スルギの歌い方|澄んだ声を保ちながら、力の抜き方で人物を変える

2025年の取材に掲載されたスルギ/写真:シン・ソンヘ、ELLE Korea シンガー
2025年の取材に掲載されたスルギ/写真:シン・ソンヘ、ELLE Korea

スルギの歌は、声を前へ出す場面と、少し距離を感じさせる場面の違いに注目すると分かりやすくなります。
澄んだ歌を土台に、幻想的な柔らかさ、淡々とした冷たさ、低い声の落ち着きを使い分ける。
その違いには、本人が語った録音時の選択があります。
「Uncover」「28 Reasons」「Praying」を中心に、どんな声を、何のために選んだのかを見ていきます。

音を曲げすぎない、くっきりした歌が土台にある

2018年、スルギは所属事務所で重視される歌い方について、音程を曲げず、明瞭ですっきりした声にすることだと説明しました。
例に使ったのは、Red Velvetの「Red Flavor」です。
音へ滑り込むように節を付ける歌い方と、くっきり歌う方法を分けて実演しています。
ここでいう明瞭さは、大声と同じ意味ではありません。
音の入り口や旋律の形が捉えやすいことが、歌の輪郭につながります。
ただし、これは当時本人が説明した基本の方向であり、すべての曲を一切揺らさず歌うという規則ではありません。

「Uncover」は、力を抜いて幻想的な声を探す

独唱曲「Uncover」について、スルギは声にも幻想的な感触を持たせたくて、力を抜き、イメージや振付を想像して歌ったと説明しています。
この時期には、歌の中の息の音を気にかけ、それに気づいてもらえることが嬉しいとも話していました。
力を抜くという本人の言葉は、特定の喉の形を指すものではありません。
強く押し出す声では届かない、曲の浮遊感を探す選択として捉えると分かりやすくなります。

2020年の取材に掲載されたスルギ/写真:Kim Jae Hoon、Allure Korea
2020年の取材に掲載されたスルギ/写真:Kim Jae Hoon、Allure Korea。
画像出典:画像掲載元

「28 Reasons」では、感情を出しすぎない

「28 Reasons」の録音でスルギが受けたのは、優しく歌いすぎず、淡々と歌うという助言でした。
一曲の中で複数の感情を表すため、何度も歌を調整しています。
柔らかく歌うことと、親切そうに歌うことは、同じではありません。
音色が滑らかでも、歌う人物が何を考えているかをすべて明かさなければ、声には近づきにくさが残ります。
スルギが取り組んだのは、強い声で悪役を示すだけでは表せない、この距離感でした。

作詞した「Dead Man Runnin’」では、言葉を声にする段階から考えています。
韓国語と英語を自然につなぎ、口に乗るか、どんな抑揚で歌えるかを確かめたといいます。
歌詞の内容が強ければ、全部を強く歌う必要があるわけではありません。
言葉のつながりを整えることで、人物の思いを歌の流れの中で伝えられます。
歌い方を考えるとき、声量や音域だけでなく、どの言葉をどう口にするかも欠かせない部分です。

低い声から裏声へ移ると、同じ人の表情が変わる

「Praying」は、スルギが2作目へ入れたいと強く希望した曲です。
本人は、低音から高音まで届く自分の深い声を聴いてほしいと紹介しました。
タイトル曲で見せるキャラクターとは別に、歌声そのものをじっくり出せる曲を選んでいます。

この曲では、少しかすれた低音と、幻想的な裏声が組み合わさると評されています。
進行につれて重なるハーモニーや、主旋律の周囲に加わる歌も、広がりを作ります。
聴く目印は、高い音へ届くかだけではなく、低い声の質感から何が変わるかです。
高さ、音色、重なる声の数を分けて追うと、一人の歌声が奥行きを持つ理由を捉えやすくなります。

サビで声を張るとは限らない

『Accidentally On Purpose』の「Better Dayz」では、サビ前で歌が膨らんだ後、サビで柔らかな語りに近い声へ戻る構成が指摘されています。
勢いを作った先で、さらに大きく歌うことだけが、聴き手を引きつける方法ではないのです。
一方、「Whatever」では、落ち着いたテンポのR&Bに、流れるような歌が重なります。
同じ作品の中でも、声の変化で引きつける曲と、流れを保つ曲が並んでいます。

この作品でスルギは、作詞した「Weakness」以外にも、「Whatever」や「Rollin’ (With My Homies)」で伝えたい話や、歌詞の調子についてアイデアを出していました。
曲を受け取って歌うだけでなく、どんな言葉が自分の声から出てくるかにも関わっています。
制作側が掲げた、本人の自然な魅力を出すという方針は、こうした細部にも通じています。

前作の「Los Angeles」では、浮遊するような歌の部分と、テクノの強いサビの落差が評されています。
声をずっと強め続けなくても、伴奏との交代で曲の迫力は生まれます。
声の淡さにも、強い音楽を成立させる役割があるのです。

声の選択を支える心構えもあります。
スルギは、舞台へ出る直前に敏感になる瞬間はありながらも、不安に飲み込まれないよう努めていると話しています。
曲の感情を表すことと、その場の不安に引っ張られることを分けようとする姿勢です。

2025年「Accidentally On Purpose」期のスルギ/提供:SM Entertainment
2025年「Accidentally On Purpose」期のスルギ/提供:SM Entertainment。
画像出典:画像掲載元

相手がいる歌では、自分の質感だけで完成しない

アイリーン&スルギの『TILT』では、二人の声を調和させることが制作の重要な課題でした。
アイリーンは、録音で互いの声を合わせることに集中したと話しています。
スルギ自身も、細かな部分まで一緒に練習したと説明しました。
ソロで際立つ声の特徴も、相手との組み合わせによって、出し方を考え直す必要があります。

Red Velvetの「Surfin’ Boy」では、ボサノバのギター、ゆったりしたレゲエのリズム、ハウスのグルーヴに、涼しさと幻想的な感触を持つハーモニーが重なります。
歌声だけを力強く前へ出すより、曲全体の軽さや余裕の中で、声がどう混ざるかを追いたくなる作品です。
スルギの独唱と5人の歌を聴き比べると、一人で曲を満たす場面と、声を組み合わせて色を作る場面の違いが見えてきます。

録音での組み合わせについて、ウェンディは、主旋律を歌う人の音色やフレーズに合わせながら、重ねる声には小さな違いを付けたと説明しています。
これはウェンディ自身の取り組みですが、スルギの声を含むグループの歌が、単に同じ歌を重ねただけではないことを知る手がかりになります。
誰が前に出て、誰がその質感に寄り添っているか。
声の役割へ目を向けると、ハーモニーの聴きどころも増えてきます。

スルギの歌には、音を明瞭に伝える土台と、あえて力や感情を抑える選択が共存しています。
「Uncover」の淡さ、「28 Reasons」の距離感、「Praying」の低音と裏声を順に聴くと、その選び方がつかみやすくなります。
声への不安があった時期から、こうした表現を広げてきた経緯は、スルギの歌唱変遷でたどっています。

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