JESSEの声を思い浮かべるとき、まず浮かぶのは、バンドの音を押し進めるような勢いかもしれません。
けれど、The BONEZの曲では、柔らかく始める歌や、目の前の人へ話しかけるような歌い方も大切な役割を持っています。
その違いは、単に大きく歌うか、小さく歌うかではありません。
声をリズムにするのか、メロディーに感情を預けるのか、それとも聴き手が加われる歌にするのか。
RIZEとThe BONEZ、そして客演の具体例から、声の役割を見ていきます。
「02」では、言葉より先へ声が飛び出す
RIZEの「02」には、録音中にJESSEが歌詞から離れ、言葉としては読み取れない声を発した部分があります。
驚いたメンバーが採用したその声を、重ね録りでも再現できたことに、ベースのU-ZOが感心しています。
ここでは、声が意味を伝える言葉であると同時に、演奏の勢いを強める音にもなっています。
偶然の叫びを残しただけでなく、重ねる際にもう一度出せたことが重要です。
荒々しさと、狙った声を再現する力が両立しています。
言葉をはっきり届ける歌と、声そのものを衝動として届ける歌。
JESSEは、その間を行き来しています。
大きな声を出すという一つの説明では、この切り替えが見えなくなります。
柔らかな歌い出しは、録音の空間も含めて作る
『WOKE』の「Until you wake up」は、ささやきかけるような入口を持ち、そのあとに激しさが広がります。
同じ曲の中に二つの距離があるため、最初の声は、聴き手を近くへ迎え入れる役割になります。
ずっと同じ勢いで押す場合とは、歌への入り方が変わります。
JESSEは、この冒頭を部屋の響きも使った弾き語りで録り、バンドの演奏が入った瞬間には、その響きが引くようにしたと説明しています。
つまり、声の表情と録音の作り方が一緒に働いています。
近くに感じる歌から大きな演奏へ移る効果を、発声の強弱だけに帰すことはできません。
聴きどころは、最初の静けさを、盛り上がるまでの待ち時間にしないことです。
声を近くに置く入口にも意味があるから、曲が大きく動いたあとにも、人へ話しかけていた感触がつながります。
激しさを生かすために、その手前をどう歌うかが大切になっています。
英語のリズムと、すぐ伝わる言葉を結びつける
JESSEにとって英語と日本語は、見栄えで選ぶ飾りではありません。
2012年には、祖父母に自分のしていることを伝えたくて、日本語をもっと使いたかったと振り返っています。
一方、ハワイで生活しながら音楽を作る中で、自分に自然なリズムや構成も見直していました。
The BONEZの「Kings work」では、短く分かりやすい言葉を選んでいます。
JESSEが意識したのは、日本語へ訳さなくても入ってくる英語でした。
言葉が音と一緒に届くことを狙っています。
この歌い方では、言葉の数が多いことだけが強さにはなりません。
短い言葉にも、反復することで身体が覚えられる力があります。
ラップで細かく語る場面と、聴き手が一緒に口にできる言葉を置く場面では、声に担わせる仕事が違うのです。
また、JESSEは、同じ言葉に喜びや悲しみを与えるものとして、メロディーやハーモニーを捉えています。
伝える内容が同じでも、歌として重なると、人の心へ入る形が変わる。
一人で言い切るラップとは異なる、複数の声で作る表情を大切にしています。
歌詞を完成させてから歌う、とは限らない
The BONEZでの制作では、スタジオで同じ部分を繰り返し流し、歌詞を書きながら歌を入れることがあります。
JESSEはライブをしているところを思い浮かべ、浮かんだ言葉を形にしていきます。
先に言いたいことが出て、その間を埋める場合もあるそうです。
これは、ひらめいたまま何も直さない方法でもありません。
『Yours』では、似た言い回しに寄りすぎないよう、歌詞を何度も書き換えました。
一人で完成させて変更しにくくするより、メンバーの前で意味を伝え合いながら作る。
歌うことと、言葉を選ぶことが往復する作り方です。
そのため、歌詞の文字だけを追っても、声の働きのすべては分かりません。
同じ伴奏の上で、どんな言葉なら歌として動くかを確かめているからです。
強い言葉を選ぶだけでなく、バンドと一緒に口から出したときに届く形へ整えています。

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「That Song」で見える、目の前の人へ向ける声
2022年9月の中津川での公演では、「That Song」の途中で歌い方が語りかけるように変わったと記録されています。
その前にJESSEは、良いときも悪いときも音楽があったと、この日を思い出せるようにしたいという趣旨の言葉を伝えていました。
曲のメッセージが、その場の観客に向けた呼びかけになる場面です。
続く「Thread & Needle」では、メンバー全員が歌に加わりました。
一人の声で場を引っ張ることと、複数の声で歌を共有することが、同じライブの中でつながっています。
この日の「That Song」の歌い方を、すべての録音で同じだと考える必要はありません。
相手のいるステージで声の届け方が変わる、という具体例です。
客演でも、ラップは曲をつなぐ役割を持つ
THE SPELLBOUNDの「2Colors」では、ラップが別の働きをしています。
中野雅之たちは、もともと気だるさのあるメロディーに力強さと華やかさを加え、曲の前後をつなぐ声を求めていました。
The BONEZも録ってきたエンジニアの細井智史がJESSEを提案し、参加が決まります。
小林祐介は、JESSEのラップに、人を楽しい気持ちにするような大らかさを感じたと話しています。
速さや激しさを競う客演ではなく、曲の空気を動かす声として求められたのです。
RIZEで前へ飛び出す声も、別の相手と組めば、曲の流れをつなぐ役割になります。
勢いの中で、声の向け先を変える
JESSEの歌い方をたどると、叫ぶ、柔らかく始める、語りかける、仲間と歌う、という選択が出てきます。
どれも別人の声を作るためではなく、その曲や相手へ届く形を探すための選択です。
声の迫力だけに注目すると、静かな入口や、言葉を選び直す過程を見落とします。
勢いのある歌だからこそ、その勢いをいつ、誰へ向けるかに個性が表れます。
こうした選択肢を広げてきた経緯は、JESSEの歌唱変遷でたどっています。

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それで…



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