NOAの歌声の変化は、高い音を歌えるようになった、という説明だけでは捉えきれません。
演技を経験して歌詞への入り方が変わり、同じ曲を歌い直すと、本人にも以前とは違う表情が感じられる。
さらに近年は、きれいに整えた姿の奥にあった葛藤も、歌で伝えようとしています。
穏やかな声の持ち味を出発点に、どのように表現が広がったのでしょうか。
2019〜2021年|自分の曲と、聴く人をくつろがせる声
NOAは日本語・英語・韓国語を使い、作詞や作曲、ダンスの振り付けも手がけるソロアーティストです。
韓国での練習生生活を経て帰国し、2020年に配信デビュー。
2021年にはメジャーデビューを果たしました。
自分で作った歌を自分の声で届けることが、活動の中心にあります。
最初から一つの曲調にとどまっていたわけではありません。
2021年のEP『Too Young』の表題曲は、17歳のころに書いた恋の歌を、KSUKEとの制作でEDMへ仕上げたものです。
若い時期に生まれた感情を残しながら、他の作り手と曲の形を磨いていく。
その姿勢は、のちに歌い方そのものを広げる共同制作にもつながっていきます。

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同年の「LET GO feat. JEON WOONG (AB6IX)」では、強く奮い立たせる応援よりも、気楽に体を揺らして楽しめる空気を目指しました。
声を重ねるコーラスにも工夫を凝らし、海外の曲から学んでいたといいます。
歌の力を、勢いよく押し出すことだけに求めていなかったのです。
NOA自身も、自分の声には落ち着ける雰囲気があり、ゆったりした音楽との相性がよいと考えていました。
ところが『NO.A』では、「Just Feel It」や「To Be Honest」で、普段の自作曲より高いメロディーに挑戦します。
本人が歌いにくいと感じていた領域へ踏み出したことが、声の使い方を見直す機会になりました。
2022〜2023年|演じる経験が、歌詞に入る深さを変えた
大きな節目になったのが、2022年のドラマ『君の花になる』への出演です。
NOAは劇中のグループ、8LOOMの一員としても活動しました。
撮影と自分の楽曲の録音が重なるなかで、歌詞が以前とは違う感覚で入ってきて、気持ちも乗せやすくなったと振り返っています。
演技と歌が重なることで、違いを実感できたのでしょう。
2023年には、周囲から声の抑揚を評価されることが増え、自分でも声の出し方の変化を感じていました。
歌詞の場面が具体的になると、感情とともに力も出てくる。
本人が語ったこの感覚からは、音を正しく並べる先に、言葉をどう生きるかという課題が見えてきます。
同じアルバムの「Step Back」では、SUNNY BOYが歌ったデモを手がかりにしました。
自分なら選ばなかった歌い方をまず受け入れ、そこから新しい自分を見つけています。
得意な声を伸ばすだけでなく、他の人の発想を自分の声で試す。
その柔軟さも、初のアルバムで表現が広がった理由の一つです。
『NO.A』に収めた「Fireworks」は、2019年に短い形で発表していた自作曲を、あらためて録音したものです。
NOAは、そのときの声質が初期とは違うと感じていました。
曲自体にある自由な自己表現への思いは続いていても、それを歌う自分は同じではない。
古い曲を新しく録る経験が、本人にも歩みを確かめる機会になっています。
8LOOMでの経験は、歌を受け取る相手への意識も変えました。
「Ticket」では、当初多かった英語を見直し、気持ちを伝えるため日本語を増やしています。
ファンと一緒に歌って踊る経験が、言葉の選び方にもつながったのです。
2024年|一人の中にある、いくつもの声を選び分ける
次のアルバム『Primary Colors』では、言語ごとに違う自分の性格を作品へ取り入れました。
日本語では丁寧になり、英語では気さくに、韓国語では落ち着きや情熱が表に出る。
韓国語を身につけた時期の熱心な生活も、その感覚と結びついているとNOAは考えています。
三つの言葉は、単に海外へ届けるための道具ではなかったのです。
録音では、声だけで曲のキャラクターが伝わることを意識しました。
会話のように歌う曲も、相手へ訴えかけるように歌う曲もある。
以前からあった多彩さを、今回は一曲ごとの表現として、よりはっきり選び分けています。
歌声全体が一様に強くなったというより、曲に合わせて違う自分を呼び出せるようになった段階といえそうです。
一方で、前作をライブで歌った経験は、録音した音の作り方にも影響しました。
『Primary Colors』では会場での響きまで考え、NOAとSUNNYがミックスにも取り組んでいます。
歌が厚く、大きく届く印象には、本人の歌唱だけでなく、声を包む音の設計も関わります。
作品を聴き比べる際には、その両方を捉えたいところです。
「Christmas Lights」の再録に表れた、同じ曲の違う表情
変化が分かりやすい例が、「Christmas Lights」です。
2023年の冬にYouTubeなどで公開した段階では、本人にとってデモに近い位置づけでした。
2024年12月の正式配信に際しては、伴奏だけでなく歌も録り直しています。
NOAは、前年と歌い方を少し変え、大人らしさが増したと説明しました。
もともとは、カバーを届けてきたクリスマスに、自分の曲でも温かい気持ちやときめきを伝えたいと作った歌です。
再録は、その願いを捨てて別の曲にする作業ではありません。
同じラブストーリーの魅力を、翌年の自分がもう一度歌で確かめる試みでした。
曲名が同じでも、2023年の公開版と2024年の配信版は区別しておきたいところです。
翌2025年の「Seasons」でも、温かさを届ける姿勢は続いています。
停滞した関係を冬になぞらえ、その先の季節を待つ歌ですが、寂しさだけを強める伴奏にはしませんでした。
ビートを残し、ギターの温かさも添える。
切ない歌詞と、前へ進む曲の動きが重なることで、歌声にも希望を託せる場面を作っています。
2026年|整った姿の奥にあった感情も、歌へ

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2026年には、表現する内容にも転機が訪れます。
それまでは前向きできれいな姿を見せようとして、負の感情を削っていた。
けれど、その削った部分にも自分の本音があったのではないか。
そんな気づきから生まれたのが、10月28日発売予定のアルバム『CLEAN+NOISE』です。
希望と葛藤の両方を差し出す方向へ、本人の意識が進んでいます。
発売に先立つ10月23日のライブでは、「MISFIT」の力強い歌と、「is this love?」の甘く柔らかな歌を披露しました。
「Slow Motion」では、言葉を一つずつ大切に渡していく表現も見せています。
すべてを激しく歌って変化を示すのではなく、伝える感情に応じて声を選ぶ姿が、ここにもあります。
先行曲「Last Kiss」も、その一例です。
滑らかな歌声を保ちながら、感情を大きく張り上げるより、息遣いや語尾の細かな表情をリズムに含ませています。
曖昧な関係の距離を、声の近さや余白で表す歌。
初期からの穏やかな魅力は、より複雑な感情を届けるためにも使われるようになっています。
NOAの歩みには、高いメロディーへの挑戦と、歌詞の中へ深く入る経験の両方があります。
そこから、曲ごとに違う人格を選び、同じ曲を歌い直し、隠していた感情まで伝えるようになった。
声の持ち味を残しながら、何をその声に乗せるかが変わってきた歌手といえるでしょう。
一曲の中での声の使い分けは、NOAの歌い方で掘り下げています。

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