Machicoの歌声はどう変わった? 自分の歌を探したデビューから、声の選択が広がるまで

Machico(2022年の10周年記念アルバム取材掲載写真) Machico
Machico(2022年の10周年記念アルバム取材掲載写真)

2024年の「有頂天」で、Machicoは仮歌よりキーを下げることを選んだ。
録音で歌えるかに加え、これからライブでどう届けるかまで考えた判断だった。

自分がお手本になる歌をどう歌えばよいのか、分からなかったデビュー当時。
そこからMachicoは、歌の何を自分で選ぶようになったのだろうか。

TOMORROW — 2017年発売・MV短縮版

2012年、自分が「本家」になる戸惑い

Machicoのデビュー曲は、2012年の「Magical Happy Show!」。
10周年にあたる2022年、本人はこの曲を聴き返し、当時の歌声の真っ直ぐさに驚いている。

もともとハスキーで格好いい歌を好み、私生活ではそうした歌い方もしていた。
この曲の初々しさが、その頃に出せた声のすべてだったわけではない。

本人が理由に挙げたのは、自分の歌声が初めてオリジナルになる戸惑いだった。
カバーなら、先に歌っている人をまねるところから始められる。
ところが、自分が本家になると、どう表現すればよいのか分からない。

当時の取材では、自分で歌った仮歌を聴いて感情が込もっていないと感じ、家族に助けを求めた話もしている。
歌詞をノートに書き出し、両親に歌を聴いてもらい、意見をもらったのだ。
専門的な指導ではなくても、一番身近な人の客観的な感想が欲しかったという。

それでも、自分の中で何が正解なのかは見つからないまま、初めての本番の録音を迎えた。
後年の本人が振り返る初々しい歌の手前には、録った声を聴き直し、人の意見を求める試行錯誤があった。

好きな歌い方があることと、自分の曲の歌い方を決められることは、同じではなかった。
この違いが、Machicoの出発点にあった。

Magical Happy Show! — 2012年・ゲーム『すぴぱら』デモムービー

2014年、カバーを自分の歌へ近づける

2014年のアルバム『COLORS』では、よく知られたアニメやゲームの曲をカバーした。
先に歌った人がいる曲でも、今度は自分らしさを出すことが課題になる。
Machicoは、そのプレッシャーで緊張したと話している。

曲に合い、自分も歌いやすいキーを探ることには時間がかかった。
初めはがなるような歌い方になることもあったが、録音を重ね、思い描いた歌へ近づけていったという。
準備では、一人で歌った声をレコーダーに録り、何度も聴き返していた。

「甲賀忍法帖」には、以前のステージとの違いもある。
イベントで歌ったときは原曲を意識していたが、アルバムでは自分向けのアレンジを受けて、好きな歌い回しをより出せたと説明している。
声のお手本を追う段階から、その曲の中に自分の好みを持ち込む段階へ。
編曲と歌い方を合わせて作る経験が、自分の声で曲を引き受ける手がかりになっていた。

『COLORS』ダイジェスト試聴(2014年、HMV公式公開)。

Machico(2014年『COLORS』発売記念取材のHMV制服着用フォトギャラリー掲載写真)。
Machico(2014年『COLORS』発売記念取材のHMV制服着用フォトギャラリー掲載写真)。
画像出典:HMV&BOOKS online

2017年「TOMORROW」、自分の歌で引っ張る意識

アニメ『この素晴らしい世界に祝福を!2』のオープニング曲となった「TOMORROW」。
2017年の発売当時、Machicoはこの曲の録音で何を考えていたのか。
本人は、生の楽器の演奏が入った音を聴きながら歌を録ったと話している。
豪華な演奏陣に気が引き締まっても、自分の歌で曲を引っ張る姿勢は譲りたくなかったという。

