RIRIの歌を声量だけで説明しようとすると、本人が気をつけていることを見落とします。
高くなるほど力を抜き、言葉の響きを整え、ときにはフェイクも減らす。
力強い声を曲の中で生かすために、どこへ力を使い、何を控えるかを選んでいる歌手です。
高い音ほど、力を足したくなるところで抜く
RIRIは、高音で叫ぶようになるとうまくいかず、音が上がるほど力を抜くと説明しています。
声の迫力を、そのまま体に込める力の大きさとは考えていないのです。
「RUSH」を考えるときも、フックの大きな歌だけに注目する必要はありません。
ヴァースを繊細に歌い、フックで歌い上げるという対比が、この曲の特徴として挙げられています。
落ち着いた部分があるから、大きく広がる部分も一層目立つ。
一曲の中で声の使いどころを分けることが、RIRIの迫力を生んでいます。
高い音が何の声区かと名前を付けるだけでは、この強弱の選択は説明できません。
本人が語る力の感覚と、曲の中で声が担う役割を合わせて考えたいところです。
言葉を読む前に、まず音として歌を覚える
洋楽を覚えるとき、RIRIはまず耳で聴いて歌い、その後に歌詞を見ると入りやすい、と話しています。
単語を一つずつ読んで旋律へ当てはめるより先に、歌として聞こえる流れをつかんできたのです。
英語詞の多い曲に親しんだ経験は、発音だけでなく、言葉を音楽として受け取る順番にも表れています。
本人が意識しているのは、ホイットニー・ヒューストンやマライア・キャリー、ビヨンセらのR&Bです。
単に曲が好きというだけでなく、歌い方やメロディー、声の使い方まで、その音楽を作るつもりで取り組んでいると語っています。
日本語と英語のどちらを歌う場面でも、土台にあるのは同じ音楽への親しみです。

撮影:玉村敬太。
画像出典:画像掲載元
「LOVE」と「HONEY」で、発音の役割を考える
『NEO』の「LOVE」は、トラックも旋律も簡潔な曲です。
RIRIは、そこに似合う発音を身につけることが難しかったと振り返りました。
大きく歌えば成立する場面ばかりではなく、言葉自体の響きが前へ出る曲では、その一つずつが表情になります。
作家と発音を丁寧に確認した理由も、そこにあります。
一方、「HONEY」は、英語で作った歌詞の一部を本人の希望で日本語へ変えた曲です。
言語が切り替わっても、音や旋律になじむように考えました。
伝えたい意味を日本語にすることと、歌の流れを保つことを、一緒に進めています。
録音を手がけたニラジ・カジャンチも、日本語を明瞭に発音しすぎると、英語部分の丸い響きと差が出ると説明しています。
RIRIへの助言では、日本語の輪郭を少し丸め、曲のリズムになじませることを求めました。
何でも曖昧に歌うのではなく、二つの言語が同じ歌の中でどうつながるか、という音の選択です。
日本語詞が短くても、作るのは簡単ではないと本人は話しています。
少ない言葉で曲全体の意味を伝えるため、音へのなじみと、言葉の内容の両方を吟味しているのです。
「サークル・オブ・ライフ」で、日本語と壮大さを両立する
2019年に歌った『ライオン・キング』日本版オフィシャルソング「サークル・オブ・ライフ」も、日本語の響きを考えた例です。
RIRIは、日本語中心でも感情とリズムの心地よさを失わないよう、発声から検討して練習しました。
大サビには普段使わない複雑なコーラスもあり、録音ではそこにも苦労しています。
思い描いたのは、地平線から昇る太陽や、広い風景でした。
壮大な曲だから大声で歌う、と単純に決めず、言語、ハーモニー、景色のイメージを一つずつ声へ結びつけています。
フェイクは、入れられる場所すべてに入れない
「Forever feat. 清水翔太」では、清水から装飾を抑える助言を受けました。
歌えることを、全部見せるとは限らないのです。
声を動かす面白さを聴かせるのか、それとも言葉をまっすぐ受け取ってもらうのか。
上手に歌えるほど、その場で何を聴かせたいかを決める必要が出てきます。
「Summertime」では、主旋律にRIRI自身のイメージを残しながら、フェイクやハモリを小袋成彬と相談しました。
共演する音に合わせて、装飾の置き方を作っていく歌唱です。
「Dilemma」は、経験していない物語を自分の感情で歌う
JP THE WAVYと取り組んだ「Dilemma」のカバーでは、RIRIが主にフックを担当しました。
原曲の音楽的な雰囲気を守りながら日本語を入れ、歌う際には、自分にも覚えのある恋心を思い返しています。
歌詞と同じ出来事を経験していなくても、近い感情を探して声にする方法でした。
昔から親しんだR&Bだったため、伸び伸び歌える感覚もあったそうです。
物語へ近づく工夫と、音楽への親しみが、ここでの歌を支えています。
録音された声の質感にも、本人と制作側の選択がある
ニラジはRIRIの録音で、Auto-Tuneを録る段階から使い、加工した声を本人にも返していたと話しています。
目的は声の立ち上がりや余韻のなじみを作ることでした。
録音の質感には、このような制作の判断も含まれています。
作品の声をすべて喉の使い方だけに置き換えず、歌唱と音作りが一緒に決められていることも押さえておきたいところです。

画像出典:画像掲載元
生のステージでは、また別の組み合わせが見られます。
2018年のリリースパーティーでは、アコースティックギターと「Heart Can’t Lie」を歌う場面から、「RUSH」、さらに客席を沸かせる「Keep Up」へと進みました。
一人の歌手が、伴奏に合わせた声も、観客へ働きかける歌も担っています。
強く歌う日のために、声を出す前の時間を作る
RIRIは、録音やライブの前に時間をかけてストレッチすることも語っています。
力強く歌う曲が多いからこそ、準備を整えることが安心につながるそうです。
人前での堂々とした歌は、舞台に出た瞬間の勢いだけでできているのではありません。
自分の状態を確かめる時間も含めて、あの歌を届けようとしています。
RIRIの強い声を支えるのは、ずっと同じ調子で歌い続けることではありません。
高音では力みを減らし、簡潔な曲では発音を磨き、フェイクは言葉の届き方で選ぶ。
さらに、録音の質感とライブでの役割まで考えると、その迫力は細かな選択の上に成り立っていることがわかります。
独学の時代から、共演や独立を通して歌の主導権を広げた歩みは、RIRIの歌唱変遷でたどっています。

こちらの記事もおすすめ

発音やフェイクの選択と、独立後の制作姿勢をたどります。

それでも「Story」を聴いた時に、圧倒される…

むしろ現在の歌い方には、歌手…



コメント