かわいらしい声と、堂々と広がる歌声。
アユンダ・リスの魅力は、その落差から語られることが多いでしょう。
けれど活動をたどると、驚かせるための声の変化だけでは説明できない歩みが見えてきます。
声を曲に合わせて選び、自分で言葉を書き、やがて二種類の声を一曲の中で向き合わせていった歌手です。
最初からあった、二つの声で表現する発想
リスは2020年4月にデビューしました。
同年9月ごろの新衣装での配信では、低い声の「アユンダ」と、高い声の「リス」を説明しています。
大人びた歌声が、活動を重ねた末に突然生まれたわけではありません。
声の高さを変えて異なる存在を演じる発想は、初期から活動の一部でした。
2020年11月には、Kanariaの「KING」をカバーしています。
歌の公開を通じて、配信で親しまれる声を知っている人にも、初めて彼女を知る人にも、一曲の歌として届く入口ができました。
カバーを選ぶ際、本人はまず制作を楽しめるか、自分が歌ったらどう響くかを考えると話しています。
よく聴くお気に入りの曲を、自分の版でも聴いてみたくなるというのです。
初期の歌ってみた活動にも、後のオリジナル曲へ続く、自分の声を作品にする視点がありました。
「ALiCE&u」で、声の大きさが物語の大きさになる
2022年1月、初のオリジナル曲「ALiCE&u」が発表されます。
Feryquitousが音楽を手がけ、リス自身も作詞に参加したバラードです。
繊細さと力強さを併せ持つ声を、一曲の世界として届ける作品になりました。
同年3月の「hololive 3rd fes. Link Your Wish」では、この曲を大舞台で歌います。
かわいらしい姿から柔らかな歌を想像した観客を驚かせたのは、広い空間を満たすような声の迫力でした。
雄大な曲調と歌声が結びつき、目の前の一人から物語全体が広がっていくような存在感を生んでいます。
その公演では、ゆっくりとステージを歩きながら、よく伸びる高音を聴かせました。
声の魅力を、細かな動きで次々に見せ場を作る方法とは違う形で伝えたのです。
歌の持続そのものが、舞台を支える時間になっていました。
ただし、力強い歌が注目された後も、かわいらしい声を手放してはいません。
2022年7月の荒咬オウガとの「はらぱん ぱんぱんぱん」では、彼女のキュートな声と相手のクールな声を組み合わせています。
大人びた声へ一本化するのでなく、相手や曲によって違う面を生かす道を進んでいました。
2023年、歌詞の感情と、声を響かせる場所を考える
2023年の4th fes.でソロに選んだのは、「生きるよすが」でした。
前年は自分のオリジナル曲で大きな驚きを与えましたが、今度は日本語のカバーで感情を届けます。
言葉を込めた歌と身振りが結びつき、その曲で何を伝えるかが前に出た場面です。

画像出典:画像掲載元
同じ公演では、同期のアイラニ・イオフィフティーンと「トンデモワンダーズ」も披露しました。
ソロで深く感情を伝えた後に、二人でポップな楽しさを作る。
一つの公演の中でも、歌に求められる役割が切り替わっています。
本人はこの時期、ライブの歌詞やアレンジに意見を出し、会場でどう響くか、自分はどう歌いたいかを提案すると話しています。
また、4th fes.で準備の流れを経験したため、その後の公演は進めやすくなったとも振り返りました。
歌を届ける準備にも、自分の判断を持っていたことが分かります。
2023年7月のロサンゼルス公演「Connect the World」では、ムーナ・ホシノヴァ、パヴォリア・レイネと「id:entity voices」の日本語版を歌いました。
一人で歌の世界を引き受ける場から、複数の声で明るい連帯感を届ける場へ。
海外公演への参加も、声を使う文脈が増えていく歩みの一つです。
夜のシティポップと「Sing Out」が広げた曲の景色
2023年4月には「1:15 AM」を発表しています。
作詞と歌をリスが担当し、Raditya Joko Bramantyoが作曲した作品です。
初のオリジナル曲に続き、自分で言葉を書くことが、歌手としての活動に根づいていきます。
この曲で広がるのは、1980年代のシティポップを思わせる、夜の懐かしい空気です。
壮大なバラードとは違い、日常の時間や記憶に近い景色が曲の中心にあります。
リスの声を、舞台いっぱいに広がる迫力から知った人にとっても、別の音楽の中で出会い直せる作品です。
同年10月には「Sing Out」が配信されました。
作詞はSpirit Garden、作曲と編曲は都丸椋太で、音楽制作をElements Gardenが担当しています。
自作詞の作品だけで歩みを固めず、別の作り手の言葉や音楽を歌う機会も重ねていました。
「Sing Out」:2023年配信、2024年公開のMV。
2024年の5th fes.では、この「Sing Out」を力強く歌っています。
「ALiCE&u」一曲の印象にとどまらず、別のオリジナル曲でも大舞台を担うようになったのです。
同じ公演には四人で歌う「ジャックポットサッドガール」もあり、ソロとユニットを行き来する活動は続いていました。
力強さの中に細かな表情を置き、代表曲を他の声へ開く
2025年の6th fes.で歌った「フレイムハート」では、力強い歌唱に加え、落ちサビでビブラートを聴かせています。
曲を勢いよく運ぶ声と、音に揺れを加える表現が共存した場面です。
同年8月のニューヨーク公演「All for One」では、「ALiCE&u」をネリッサ・レイヴンクロフト、エリザベス・ローズ・ブラッドフレイムとの三人で披露しました。
初のオリジナル曲は、一人の声の驚きを伝えた作品から、他の歌手と分かち合う曲にもなっています。
翌日の公演では、小鳥遊キアラ、シオリ・ノヴェラと「Suspect」を披露しています。
こちらはジャジーで軽快な曲です。
二日間で、雄大な代表曲を他の声と分かち合う場と、違う曲調の三人組で歌う場の両方を持ちました。
大きく響く声を知ってもらった後も、歌う組み合わせや曲の景色を広げ続けています。
「MIR//or」で、声の違いそのものを一曲にする
2025年11月に発表した「MIR//or」は、再びFeryquitousと組み、リス自身が作詞を担当した作品です。
その後、本人のチャンネルでは「AYUNDA VERSION」と「RISU VERSION」のカラオケ版も公開されました。
二つの呼び名は、初期の配信での説明にとどまらず、一つの作品を分けて捉える言葉にもなっています。
2026年の7th fes.では、二種類の歌声によるセルフデュエットを、二人のリスが立つ舞台として表現しました。
色味の異なる衣装をまとった二人は、立ち位置を交代し、視線や手の動きを合わせます。
声を順番に切り替える驚きから、異なる声が向き合い、重なる関係そのものを見せる表現へ進んだのです。

画像出典:画像掲載元
ここまでの変化は、高い声が低くなった、歌が強くなった、という一本の線では捉えきれません。
初期からあった声の違いを、バラード、かわいらしい共演曲、シティポップ、そしてセルフデュエットへと展開してきました。
同じ歌手の中にある複数の声を、どんな関係で曲に置くか。
その問いを作品や舞台で深めてきたところに、アユンダ・リスの変遷があります。
声の高さ、伸び、揺らし方や共演相手との組み合わせについては、アユンダ・リス(ホロライブ)の歌い方で掘り下げています。







コメント