KENTA(WANIMA)の歌い方|高音の勢いと言葉の届き方を両立する選択

WANIMAのKENTA KENTA(WANIMA)

「ともに」を歌うKENTAの声には、速い曲を前へ動かす力があります。
ただし、力いっぱい高く歌えばWANIMAらしくなる、というわけではありません。
本人は、若い頃には自分が歌いやすいキーや声色を分かっていなかったと話し、今も曲ごとに体をどう使うかを課題にしています。
高音の勢いに加え、言葉をどこで区切るか、声の細かな表情をどれだけ残すかにも、曲ごとの選択があります。

ベースを弾きながら、言葉とリズムを結びつける

KENTAはWANIMAのベースボーカルです。
ギターのKO-SHIN、ドラムのFUJIと三人で作る曲では、ベースの動きと歌の言葉が同時に進みます。
2016年の「ともに」を作った時、バンドは速い2ビートだけに頼らず、みんなで歌えるリズムを考えたと本人が語りました。
歌だけを抜き出して「常に強く叫ぶ」と捉えると、声とリズムが一緒に客を運ぶ仕組みを取り逃します。

「ともに」はCMのために書き下ろされた曲です。
KENTAは、青春を歌うなら「頑張れ」「大丈夫」を繰り返す方法もあると思いながら、その言葉を使わずに作ろうとしました。
結果として言葉を多く詰め込んだため、多少聴き取りにくいかもしれないと本人も認めています。
サビの高い音ばかりが注目されますが、この曲らしさを決めるのは、容易な励ましの言葉を避けても皆が歌える流れです。
歌う側も、音の高さだけでなく言葉が拍に乗る場所を見る必要があります。

WANIMAのKENTA
2019年の取材に応じるKENTA。
写真出典:音楽ナタリーの2019年取材

高音だけを武器にしないキーの考え方

『1Time』制作時、KENTAは無理なく歌えるキーを考えたと説明しています。
以前は自分の技術不足で高いキーになりがちだった、という本人の振り返りは興味深いところです。
高い音が出ることと、どの時でも曲全体を気持ちよく歌えることは別だと気づいたのでしょう。
彼は高音が強くなったとも話す一方、低い声の鳴らし方ももっと磨きたいと述べています。

「HOME(2024 ver.)」のように編成を薄くした曲では、歌の細部が隠れにくくなります。
KENTA自身はアコースティックなら空気感やニュアンスが伝わりやすいが、そのシンプルさゆえ難しいと言いました。
大声か小声かの二択ではなく、楽器が少ない場面で語尾をどれほど残すか、言葉をどれほど近く置くかを選ぶことになります。
本人が心地よいと感じるキーを選ぶことは、そうした小さな表情を扱う余裕にもつながると考えられます。

KENTAは島で育ち、頭の中にはゆったりした民謡が流れていたと話しています。
若い頃に好んで聴いたのも、ヒップホップやレゲエでした。
声を急いで前へ出すばかりでなく、揺れのあるリズムやゆったりした時間にも、もともと親しんでいたのです。
アコースティックの歌を理解するときは、その背景も手がかりになります。

言葉を詰める癖と、間を空ける難しさ

KENTAの歌にはもう一つ、言葉が弾むように連なる場面があります。
2024年の「Do Gang」では、ヒップホップやレゲエの好きな彼が、トラックにラップを乗せるイメージから作ったと話しました。
ただ速く歌えることを示すためではなく、バンドの音を生かしながら、客も一緒に歌える部分を設けたいという考えです。
ベースを置いて歌だけに集中する場面も欲しいと語っており、ベースボーカルであることを固定された型とは考えていません。

本人は「Do Gang」を作って、口に気持ちいい曲にしたかったが難しくしすぎたとも認めました。
言葉を詰め込む癖があるので、これからは余白や間も大切にしたい。
これは高音の出し方以上に、KENTAの歌を理解する鍵です。
言葉を重ねて勢いを作る一方で、聴き手が受け取れる空間をどこに残すか。
自身がその加減を探していると明かしているからです。

同じ「届ける」でも、曲ごとに相手を変える

「りんどう」は、ライブに来る人だけでなく、来られない仲間のことも考えて作られました。
KENTAは一人ひとりで生きる人へ歌いたかったと説明しています。
大勢を巻き込む「ともに」と、離れた一人へも向ける「りんどう」。
どちらも誰かに届いてほしい曲ですが、言葉を向ける距離が違います。

その違いは「速い曲なら強く、遅い曲なら優しく」という単純な表に収まりません。
「りんどう」でも皆で歌えることをメンバーは大切にしていました。
KENTAの歌い方を考える際は、曲の速さより、目の前の客と遠くの相手をどう同時に思い浮かべるかが大事です。

WANIMAのKENTA
2025年のライブで歌うKENTA。
写真出典:音楽ナタリーの2025年ライブ写真・撮影 瀧本JON行秀

息継ぎまで含めて、言葉を近くに届ける

『1Time』の公式インタビューでKENTAは、息継ぎや言葉のわずかなニュアンスまで伝えたいと思ってきたものの、以前は録音でうまく表せないことが多かったと話しています。
この作品では、そうした表現を試し、少しずつ出せるようになったと感じていました。
高い音を出し切ることに加えて、言葉になる前後の声まで録音へ残そうとする意識です。

息を吸ってから一節を始めるまでの間にも、歌う人がそこにいる感覚は生まれます。
本人が息継ぎにも触れていることを踏まえると、「HOME(2024 ver.)」などを聴く際には、旋律だけでなく、言葉と次の言葉の間にも注意を向けられます。
大声で押し切る場面と、近くで話しかけるように届けたい場面とでは、歌に残したい細部が違うのです。

薄い編成でも、大きな会場でも歌の芯を残す

『1Time』では、歌とアコースティックギターから曲を組み直しました。
KENTAが語ったのは、音を小さくして楽をする話ではありません。
声を隠してくれる音が減るため、伝えたい言葉やニュアンスと正面から向き合う必要があった。
『Catch Up』のバンド録音と並行し、頭を切り替えること自体が課題だったそうです。

その土台は、普段の曲作りにもあります。
KENTAによれば、まずKO-SHINのギターを聴きながら歌い、構成を伝えて形にしていきます。
そこで旋律と気持ちがつながると、二人の作業が進むそうです。

KO-SHINも『1Time』では余計なことをせず、歌詞をシンプルに届けることを考えたと説明しました。
「HOME」の言葉がバンドの音の中で十分に聴き取れているか、気になっていたとも話しています。
声の出し方と、声を受け止める伴奏の作り方を、両側から整えているわけです。

ベースを持つ時も、弾き語りに近い場面でも、歌の中心に置く言葉を決める。
その選択がKENTAらしさを支えます。

高音を出す練習だけで彼の歌をなぞることはできません。
リズムと歌詞を結び、曲に合うキーを選び、誰に届けるかを決める。
本人が「その曲に対してどういう体を使って声を出すか」を一生の課題と語るのは、曲が変われば一つの正解も変わるからでしょう。
時期をまたいでその選択がどう広がったかは、KENTAの歌唱変遷でたどれます。

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