チャーリーXCXの歌声はどう変わった?「Boom Clap」から『BRAT』、声を作り替える歩み

2016年の取材写真に写るチャーリーXCX(写真:Renata Raksha) シンガー
2016年の取材写真に写るチャーリーXCX(写真:Renata Raksha)

チャーリーXCXは、2017年の時点で、声の音程を補正するAuto-Tuneを使わずに歌うと不安になり、加工があるからこそ録音で大胆になれると話していました。
自分の声を別のものに変えることが、彼女にとっては、自分らしく歌うための助けにもなっていたのです。

一方、『BRAT』では、録り直して整えるよりも、その日にしか出なかった声を残した曲があります。
人工的な声と、生々しい言葉。
その両方を必要としてきた歩みをたどると、「Boom Clap」のヒットから続く歌手としての輪郭が見えてきます。

『True Romance』で見つけた、甘さだけではない声

十代のチャーリーは、自作曲をMyspaceに載せ、ロンドンのレイヴで歌っていました。
アリエル・レヒトシェイドと作った「Stay Away」は、自分に合う音楽を見つけたと感じた特別な曲でした。
それ以前の迷いがほどけ、作品の方向が定まったと本人が振り返っています。

2013年の『True Romance』には、ハスキーな声の温かさと、相手に食ってかかるような強さが共存しています。
「You (Ha Ha Ha)」での攻撃的な表情も、その一つ。
甘いシンセサイザーの中で声まで丸く収めず、ざらついた個性を残すところに、初期からの魅力があります。

ただ、声を目立たせることだけを狙った録音ではありませんでした。
この時期は複雑な音や効果で歌声を包む作りでもあり、本人も後に、ポップを作りながら「格好よく」見せようとしていたと振り返りました。
声の個性を見つけることと、その個性を思い切って差し出すことには、まだ距離がありました。

『True Romance』期のチャーリーXCX(2013年掲載、写真:Nick Rhodes)
『True Romance』期のチャーリーXCX(2013年掲載、写真:Nick Rhodes)。
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『Sucker』へ――思い切り声を出して、ポップに戻る

次の『Sucker』(2014年)へ向かう途中、ヒット曲を作ろうと考えすぎて、音楽が楽しくなくなった時期がありました。
そこでストックホルムへ行き、短いパンクの曲を作ってマイクに向かって叫ぶ。
本人にとっては、その時間を経たことで、再びポップを書けるようになったのでした。

完成したアルバムでは、電子音中心だった前作からギターの比重が増え、声の荒々しさも作品の性格に組み込まれます。
タイトル曲「Sucker」では、音楽業界への怒りを正面から出しました。
誰にでも好かれるように整えるより、言いたかったことを歌にする。
本人が語った制作姿勢の変化が、歌の強い態度とつながっています。

この時期、広く届いたのが「Boom Clap」です。
チャーリーは後に、この曲と「I Love It」のメロディーこそ自分らしいと語っています。
攻撃的な歌も、広く口ずさめる歌も、彼女の中では地続きでした。
大きなフックを歌うことへのためらいが薄れ、声が曲の顔として届くようになっていきます。

『Vroom Vroom』『Pop 2』で、声を加工する意味が変わる

2016年のEP『Vroom Vroom』は、SOPHIEとの共同制作でした。
チャーリーが求めたのは、自分の出発点だったクラブの感覚を作品にすること。
本人はこの制作を、実験的でクラブに向いた領域を探る機会として説明しています。

タイトル曲では、強気なラップから高いメロディーへ表情が切り替わります。
一本の太い歌声で押し切るのではなく、言葉の鋭さと高い声の甘さを、短い曲の中でぶつける。
『Sucker』の荒々しさをそのまま強くするのとは違う、声の見せ方が始まっていました。

翌2017年の『Pop 2』では、A. G. クックがAuto-Tuneの効かせ方に差をつけました。
声を変形させる「Track 10」も、その実験の一つです。

2019〜2020年、作り込んだ声に私生活が近づく

2019年には、リゾを迎えた「Blame It on Your Love」が発表されます。
「Track 10」とつながる曲ですが、制作の順序は発売順と同じではありません。
本人によれば、元の曲は以前からあり、そこへリゾの個性が加わって完成しました。
同じ歌の核を、別の声との組み合わせで違う形にできることが見えてきます。

