ウェンディの歌を知る手がかりは、力強く伸ばす声と、ほんの小さな息の両方にあります。
本人が「Like Water」の聞きどころに挙げたのは、歌の途中に入れたため息でした。
高音の迫力に目が向きやすい歌手が、なぜその小さな音を大切にするのでしょうか。
発声前の準備から、言葉の運び、共演者との声の合わせ方まで、本人と制作側の発言をもとに見ていきます。
強い声を出す前に、体の力を抜く
ウェンディは2021年、歌う前の習慣を明かしています。
リップトリルを行い、喉の状態を整え、体の力を抜くというものです。
大きな声を出す直前の準備として、余計な力を減らすことを挙げている点が印象に残ります。
リップトリルは、唇を振動させながら声や息を流す動きです。
本人の回答は短く、回数や音域まで説明した練習メニューではありません。
それでも、迫力のある歌を支える本人の習慣として、声を出す状態を整える工程があることは分かります。
声の準備には、曲の感情を整理する時間も含まれます。
本人は2025年、一曲の歌い方や感情の流れを考えるために練習期間が必要で、アルバムの準備でも一曲につき数日を求めると話しました。
声が出ることと、どんな声でその言葉を届けるかが決まることは、本人にとって別々の準備なのです。
「Like Water」のため息が伝える近さ
「Like Water」について、ウェンディは、相手を安心させる言葉の後に入るため息を聞いてほしいと話しています。
本人が、注意して聴かないと気づきにくいと説明したほどの小さな音です。
歌詞をはっきり歌う部分に、その隙間からこぼれる息の表情を添えています。
ここで大切なのは、声の強弱の細かさです。
一曲の中に力を込めて歌う部分があっても、すべてを同じ大きさで届ける必要はありません。
本人が選んだため息は、言葉の意味を受け取った後にも、相手を思う気配を残す表現として理解できます。

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対になる「When This Rain Stops」は、ピアノを中心としたバラードです。
弱さを見せるような始まりから、曲が進むにつれて声に確信が増していく流れにも、耳を向けたくなります。
高い声がどれだけ出るかとともに、そこへ向かうまでの気持ちの変化が、歌の大きさを作っています。
声の確信が増していく過程も、聴きどころです。
言葉を弾ませる「Why Can't You Love Me?」
同じ『Like Water』に収められた「Why Can't You Love Me?」では、言葉の動かし方に注目できます。
話すような歌い回しや発音の工夫に加え、ひとつの言葉に複数の音を添える装飾もあります。
長い音を大きく伸ばす場面とは違い、細かな言葉の表情から楽しさを作る歌です。
会話のような親しさに、旋律の装飾が華やかさを添える。
短い音の扱いにも、声の柔軟さが表れる一曲です。
共演者の温かさに、自分の声を重ねる
スルギと歌った「Best Friend」では、声の組み合わせについて本人の説明があります。
ウェンディは二人の声を、温かさの種類が違う声だと捉えていました。
その違いがあるから、デュエットに合うと思ったといいます。
同じグループの仲間でも、同じ音色を目指しているわけではありません。
相手と自分の声を、それぞれ異なる温かさとして選んでいるのです。
本人が最初にスルギを思い浮かべたことには、親しい関係だけでなく、どんな二つの声がこの曲に合うかという判断もありました。
録音が終わっても、感情の届き方を直す
「The Road」では、録音に合格が出た後も、本人がやり直しを求めたといいます。
作曲家のイ・ジュヒョンも、歌い直したものは、本人が足りないと感じていた部分が改善され、感情表現も良くなったと評価しています。
この逸話では、正確に歌い終えることが、そのまま完成にはなっていません。
本人の中に、伝えたい状態と実際の歌との違いが残っていれば、もう一度向き合う。
細部を整える粘りが、曲ごとの声の説得力につながっていることを示す例です。

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「Best Ever」で見える、息と重なる声の楽しさ
『Wish You Hell』では、曲をまたいだ声の表情にも注目できます。
「His Car Isn't Yours」の夢見るようで葛藤を含む声と、続く「Best Ever」の明るい歌い出しは、対照的に楽しめます。
曲順の中で、同じ歌手の気分が切り替わる面白さがあるのです。
「Best Ever」には、滑らかで空気感のある声、息を含むアドリブ、そしてバックボーカルと重なるフックがあります。
ここでは、一人の声をまっすぐ伸ばす迫力とは別に、複数の声が重なる楽しさが中心になります。
声にどの程度の軽さを持たせるか、主旋律の周囲にどんな表情を添えるか。
息の成分や重なり方を含めて歌を作る姿が、この曲から見えてきます。
「Sunkiss」と「Believe」で変わる高音の役割
『Cerulean Verge』では、曲ごとの高音の置き方も比べられます。
「Sunkiss」では、明るいピアノとギターを背に、サビの力強い高音が躍動を大きくします。
一方の「Believe」は、静かなピアノから感情を重ね、抑えた部分と大きく歌う部分の差で展開していくバラードです。
勢いを前へ進める声と、積み重ねてきた気持ちを解放する声。
同じ高音でも、曲の中で任される仕事が違います。
声の高さだけを取り出すより、前後の静けさや伴奏との関係に目を向けると、表現の違いをつかみやすくなります。
2025年11月のパサデナ公演でも、伸ばす声が印象を残しました。
「Chapter You」のサビでは、高い音と言葉を伸びやかに扱っています。
柔らかな曲でも、高音は歌の表情を開く役割を持っています。
ウェンディの歌唱を形づくるのは、準備を重ねて声を整え、その曲に必要な大きさや言葉の形を選ぶ姿勢です。
ため息ほどの小さな音から、気持ちを押し出す高音までが、一つの表現の中につながっています。
その選択が活動の中でどう広がったかは、ウェンディ(Red Velvet)の歌唱変遷でたどります。

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