で語るのは難しいでしょう。
録音を自分で仕上げ、声だけの曲を担い、相手と音域を分かち合い、新しい発声に取り組む。
持ち味を使える場所と、作品に合わせて選べる声が増えてきたところに、歌手としての広がりがあります。
曲や場面ごとの声の選択は、音乃瀬奏の歌い方で詳しく見ていきます。

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