ジスの声は、一つの音色で説明すると取りこぼしが生まれます。
低いところで柔らかく相手に重なる歌もあれば、サビで感情を前へ出す歌もある。
本人も、自分の声にはまだ探れるところがあると考えています。
BLACKPINKのジスが、曲の中でどの声を選び、言葉や感情と結びつけているのか。
『EYES CLOSED』から、その選択を見ていきましょう。
低音は、相手の声と重なるために選ぶ
『EYES CLOSED』で低めの声域を選んだ理由は、共演したZAYNとの調和にありました。
ジス本人が、広い声域を持つ彼と合わせるには、その位置が最もよかったと説明しています。
この曲のジスの歌は、温かさを残しながら無防備な気持ちを表すものとして評されています。
そこへZAYNの声が入り、二人のハーモニーが織り合わされていく。
競い合うように前へ出る歌より、声の組み合わせに注目したい曲です。
自分の担当部分だけでなく、相手が入ったときに歌の景色がどう変わるかが聴きどころになります。
曲が描くのは、過去への不安を抱えながら、新しい恋に踏み出そうとする二人です。
ジスが歌い始め、ZAYNが返し、共にサビへ進む構成には、互いの気持ちを確かめる流れがあります。
低音の柔らかさは、こうした歌のやり取りの中に置くと、人物同士の距離として捉えられます。
ジスは、曲ごとに違う感情があるから、声にもそれを反映したいと話しています。
『EYES CLOSED』での低く繊細な歌も、その考え方に沿うものです。
同じ低音でも、強く言い切るのか、誰かに近づくように差し出すのかで、役割は変わります。
裏声を使うことも、自分の声を探る方法になる
ジスはソロ活動を通じて、ファルセット、つまり裏声を多く使うのもよいと感じる場面があったと語っています。
まだ自分の声を探っているという言葉も残しました。
強い音だけを自分らしい声と決めつけず、軽い響きも試しているのです。
本人が対照的な例として挙げたのが、『EYES CLOSED』の柔らかな低音と『GO』の力のある歌唱でした。
低音の柔らかさと強い表現を、同じ声の持つ幅として捉えています。
裏声についての発言と合わせると、ジスの関心が高さだけでなく、声の強さや質感にも向いていることが分かります。
ただし、裏声を試しているという本人の説明だけで、録音の高い音をすべて裏声と決めることはできません。
ここで大切なのは、声を軽くする選択も表現の一部として本人が認めていること。
低い声の印象だけに耳を預けず、軽さや強さがどんな場面で必要になるのかを考えると、歌の聴き方が広がります。

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『FLOWER』では、落ち着いた声に意志を残す
『FLOWER』の歌は、落ち着いた姿勢を保ちながら感情を失わないところに特徴があります。
別れの歌でも、相手を振り向かせようと取り乱す人物ではなく、そこから離れていく人物を描く。
声の強さを増すだけでなく、態度を変えずに言葉を置くことが、この曲の意志につながっています。
伴奏の音数が少なく、低音が輪郭を作る曲なので、歌を支えるのは声と旋律の組み合わせです。
声の隙間まで楽器で埋まる作りとは違い、歌がどんな表情を保つかに意識を向けやすい。
声だけを切り離して特徴を探すより、この余白も含めて捉えたい曲です。
『Hugs & Kisses』は、サビで感情を押し出す
『Hugs & Kisses』は、少ない音で始まる部分から、感情を込めたサビへ展開します。
終盤のサビでは、力を込めた歌が大きな見せ場として評価されています。
別れを扱う歌でも、『FLOWER』の落ち着いた姿勢とは、声に任せる仕事が違います。
この曲には、軽快な言葉の運びと弾む音の組み合わせもあります。
一方、『TEARS』は低音の効いた伴奏の中で、別れの相手のために泣き続けるつもりはないという姿勢を示す曲です。
『AMORTAGE』の後半を聴くなら、同じ失恋の場面でも、言葉を弾ませる歌と距離を置く歌の違いに注目すると、四曲の人物像が平板になりません。
英語の歌は、意味を自分の言葉にするところから
『Your Love』と『Hugs & Kisses』を英語で歌ったのは、元の英語詞が曲の雰囲気をよく表していたからでした。
ジスは、表面的な意味だけでなく、その奥にある意味まで考え、一部を自分の言葉に直して録音に臨んでいます。
発音を並べる作業だけで終えず、何を伝える一文なのかを確かめてから歌う。
声の表情を作る前に、言葉を自分のものにする工程があったのです。
『Your Love』は、相手といると世界の感じ方まで変わるような恋を描きます。
作品への評でも、ジスが旋律を生かす力が、アルバムの魅力として挙げられています。
言葉の意味を理解したうえで、その気持ちを旋律の流れに預ける。
英語だから違う声になる、と一括りにするより、曲が描く恋の段階と合わせて考えたいところです。
なお、『Your Love』の背景の歌には、共作者のJenna Raineらも参加しています。
厚く重なる声をすべてジス一人の歌い分けと受け取らず、主旋律を歌う声と、それを囲む声の関係を聴くと、録音の作りも分かりやすくなります。
『CLICK』では、短い言葉と伸びるフレーズを対比させる
『CLICK』の歌には、短いフレーズを拍に近く置く部分と、サビ前で言葉のまとまりを長くする部分があります。
さらに、ブリッジの長い歌の線が、それまでの途切れるような反復と対照を作る。
音の高さだけでなく、言葉をどこまでつなげるかが、歌の表情を変える例です。
この曲の伴奏は、抑えたシンセサイザーと弾力のある低音が中心です。
音数を絞ることで、ジスの声の質感やリズムが生きる作りとされています。
伴奏が盛り上がるまで歌を待たせるのでなく、声そのものの運びで緊張感を作れる曲なのです。
短い言葉の反復を聴くときは、声と拍の関係にも耳を向けると、単調な繰り返しとして通り過ぎずに済みます。
ジスは演技を通じて、感情をすぐ説明しきらず、そのまま存在させてもよいと学んだと話しています。
歌でも完璧さに気を取られるより、感情を表すことに集中しやすくなったそうです。
言葉をどう整えるかに加え、その人物が今どう感じているかを考えることが、声を選ぶ手掛かりになっています。
相手と調和する低音、軽さを試す裏声、サビで前へ出す声、短く刻む言葉と長くつなぐ言葉。
ジスの歌い方は、こうした選択を曲の感情に結びつけるところに面白さがあります。
一つの音色を再現することより、『EYES CLOSED』と『Hugs & Kisses』で声の役割がどう変わるかを比べると、その個性が見えてきます。
ソロ活動の中で選択肢が増えていった過程は、ジス/JISOO(BLACKPINK)の歌唱変遷でたどっています。







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