ウギ/YUQIの歌い方|ハスキーな低音を、強さにも柔らかさにも変える

「Could It Be」発表時のウギ、2024年4月(CUBE Entertainment) ウギ/YUQI
「Could It Be」発表時のウギ、2024年4月(CUBE Entertainment)

ウギの声には、低めの響きと、少しざらりとした手触りがあります。
けれど、低い声で押し続ける歌手として聴くと、大事な部分が抜け落ちます。
サビへ向かって声を大きく開く曲もあれば、柔らかなメロディーや、言葉のリズムに重心を置く曲もある。
特徴的な声を持っていることと、その声をどう使うかは、分けて考えると面白くなります。

中低音を、歌の真ん中に置く

「Radio (Dum-Dum)」でウギが聴きどころに挙げているのは、ハスキーな中低音とメロディーです。
制作時には、ヒップホップのビートを聴きながら、2000年代の街で人々がラジオを聴く景色を思い浮かべたといいます。
中低音は、高音に上がるまで待つ場所ではありません。
曲のイメージと、何度も思い出したくなる旋律を受け持つ中心です。

本人が声に自信を持てるようになった背景には、練習を通じて、自分の声に合うスタイルを知ったことがあります。
ウギは、ソロでは自分をよく表す曲に集中し、持ち味を磨けると話しています。
低い声を無理に明るい声へ寄せるより、どんな曲ならその声が生きるのかを選ぶ。
彼女の歌い方には、発声そのものと同じくらい、曲を選ぶ段階の判断が関わっています。

「Giant」と「Bonnie & Clyde」の、力を出す場所

「Giant」では、考え込むような場面に似合うハスキーな響きと、サビへ進む力強さが一曲の中にあります。
最初から最大の力を並べるのではなく、歌の緊張が強まる場所で声の存在も大きくなる。
ロックの伴奏が盛り上がることと、歌い手の感情が前へ出ることが、同じ方向を向いている曲です。

「Bonnie & Clyde」では、低めの部分とサビの開放感の差が、よりはっきりした聴きどころになります。
さらに、終盤へつなぐ部分で高い声を使い、そこから最後の盛り上がりへ運びます。
低音が得意という紹介だけでは、この高低の動きは伝わりません。
低めの響きがあるから、そこから離れた声が曲の展開として働くのです。

「A Page」の2曲は、どちらも英語で歌うソロですが、ロックの重みとポップの勢いの配分が違います。
「Giant」の内面と向き合う主題に対し、「Bonnie & Clyde」は二人で世界へ向かう歌です。
声の強さを、それぞれの曲が向かう場所に合わせて聴くと、単純な高音比べから一歩離れられます。

「A Page」発表時のウギ、2021年5月(CUBE Entertainment)
「A Page」発表時のウギ、2021年5月(CUBE Entertainment)。
画像出典:画像掲載元

ざらついた声でも、柔らかい歌は作れる

「Could It Be」は、穏やかなギターの音に乗る、落ち着いた速さの曲です。
歌には無理のない自信が感じられる一方、歌い手の力を大きく試す曲ではない、という受け止め方もありました。
この二つは矛盾しません。
歌の上手さを示すために、毎回大きな高低差や強烈な頂点を作る必要はないからです。
夏の午後のような気分を保つ曲では、声がその空気になじむことにも意味があります。
「Bonnie & Clyde」の終盤と比べるなら、高い声が出るかだけでなく、曲が求める変化の大きさも聴きどころになるでしょう。

ハスキーな声は、この穏やかな曲では温かさにもつながります。
一方、「Red Rover」では、ハスキーな響きに高い声が加わることで、曲の質感が変わります。
声の高さと手触りを分けると、この違いを追いやすくなります。

「YUQ1」には、跳ねるようなポップだけでなく、夢を見るような柔らかさの「Everytime」も収められています。
一曲ごとの違いは、ジャンル名を言い換えれば済む話ではありません。
「FREAK」で前へ出る自信と、「Everytime」で誰かと感情を分け合う近さでは、声に期待する役割が変わるからです。
強い人にも弱い瞬間があるという幅が、アルバムを通して歌の表情を広げています。

相手の声があると、自分の輪郭も変わる

「Everytime」で共に歌うのは、グループの仲間でもあるミンニです。
ウギの低めの声と、ミンニの高めの響きの対比が、この曲の魅力として挙げられています。
自分だけで全ての色を出そうとせず、違う声が隣にあることで、自分の響きもくっきりする。
こうした関係も歌を作ります。

ウギは、以前からミンニと一緒に曲を作りたかったと話しています。
また、「Drink It Up」では、曲のラップ部分に合う人としてpH-1を思い浮かべました。
先に曲の必要な声を考え、そこへ相手を招く選び方です。
一人の歌唱力を見せるだけでなく、どんな声を組み合わせれば曲が完成するかという視点があります。

伸ばす歌から、言葉で動かす歌へ

ウギは、ラッパーの役割で練習していた時期もあります。

「FREAK」では、メロディーを歌う部分にラップが入り、声の動きに変化が生まれます。
大きな音へ上がることだけが、曲を盛り上げる方法ではありません。
言葉をリズムとして聞かせる部分が加わることで、同じ声でも別の勢いを作れます。

「M.O.」になると、ヒップホップのビートの上で、低めの声そのものの存在感が軸になります。
楽曲の伴奏にはもっと決め手が欲しいという評価がある一方、それを歌い手の声と個性が補っているという見方もありました。
これは、声の役割を考えるうえで興味深い点です。
伴奏が大きく変わらなくても、その人が言葉を発すること自体が、曲を引っ張る力になり得るのです。

この曲を英語で書いたのは、世界のファンに伝えたいという思いからでした。
同じ「Motivation」の「Gone」には韓国語版と中国語版を用意しています。
ウギにとって言語を選ぶことは、歌の色を増やすだけでなく、誰に届けるかを考えることでもあります。
何を誰へ伝えたいのかを見ると、歌の選択を理解しやすくなります。

2024年8月30日、空港でのウギ(K-POPIT)
2024年8月30日、空港でのウギ(K-POPIT)。
画像出典:画像掲載元/CC BY 3.0
画像の内容は変更していません。

グループでは、曲に合う声として働く

「I SWAY」の録音で、ウギが喜んだのは、自分の声がサビに合っているとソヨンに言われたことでした。
高い音が出たから、誰より大きく歌えたからという話ではありません。
その曲の、その部分に声が合うという手応えです。
ウギの歌を聴くときも、低さを独立した見せ場として拾うだけでなく、前後の声や伴奏の中でどんな役割を担うかに注目すると、グループでの魅力が見えてきます。

自分の声を受け入れたからこそ、強く歌う場面も、柔らかく寄り添う場面も選べる。
ウギの持ち味は、低音をいつも同じ形で押し出すことではなく、その声を曲に合わせて働かせるところにあります。
その選択がどう広がったかは、ウギ/YUQIの歌唱変遷にまとめています。

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