同年のアルバム『Charli』では、親密なバラード「Official」も残されました。
本人は一度収録を迷いましたが、クックが支持した曲です。
秘密を分け合うような会話の雰囲気を、細かな言葉選びから作っていました。

2020年の『how i’m feeling now』では、録音の場所が自宅の居間に移ります。
チャーリーは送られてきた制作データに自分で声を録り、離れた場所の制作者とやり取りしました。
専門スタジオへ出向く日常から、生活のすぐそばで歌を作る日常へ変わったのです。

「party 4 u」には、2017年ごろに録った部分、2019年の公演の観客の声、隔離生活中の自宅録音が重なっています。
誰かのために開いたパーティーに、その人が来ない。
そんな歌の中へ、実際に人が集まった記憶と、集まれない時期の声が入る。
新作の歌声を一つの録音年だけでくくれない、彼女らしい作り方でした。

この曲の終盤では、加工された声の反復に、本人の声の細かなざらつきも残ります。
人工的な響きを強めながら、人の気配も残す。
声と電子音を組み合わせる発想は、私的な歌を作るうえでも生きていました。

『CRASH』の大きなポップから、『BRAT』の会話へ

2022年の『CRASH』では、再び大きなポップスター像へ振り切ります。
自宅で急速に作った前作の後だからこそ、本人には高い熱量のポップが新鮮に感じられました。
ただし「Good Ones」などは前作より先に書かれていた曲でもあり、作品の発売順を、そのまま歌声の成長順にはできません。

その次の『BRAT』(2024年)で変わったのは、歌にする言葉の距離です。
本人は「Good Ones」のように整ったポップの言い回しと、友人に私生活を話すときの言葉を対比しました。
悩みや嫉妬を、きれいな比喩へ置き換えすぎずに歌う。
クラブの強い音の中へ、会話の近さを持ち込んだのです。

「Girl, so confusing」では、ツアー終盤で声が出にくくなっていた日の最初のテイクが残されました。
クックは、そのときのエネルギーを後から再現しようとはしなかったと説明しています。
加工を取り去れば生々しくなる、という一本道ではありません。
声を作り込む一方で、その場限りの状態も歌の表情として残すようになっていました。

2026年の取材写真に写るチャーリーXCX(写真:Gus Van Sant)
2026年の取材写真に写るチャーリーXCX(写真:Gus Van Sant)。
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2026年、別の人物像を歌い、新しい音へ向かう

映画『Wuthering Heights』の音楽では、自分の日常から離れた物語が新しい入口になりました。
本人は脚本の世界に入り込み、映画のために歌を書くことに自由を感じたと説明しています。
ゴシックな感覚には初期『True Romance』とのつながりも感じていましたが、今回は自分の体験だけを中心に置く作り方ではありません。

「House」にはジョン・ケイルの朗読が加わりました。
ケイル自身も、単なる作曲というより演劇的な方法で言葉を進めたと話しています。
チャーリーの歌を一人で完結させず、異なる声が語る場面を作る。
他者と歌の世界を組み立ててきた姿勢が、映画の文脈でも働いています。

同年7月の『Music, Fashion, Film』でも、『BRAT』の再現には向かいませんでした。
「Rock Music」はギターを伴いますが、声には細かく区切られたAuto-Tuneの表現も残ります。
本人も、この作品を単純にロックのアルバムとは考えていません。
伴奏の顔が変わっても、声を変形させる発想まで捨てたわけではないのです。

チャーリーは、アルバム同士が反対を向くことこそ、自分の作品のつながりだと話しています。
次の作品を前作と違うものにしたい。
その姿勢は、同じ歌手の中に、まだ別の表情を探し続ける力になっています。
一つの成功した歌声へ落ち着かないことが、彼女の変遷を今も面白くしているのです。

チャーリーXCXの歌い方

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