JUNNAの歌声はどう変わった?「完璧な私」から、即興と柔らかさを選ぶJunnaへ

Junnaの2026年インタビュー写真 JUNNA
写真:Billboard JAPAN/撮影:森好弘

2026年の「GUM」で、Junnaはディレクターと相談し、地声で出せる高さにも柔らかい声を選ぼうとしました。
強い高音を武器にしてきた彼女にとって、出せる声をあえて柔らかく使うのは難しい選択でした。
音を決める準備の段階から苦労したといいます。

十代には、初めて自分を見に来た観客の前で、一つも失敗したくなかった。
一方、2022年のツアーでは、演奏や客席に触発され、その場で節回しを変えてもいいと思えるようになりました。
「GUM」の変化だけを突然の方向転換と見るより、その間に増やしてきた選択をたどるほうが、今の歌声がよく分かります。

2016〜2017年:美雲の声を背負い、一人のステージへ出る

ソロデビューした2017年のJUNNA
2017年の取材より。写真:音楽ナタリー/撮影:草場雄介

アニメ『マクロスΔ』の音楽ユニット、ワルキューレで、JUNNAは美雲・ギンヌメールの歌唱を担当しました。
2017年にソロ活動を始めても、初めてのツアーでは美雲と自分は一緒でなければならず、観客もそれを待っていると思っていたそうです。
歌の人物として知られた声を、自分の名前のステージへ持っていく。
その期待を強く意識した出発でした。

同じ年の「Here」は、アニメ『魔法使いの嫁』の主人公、羽鳥チセを思って歌った曲です。
誰にも心を開けずにいた少女の内側から始まる歌を、最初から最後まで力強く押し通すわけにはいきません。
自分の存在を誰かに伝えたいという気持ちに、強い声を使う。
歌の中の人物を考える姿勢は、この時点ですでにありました。

ただ、ソロの舞台に立つ自分には別の厳しさも課していました。
JUNNAは後に、最初のツアーで失敗するのが本当に怖く、初めて見る人の前では完璧な自分でいたかったと振り返ります。
観客と関係を築く前は、自分が決めた歌を確実に届けることが大きな仕事だったのです。

2018年:強く歌うだけでは、不穏さを表せなかった

「紅く、絶望の花。」は、戦闘を描くアニメのエンディングテーマでした。
JUNNAは当初、作品に合うのは強い歌だと考え、勢いを前に出して歌います。
ところが制作に関わった江口亮から、ささやくような歌い方も試すよう提案されました。
声を弱めたところに奇怪さが生まれ、強く歌う部分との落差も曲の表情になったそうです。

それでも、難しい高音まで柔らかく処理したかったわけではありません。
終盤の特に高い箇所では、裏声に切り替えず地声で歌い切ることにこだわり、納得するまでテイクを重ねました。
本人にとって、その曲では強い地声のほうが格好よくなるという判断でした。
裏声を使わないことが歌唱全般の決まりだった、と広げて受け取る必要はありません。

同年のアルバム『17才が美しいなんて、誰が言った。』でも、強さ一辺倒では済まない出来事がありました。
「世界を蹴飛ばせ!」をいつもの格好いいロックとして録り終えた後、スタッフに別の歌い方を求められ、全て録り直したのです。
十七歳らしい可愛さを含む声で歌い直すと、その曲にはむしろ合うと分かり、さらにテイクを重ねて完成させました。
声量を増やせることと、曲にふさわしい声を選べることは違う。
最初に思いついた歌い方を変える経験も、十代のうちに積んでいます。

2019〜2020年:「優しく歌う」だけでは終わらない

JUNNAはかねてからロックバラードを歌いたいと思い、降谷建志にその希望を伝えていました。
2019年の「イルイミ」では、聴く人に優しく寄り添うように歌うことを意識し、従来と印象の違う声を出せたと話しています。
高音で先頭に立つ声だけでなく、聴き手の隣にいるような声を選んだ曲でした。

翌年のアルバム『20×20』では、さらに曲ごとに問いが変わります。
「Sleepless」を選んだ理由の一つは、高い音を抜けるように歌うイメージだけでなく、低い音域で進む自分も届けたかったからです。
「波打ち際」では、最初はサビも優しく歌おうとしましたが、それだけでは違うと感じ、強い歌い方も試しました。
最終的に、語りかけるような前半と、後悔や切なさを強さに含ませるサビを組み合わせています。

2018年の「紅く、絶望の花。」では、強さの間に息を含んだ声を置きました。
「波打ち際」では反対に、静かな語りかけの先へ強さを戻す。
強いか優しいかを曲単位で決める段階から、一つの感情の中で両方をどう使うか考える段階へ進んでいました。

