チャン・グンソクの歌を考えるとき、低い声の魅力は外せません。
ただ、その声をどの曲でも重く響かせ続けるわけではありません。
ピアノに寄り添うバラード、リズムに乗るポップス、会場へ強く届けるサビでは、声の役割が変わります。
手がかりになるのは、音の高さと一緒に、声の強さ、柔らかさ、言葉を置く速度を見ることです。
低い声が似合う人だからこそ、どこで軽くし、どこで感情を大きくするかが歌の表情になります。
低い声を入口にして、曲の中で気持ちを大きくする
「Curtain Call」は、声の使い方を考える入口になる曲です。
歌い始めは、ピアノと甘さを帯びた低い声。
そこへ楽器が重なり、感情の高まりが形になっていきます。
最初の近い距離感があるから、その先の広がりに意味が生まれます。
同じシングルに収められた「Eternal」では、語りかけるような優しい歌が中心です。
言葉を近くへ届ける親密さにも使えることが、この二曲を並べると分かります。
聴くときには、声が大きくなる前の時間にも耳を向けてみてください。
強い箇所だけを抜き出すより、曲の中での気持ちの動きを捉えやすくなります。
低音、ハスキーな強さ、柔らかな裏声を同じ舞台で使う
2022年6月3日の来日公演は、声の違いを具体的な曲へ結びつけられる例です。
「Star」では、ゆったりした歌い回しで低音を聴かせました。
「時を駆けて」のサビでは力のあるハスキーな声を響かせ、最後の「家に帰ろう」ではアコースティックギターに柔らかなファルセットを合わせています。
ファルセットは、ここでは軽く柔らかい裏声のことです。
同じ日の歌に低音の落ち着きも、強いサビも、軽い声もある。
だから、チャン・グンソクらしさを低音の重さだけで再現しようとすると、穏やかな場面での選択を見落としてしまいます。
迎える場面、強く気持ちを届ける場面、別れ際で、声が担う仕事が違います。
なお、ハスキーな響きという印象から、声帯をどのように使っているかまでは断定しません。

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「抱きしめたい」では、自分の声の中から冬に合う響きを探した
声を曲へ合わせる作業について、本人が具体的に話しているのが「抱きしめたい」です。
夏らしいシングルを続けたあと、冬に合う曲を探し、自分のキーの中から季節に合う声を見つけて録音したと説明しています。
部屋の明かりも落とし、歌詞に集中して感情を込めました。
歌える高さの範囲を確かめたあとにも、曲へ合う声を探す作業があるのです。
2025年の公演でも「抱きしめたい」は歌われ、低音から高音へ行き来する表現が聴き手へ届けられました。
一方、同じ公演の「Let me cry」では、低い声がロックの切実さを担っています。
曲の印象を分けるのは、低音があるかどうかだけではなく、その先へどう動くかでもあるのです。
サビの強さを、感情が大きくなる場所に合わせる
「Beautiful」の録音では、音の高さが行き来する難しいメロディに向き合いました。
本人が狙ったのは、弦の音も加わって盛り上がるサビで、感情を大きく解放することでした。
高い音を当てるだけでなく、曲の頂点へ歌の気持ちを合わせていたわけです。
この曲には、自分も誰かの助けを必要としたことがあるから、同じ思いの人を支えたいという背景があります。
本人は、聞く人が愛される存在であることを伝えたかったと話しています。
サビの感情を大きくする狙いを、その言葉の行き先と一緒に考えると、強い歌を見せる以上の役割が見えてきます。
歌を理解するうえでは、音程の上昇と感情の高まりを、一度分けて考えると見通しがよくなります。
高くなるから強くするのか、伝えたい気持ちが大きくなる場面だから強くするのか。
同じように聞こえる瞬間にも、歌の組み立て方には違いがあります。
「Beautiful」では、伴奏の展開も含めて、その強さの意味を聴いてみたいところです。
ロックの伴奏でも、歌を重くし続けない
伴奏が激しいから、ボーカルも常に激しくするとは限りません。
2018年の『Voyage』公演の「渇いたKiss」は、ハードな演奏にポップな歌い方を組み合わせた場面でした。
TEAM Hの曲をバンド編成で演じる場面もあり、曲の出自と舞台上の姿が一対一に固定されていたわけではありません。
「渇いたKiss」の録音時には、本人はアニメのオープニングを思い描いていたと話しています。
音の激しさだけへ反応するのではなく、曲から浮かぶ場面を持って歌う。
そこに、声の表情を決めるもう一つの手がかりがあります。
『Blooming』の「Fiction」では、鍵盤を生かした軽快な音楽へ、リズミカルに歌を乗せています。
長い音を大きく伸ばす場面とは、言葉の進み方も違います。
声の温かさを保ちながら、伴奏と一緒に軽く動くことが、この曲の楽しさにつながります。
『Blooming』には、ジャズやシティポップを思わせる編曲が取り入れられています。
その中で歌がどうリズムに乗るかまで聴けば、ロック曲での迫力とは違う、身軽な表現にも目を向けられます。
2025年の公演では、ジャズの雰囲気を持つ「Chamomile」から、後半のロック曲へ進みました。
一晩の中で色気のある歌と、観客を盛り上げる歌を行き来する構成です。
録音作品で増えた表現は、ライブで曲を並べる楽しさにもつながっています。

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力を抜くことも、感情を届けるための積極的な選択
TEAM Hの『Mature』でBIG BROTHERが求めたのも、録音でリラックスし、感情を素直に伝えることでした。
グンソクは初アルバムの時点から、録音ではスタッフとの信頼を大切にしていると話しています。
チェ・チョロとの現場も、張り詰めた空気ではなかったといいます。
曲のために気持ちを込めることと、録音する自分を緊張で固めることは、同じではないのです。
チャン・グンソクの歌は、低い声の存在感を土台にしながら、柔らかい裏声へも、気持ちを解放するサビへも動きます。
「抱きしめたい」で曲に合う声を探した話と合わせると、持っている声をそのまま一種類で使うのではなく、曲の中で何を伝えるかを考えて選んでいると分かります。
「Curtain Call」の静かな入口から、気持ちが大きくなる展開へ。
その移り変わりまで聴くと、低音の甘さという第一印象の先に、歌を一つの場面として作る人の姿が見えてきます。
年代ごとの試行錯誤は、チャン・グンソクの歌声の変遷でまとめています。

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