何をすればよいか分からなかった最初の録音から、自分が歌をどう進めたいのかを持って臨む録音へ。
本人が後年感じた成長を、この頃の言葉が具体的にしてくれる。

同じ2017年の『SOL』の取材では、初期の歌を見直したきっかけも語っている。
歌いやすさを優先していた頃、マネージャーから抑揚がないと言われ、その意味から考え始めたという。
曲の物語を意識し、想像した世界をどう声にするかを、デビュー後の1、2年にわたって研究していた。

その作業は、2017年にも続いていた。
さらに、声優として演じたり歌ったりする中で見つけた歌い回しや表情も、ソロの歌へ生かしていると話した。
どう歌うかを決める材料は、歌の録音だけでなく、人物や場面を考える仕事の中にも増えていたのである。

2022年、歌いたい世界を制作の前から伝える

10周年の記念曲「Shall we…?」では、シドの明希に作編曲を依頼し、Machico自身が詞を書いた。
曲ができる前の打ち合わせで望んだのは、まだ挑んでいなかった、ジャジーでベースの存在感が強い、大人びた世界だった。
あえてアニソンらしさに寄せず、明希の持ち味を出してほしいと伝えたという。

歌詞には、恋愛で主導権を握る女性と、ライブで観客を引っ張る自分の姿を重ねた。
憧れの人の曲へ詞を書くプレッシャーはあったが、楽曲のおかげで自分の中の大人っぽい言葉を並べられたと話している。

初めての曲では、渡された歌をどう表現すればよいのかに戸惑っていた。
10年後には、どんな世界を歌いたいかを作曲前から伝え、そこで歌う言葉も選んでいる。
歌声を乗せる前の段階から、自分の表現を作る範囲が広がっていた。

「Shall we…?」公式ミュージックビデオ(2022年)。

2024年「有頂天」、ライブまで考えて決めたキー

Machico(2024年のソロライブに向けた公式取材掲載写真)
Machico(2024年のソロライブに向けた公式取材掲載写真)。
画像出典:画像掲載元

2024年の「有頂天」で仮歌の高さに迷ったMachicoは、曲の雰囲気を保てるか慎重に試し、キーを下げてもらった。

理由は、録音とライブの違いにある。
スタジオでは部分ごとに録れても、ライブでは一曲を通して歌う。
高さと速さ、詰まった言葉で息継ぎも難しい歌を、通して歌えるかまで考えたのだ。

録音を終えるとすぐ、ライブではどこを自分で歌い、どこに再生する歌声を使うかも相談したという。

さまざまな現場を経験してきて、無理をしない選択も正解だと考えるようになった、と本人は語っている。
録音を終えた後、ステージでの届け方までが、歌を作る仕事の続きになっていた。

有頂天 — 2024年・日本コロムビアによる権利者提供音源

2026年「Breathe」と「ReBreathe」、同じメロディに別の気持ちを込める

2026年のアニメ挿入歌「Breathe」「ReBreathe」では、MADKIDのLINと共演した。
この2曲では、Machicoが歌う同じメロディやフレーズに、異なる表情を持たせている。

「Breathe」では、内側に抱えきれないものを持つ登場人物たちを考え、力強く歌おうとした。
「ReBreathe」では、優しさをより多く込めようとしたという。
音の大きさを比べた説明ではなく、本人が何を声に託そうとしたかの違いだ。

Breathe — 2026年・公式音源

LINも、同じメロディで表現を変えるMachicoの幅をたたえている。
一方で、2曲はラップ部分の歌詞も異なる。
作品全体の印象の差には、Machicoの歌の選択と、LINのラップの違いが重なっている。

ReBreathe — 2026年・公式音源

自分がオリジナルになることに戸惑った歌手が、演奏を引っ張る声を選び、ライブでの届け方を考え、同じ旋律にも別の気持ちを込める。
Machicoの歌唱の歩みには、自分で決められることが増えていく面白さがある。

その選択を一曲の中まで細かく見ると、地声と裏声、発音とリズムの工夫が見えてくる。
具体的な録音での使い分けは、Machicoの歌い方で掘り下げている。

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