TENの歌では、同じ声の勢いを保つより、途中で手触りを変えることが印象を作ります。
低い声で始め、高い裏声へ移る「Birthday」。
高音から語るような声へ切り替える「Nightwalker」。
旋律のある歌に、別人が入ってきたようなラップを挟む「STUNNER」。
声の高さだけでなく、どの場所で、何へ切り替えるかを追うと、歌い方の特徴がはっきりします。
「Birthday」は、強さと柔らかさを一曲に置く
TEN自身が説明しているのは、ヴァースの低い声と、サビの高いファルセットの対比です。
ファルセットは、ここでは裏声のことです。
強さと柔らかさを両方見せるため、部分ごとに声を変えています。
リズムにも、少し遅らせる感覚や、言葉を引き延ばす扱いが必要だったと話しました。
低い部分から高い部分へ行くとき、同じ押し出しのまま音だけを上げるのではありません。
声の種類が変わるため、サビへ進むことが、質感の変化にもなります。
聴きどころを高音一つに絞るより、その手前の低い声を含めて捉えると、対比の意味がわかります。
先に置かれた声があるから、その後の柔らかい響きが際立つのです。
対照として挙げたいのが「Paint Me Naked」です。
TENが気に入っていたのは、サビ後の、耳に残る落ち着いた旋律でした。
明るいポップロックの中にも、ずっと勢いを上げ続けるだけではない部分があります。
ギターの華やかさと、本人が気持ちよさを感じた旋律の流れを分けて見ると、曲全体を一色で捉えずに済みます。
「Nightwalker」は、高い声の後で語りかける
「Nightwalker」では、サビ前に高いファルセットへ向かい、そこから語るような短い声へ移って、電子音の強いサビに入ります。
高く歌い上げた後に、さらに同じ声を積み上げる構成とは違います。
声の運動をいったん変えることで、サビのビートへ受け渡しているのです。
重いベースや揺れるギターも、歌声の周囲に不穏な雰囲気を作ります。
ただ、ビートが強く、後半へ進むほど声を圧倒すると感じる聴き手もいます。
歌声を前面で味わいたいか、音全体に包まれたいかで、この曲の受け止め方は変わるでしょう。
TENは、この曲を演技のように歌おうとしました。
人を惑わせる人物像を考えると、語るような声も、単なる高音の休憩ではなく、相手へ働きかける表現として捉えられます。
大きく響かせる部分と、言葉そのものを差し出す部分の違いが、人物の妖しさにつながっています。
曲には、加工された歌声や、幽霊を思わせるファルセットの印象もあります。
そのため、録音で感じる不気味さのすべてを、生の発声だけへ帰すことはできません。
TENが選んだ声と、音を加工して作った質感が重なるところに、この曲の世界があります。

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「STUNNER」では、歌とラップの切り替えが耳を引く
「STUNNER」では、サビ前のファルセットに加え、二番のまとまったラップが目を引きます。
旋律を動かす歌から、リズムを細かく刻む流れへ移ると、同じ一人の曲に別の歌い手が加わったような変化が生まれます。
声の高さだけを比較するより、旋律を聴かせる部分と、言葉の運びで進める部分を分けて追うと、切り替えの鮮やかさが見えてきます。
一曲の中で歌とラップが並ぶこと自体が、TENの見せ場になっているのです。
同じアルバムでも、「BAMBOLA」は速いラップ、「Sweet As Sin」は旋律を伴うラップへの挑戦でした。
本人は、こうした新しい試みに勇気が必要だったと話しています。
また「Waves」では、録音後の自分の声色を、初めてきれいだと感じたといいます。
速く言葉を進める面と、自分の音色そのものに耳を向ける面が、同じ作品にあります。
TENをラップも歌もできる人、と一言でまとめると、この差が隠れてしまいます。
一つの曲で何を前に出しているかを見るほうが、それぞれの選択を捉えやすくなります。
声を包むコーラスと、本人の声を聴き分ける
「New Heroes」は、主旋律と周囲の声を分けて考えたい曲です。
TENの歌を支えるコーラスが、比較的素直な旋律に大きな広がりを与えています。
声が厚く感じられる場面では、本人の一声が急に太くなったかどうかだけでなく、重なっている声にも注目できます。
この録音には、バックボーカルとしてAndrew Choi、Jon Asher、Shawn Hookがクレジットされています。
つまり、聴こえる声の層をすべてTEN一人の多重録音と考えるのは適切ではありません。
中心にある本人の歌を、他の声も加えて支えた録音なのです。
「Birthday」の声の切り替えと、「New Heroes」の声の重なりは、別の仕組みです。
前者では一人の歌う部分ごとの違いが働き、後者では複数の声をどう配置したかも印象に関わります。
この二つを区別すると、裏声の柔らかさと、録音全体の厚みを混同せずに聴けます。
音色の細さや太さを一つの尺度にしてしまうより、歌を立体的に捉えられます。

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「OUTWEST」で選んだ、飾らずに歌う難しさ
TENは「OUTWEST」を、ラップ寄りでありながら、まっすぐな歌い方の曲だと説明しています。
そこで感じたのが、いろいろな味付けをするより、飾らずに歌うほうが難しいということでした。
これまでと違う声色や言葉の歌い方を試したいからこそ、選んだ表現です。
声を華やかに変えていく選択に加え、過度に飾らずに届ける選択にも、難しさを見いだしています。
この曲を「Birthday」と並べると、TENの歌い方を一つに決められない理由がわかります。
裏声へ切り替えることが中心になる曲もあれば、飾らない運びそのものが課題になる曲もある。
曲ごとに、必要な歌い方を選び直しているのです。
英語の曲を聴いて育ったTENは、英語で歌うと感情を表しやすいと説明していました。
慣れた言葉を使う曲の中でも、こうした歌い方の探求は続いています。
TENらしさを一つの発声だけで探すより、切り替えの位置に目を向けてみる。
「Birthday」の低い声から裏声へ、「Nightwalker」の高音から語る声へ、そして「STUNNER」の歌からラップへ。
何をどう変えたときに一曲の景色が動くのかが、この歌手の大きな聴きどころです。
こうした選択が育った経緯は、テン/TEN(WayV)の歌唱変遷でたどれます。

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