しぐれういの歌を考えるとき、柔らかく可愛い声という印象は一つの入り口になります。
「フォーチュンムービー」のカバーでは、原曲の弾むリズムに、本人の柔らかな声が重なります。
けれど、その柔らかさをどの曲でも同じように使っているわけではありません。
言葉の終わりや声の高さの印象を変え、曲の中の人物を描くところに、歌い方の面白さがあります。
語尾は、言葉に表情を付ける場所
本人が学んだと話しているのは、歌詞の意味を捉え、語尾に楽しそうな感じを加えることでした。
また、ライブでは目の前の相手へ語りかけるように歌う助言も受けました。
どの音を出すかに加えて、その言葉を誰へどう伝えるかを考える歌い方です。
普段の配信の声については、クラスメートと話すようなくだけた距離感を意識しているといいます。
これは歌唱法そのものの説明ではありませんが、相手と気楽に楽しめる声を考えている点は、歌の語りかけ方を知る手掛かりになります。
特別な響きを作ることばかりに注目すると、声の向こうに相手を置く感覚が見落とされてしまいます。
可愛さと低い声を、一曲の中で切り替える

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「粛聖!! ロリ神レクイエム☆」では、幼いキャラクターの明るさと、相手を突き放す態度が同じ曲にあります。
前半では語尾が少し上向き、後半には低めの声が増えていきます。
高い声を保ち続けることだけが、この人物を表す方法ではない。
可愛らしさと冷たさを行き来することで、言葉の受け取られ方も変わります。
ここで起きているのは、長い年月による声質の変化ではなく、一曲の中での態度の切り替えです。
歌と台詞を組み合わせ、相手との距離を急に変えることも、この曲の表現を支えています。
描く人と、描かれたキャラクターを歌い分ける
『fiction』では、イラストレーター側とVTuber側の曲で、意識的に歌い方を変えたと本人が説明しています。
「勝手に生きましょ」は、その二人がデュエットするために作られた曲。
どちらかを本当の声、もう一方を作った声と分けるより、それぞれの役に必要な表現を選んだものとして受け取れます。
その前提には、VTuberも自分の作品として見せたいという考えがあります。
本人は、描き手とキャラクターの両方を大切にしながら、安心して楽しめる創作として届けたいと話しています。
歌の中の気持ちをすべて私生活の告白として読まず、誰の視点で歌う曲なのかを考える。
それによって、一人の声が複数の人物を担う仕組みが見えます。
2024年の「INTERNET OVERDOSE」のライブ歌唱も、役柄に応じた声の選択を示す例です。
可愛らしさと妖しさを行き来する歌声が、この曲の人物像を伝えます。
声を強くすることだけで気持ちを盛り上げず、曲の人物像に合わせて声の印象を変える。
オリジナル曲でなくても、その演じ分けが働いています。
ラップは、速く言えれば完成するわけではない

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「ひっひっふー」は、サビ以外がラップという挑戦でした。
最初から言葉を追えたわけではなく、半分の速さで聴いて練習し、長い時間をかけて収録しています。
完成した勢いのある歌唱の前に、言葉の流れを自分でつかむ作業がありました。
ひっひっふー(2025年公開MV)
本人は、ラップ好きの友人に格好よく聞かせる方法を教わったことや、仕上がりを支えたディレクターの働きも挙げています。
言葉を追う練習に、人と試す表現作りが重なった歌唱でした。
花譜、星街すいせいと歌った「仮装狂騒曲」では、しぐれういは倉本千奈のパートを担当しました。
無邪気な節回しを生かし、サビの声にも人物らしい表情を付けています。
三人の声を同じ方向へ揃えるより、それぞれの個性を役に重ねたカバーです。
しぐれういの可愛らしさも、難しい言葉の運びの中で人物を伝えるために使われています。
柔らかさを生かす歌と、別の声へ受け渡す歌
masterpiece(2024年公演・全曲ダイジェスト)
2024年の「masterpiece」では、「rainy lady」の切ない歌声から、「太陽少女」の明るい世界へ進む対照もありました。
この並びは、同じ舞台の中で歌の温度を変える例です。
続く「限りなく灰色へ」では、感情を強くぶつける歌唱も見せました。
役柄を際立たせる鋭い台詞と、切なさを伝える声、気持ちを押し出す強い歌。
それぞれが別の場面で働いています。
可愛い声を一定に保つのではなく、曲と曲の間でも表情を変えることで、公演の流れを作っているのです。
「フォーチュンムービー」では、原曲の楽しげなリズムと、本人の穏やかな声の組み合わせが魅力になります。
強い台詞や急な声色の変化で印象を残す曲とは違い、柔らかさを保つことにも役割がある。
元の楽曲をよく知る聴き手にとっては、同じ旋律に別の温度が加わるカバーでもあります。
声をもとに開発された「雨衣」の歌と、しぐれうい自身の歌唱は、区別して考えたいところです。
雨衣は、歌詞や音符を入力して使う歌声合成ソフト。
そこから生まれた曲の声域や歌い回しを、そのまま本人の発声能力の証拠にはできません。
似た声でも、表現を作る工程が違うのです。
2026年の舞台には、雨衣との共演と、「二人模様」のピアノ弾き語りが共存していました。
しぐれういの声を捉える鍵は、その場面で誰として歌い、誰へ声を向けるかにもあります。
こうした選択が増えてきた経緯は、しぐれういの歌唱変遷でたどっています。

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