2021〜2022年:決めたとおりに歌う舞台から、動き続ける歌へ

2021年の「はじまりの唄」は、観客と一緒に歌を作っていくという思いから書いた曲です。
初めてのツアーで完璧な自分を見せようとしたJUNNAも、観客と時間を重ねるうちに、弱い部分を見せてもよいと思えるようになりました。
歌詞にその弱さを入れるときは恥ずかしさがあったものの、背中を押され、書き直しを重ねたと話しています。
変わったのは、舞台に立つ心構えだけではありません。
本人は、観客がいるライブで生まれる歌い方と、録音での歌い方は自分の中で違うとも説明しました。

その考えをさらに動かしたのが、2022年の初のアコースティックツアー『純喫茶』です。
毎晩、演奏のテンポやリズム感が少しずつ変わる。
それに応じて自分の歌も変わることが、JUNNAには面白かったそうです。
それまでのライブでは、やりたいことを事前に決めて確実にこなすのが自分のスタイルでした。
このツアーの後は、歌っている最中にフェイクを入れたり、節回しを変えたりする自由さを持てるようになったと振り返っています。

アコースティック編成になったから自動的に優しい声に変わった、という話ではありません。
同じ持ち歌でも、その日の演奏と自分が交わり、次の歌い方が決まる。
最初のツアーで抱えた「間違えたくない」という気持ちを思うと、この変化の大きさが分かります。

2023年:登場人物の気持ちと、自分の弱さを歌い分ける

『魔法使いの嫁』第2期の主題歌「Dear」では、六年前の「Here」と同じチセの物語に戻りました。
しかし、再び内側に閉じこもる少女だけを歌ったのではありません。
チセが出会う人や世界を増やしたことを踏まえ、Aメロには秘めた思いを残し、Bメロからは気持ちを外へ広げるように歌ったと説明しています。
同じ主人公の曲でも、その後に生きた時間が歌声の向きを変えました。

その年のアルバム『Dear』には、JUNNAが作詞作曲した「あやまち」も入っています。
こちらで向き合った人物は、アニメの主人公ではなく、自ら作詞作曲した恋愛の物語の当事者でした。
以前は歌の物語を少し離れた場所から眺めるように歌ってしまうことがあった、と本人は話しています。
ところがこの曲では、自分がそこにいると想像しなければ歌えないと考えたのです。

制作側から求められたのは、泣いている様子を思い浮かべられる声でした。
JUNNAはブースを暗くし、初めてのその表現に挑みました。
本当に涙を流したかどうかは本人も明言していません。
大事なのは、強い自分を見せるための歌だけでなく、弱さが伝わる声も自分の曲に入れられるようになったことです。

「Here」の強弱や「海と真珠」のフレーズのつなぎ方など、一曲の中で声をどう使うかは、JUNNAの歌い方で詳しく扱っています。

2026年:「GUM」では、使える強さをあえて抑える

2026年のJunna
2026年の取材より。写真:Billboard JAPAN/撮影:森好弘

レーベルを移り、名前の表記をJUNNAからJunnaへ変えた2026年。
本人は、以前の大文字の名前には、強いアーティストになって人を引っ張りたいという思いを込めていたと説明しました。
新しい表記では、その強さに加え、聴く人の隣に寄り添う柔らかさも示したいと考えています。

「GUM」の制作では、地声で歌える音域でも柔らかい声を大切にすると、ディレクターと話し合いました。
高い声が出せなくなったという話ではありません。
出せる声をすぐに最大まで出さず、まっすぐな声と限界まで押し出す声を使い分けることが、新しい難しさだったのです。
Junnaは、好きなように歌うのを制限するのは予想以上に難しく、最初のキー合わせや事前の試作から苦労したと話しています。

2019年の「イルイミ」でも、優しく寄り添う歌には挑んでいました。
だから2026年を「初めて柔らかく歌った年」とは呼べません。
違うのは、強い声で知られる自分自身の看板と向き合い、その強さを残したまま、声の使い方を組み替えようとしたことです。
本人は、過去のJUNNAも美雲も新しいJunnaも、全て大切にしたいと語っています。

強い声を捨てずに、決め方を変えてきた

最初のソロツアーでは、期待に応えるため、完璧に歌い切る自分を見せたかった。
2018年には、地声で挑む高音の隣に、ささやくような声を置きました。
やがて、寄り添うバラードや低い声を試し、客席や演奏から生まれる歌い方も選べるようになります。

その積み重ねがあるからこそ、2026年の「GUM」で強い声をあえて抑える苦労には意味があります。
昔の声が消えたのではなく、強く歌える人が、いつ強く歌うかをさらに細かく決めている。
「紅く、絶望の花。」の高音、「純喫茶」の自由な節回し、「GUM」の柔らかい地声を順にたどると、JUNNAからJunnaまでの変化が、一つの声の中でつながって見えてきます。

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