二井原実(LOUDNESS)の歌い方・発声|ハイトーンを支える声の選択と、聴き取れる環境

2014年の取材記事に掲載された二井原実のステージ写真(BARKS掲載/撮影:ほりたよしか) シンガー
2014年の取材記事に掲載された二井原実のステージ写真(BARKS掲載/撮影:ほりたよしか)

二井原実(LOUDNESS)の歌は、高い声の強さで知られています。
本人は自分の声をハスキーだと話し、高音の歌から影響を受ける一方で、発声の基礎やステージでの聴き方も見直してきました。
すべてを地声で押し上げていると捉えるだけでは、本人が語る歌の作り方は見えてきません。
声の使い方、歌いやすい高さ、録音とライブの環境から、その発声を考えます。

「CRAZY NIGHT」公式配信音源(編集盤『Early Singles』収録/曲のシングル初出は1984年)。

高い歌を、すべて地声で歌っているわけではない

2025年の取材で、二井原は、LOUDNESSの高い歌が全部地声なのかという問いに、すべてを地声で歌うことはあり得ないと答えています。
その記事では、ミックスボイスやファルセットも交えた歌唱として紹介されました。
一方で、本人は自分の歌い方には喉への負担もあると話しています。

本人が語るのは、一つの出し方を高音まで押し通すという話ではありません。
声に力を感じることと、その音がすべて同じ発声で作られていることは、分けて考える必要があります。

また、二井原は、若い頃にラッシュのゲディ・リーをまねて、自分にも高い歌を歌えると気付いたと振り返っています。
もともとのハスキーな声と、高い声で歌う表現への関心が、彼の歌には重なっていました。

高い音への憧れとともに、自分が持つ声の質感への親しみもありました。
2019年のBURRN!の取材では、ソウルバンドで歌っていた頃にロッド・スチュワートを聴き、しゃがれた声が自分と近いと感じていたことを話しています。
澄んだ声へ作り替えることだけが、歌手としての出発点ではなかったのです。

ゲディ・リーからは高く歌う可能性を知り、ロッドの声には自分との近さを見いだす。
二井原の説明からは、憧れの歌手をそのまま再現するだけでなく、歌ってみて自分の声を知る過程が見えてきます。

低いチューニングの曲より、初期の曲が声に合う

2010年に初期の曲を振り返った二井原は、1980年代の曲のほうが、自分の歌の声域には合うと説明しています。
比較していたのは、その後の低いチューニングを使った重い曲でした。

高い音はしんどいとも認めながら、自分の歌の良さはそこにあると考えていたのです。
重い音作りの曲と、初期の曲では、本人が感じる歌いやすさにも違いがありました。

二井原にとっては、高音を含む昔の曲が、自分の声を生かせる場所でもありました。
高い音を避けるだけでなく、声が働きやすい曲の高さを確かめることも、長く歌うための判断になっています。

自分の声が聴こえることで、出し方を調節しやすくなる

2014年の取材で二井原は、楽器の大きな音に囲まれたステージでは、音程や自分の声の状態をつかみにくかったと話しています。
2000年頃からイヤーモニターを使うようになり、自分が出している声をはっきり聴けるようになったそうです。

ただし、本人に合う聴こえ方を見つけるまでには時間もかかりました。
声の音量を上げれば済むわけではなく、小さすぎれば力が入り、大きすぎれば耳が疲れるという感覚も説明しています。

本人が説明したのは、まず自分の声を聴きやすい音量に決め、そこへ楽器の音を足していく方法です。
声と伴奏をまとめて上げ下げするのではなく、声を基準にして聴こえ方を作っていました。

この話からは、発声が、喉の中の動きだけで完結していないことがわかります。
自分の声を聴き取れることも、歌いながら声を調節するための大切な条件になっているのです。

2014年の取材記事に掲載された二井原実(BARKS掲載)
2014年の取材記事に掲載された二井原実(BARKS掲載)。
画像出典:画像掲載元

録音の厚みには、違うテイクやほかの歌手の声も関わる

『HURRICANE EYES』では、少しずつ歌い方の違う声を、最大5テイクほど重ねたと二井原が説明しています。
現地の歌手のバックコーラスも加わっていました。

「THIS LONELY HEART」公式配信音源(1987年『HURRICANE EYES』収録曲の2009年デジタルリマスター版)。

シャウトで英語が聞き取りにくくなる箇所では、同じ意味の別の単語に変える助言もあったそうです。

音源の歌の厚みには、声を重ねる制作も関わっています。
一度に出す声と、録音で完成した響きの違いも、この話から見えてきます。

この録音では、声を聴く環境にも工夫がありました。
二井原によると、エディ・クレイマーはテープを使ったエコーなどを用い、自然に歌へ溶け込める響きを作ってくれたそうです。
完成後の音を飾るだけでなく、録音する本人が気持ちよく歌える条件も考えられていました。

本人は、現場でハーモニーの案を出し合い、歌のメロディも細かく変えて自然な形へ整えたと振り返っています。
最初のデモに固執せず、歌ってみた結果から良い方法を探す制作でした。
声を出す段階と、歌の形を決める段階が、録音の中で行き来していたのです。

そのため、重ねたコーラスをライブで完全に再現するのは難しいとも話しています。
音源の厚みを聴くときには、中心にある二井原の歌と、その周りを支える別の声を分けて追うと、制作の工夫がわかりやすくなります。

『SUNBURST』では、作曲者の歌を聴いて自分の声へ移す

歌の作り方が変わると、準備にも違う課題が生まれます。
2026年の取材で二井原は、『SUNBURST』では、普段は自分で作ることの多い歌のメロディを、高崎晃の考えに沿って歌ったと説明しました。
高崎がギターで旋律を弾き、歌や叫び声でも示した録音を、繰り返し聴いたそうです。

音の高さだけを覚えるのではなく、その部分をどう響かせたいのかまで受け取ってから、自分で練習し録音へ進む。
自分の慣れた歌い回しから曲を作る場合とは違う、難しさのある制作だったと振り返っています。
長く歌っている二井原にも、ほかの人の発想を自分の声で形にする挑戦が続いているのです。

基礎を練習し、歌う前に声を整える

二井原は、声が出なくなった経験を経て、基礎的な発声を学び直しました。
2026年の取材でも、ウォーミングアップや音階を歌う練習などを、毎日1〜2時間ほど続けていると話しています。
長く歌う現在の声を、その習慣が支えていると本人は捉えています。

一方で、若い音楽家へ伝えたいこととして、技術を磨くと同時に、自分とわかる個性を持つ大切さも挙げています。
基礎を整えることと、特徴のある声を生かすことは、本人にとって両立する課題なのでしょう。
ハスキーな響きや高い歌声も、その人らしさを聴き取る入り口になります。

声の力を生かせる高さを知り、聴き取りやすい環境を作り、録音では言葉や声の重なりを整える。
そして、歌う前の準備を続ける。
二井原実の発声を本人の説明からたどると、ハイトーンを保つために選び続けてきた、具体的な方法が見えてきます。
それらを身につけてきた時期や録音の背景は、二井原実の歌唱変遷でたどれます。

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