TSUZUMIの歌声の変遷|力強い高音から、モアナの心を歌う声へ

TSUZUMI(2024年掲載)撮影:ISAC(SIGNO) TSUZUMI(ME:I)
TSUZUMI(2024年掲載)撮影:ISAC(SIGNO)

ME:IのTSUZUMIは、デビュー前から歌声で注目を集めた人です。
その後の成長は、さらに高い音を出せるようになった、という物差しだけでは捉えられません。
自分で歌い方を提案し、仲間との歌に磨きをかけ、やがて登場人物のために発声を学び直す。
得意な歌を持っていた人が、その得意な形の外へ踏み出していく歩みです。

2023年|憧れる側から、歌声を託される側へ

TSUZUMIの憧れには、華やかなダンスと弾き語りの両方がありました。
E-girlsのステージに触れ、歌いながら踊る道に憧れる一方、あいみょんの甲子園での弾き語りにも心を動かされ、ギターの練習を本格的に始めました。
踊りながら歌う姿と、一人で歌を届ける姿の両方に、将来の自分を重ねていたことがうかがえます。

2023年の『PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS』には、海老原鼓の名前で参加しました。
最初の評価で歌った「WANNABE」では、ダンスの経験が乏しい中でも、歌の安定感が評価されています。
続く「Hero」ではメインボーカルの担当ではなかったものの、編曲側から大きなアドリブを任されました。
自分が一番になりたい気持ちと、チームの中でどう歌うかという迷いが、同時に生まれる経験です。
本人がこの曲で思い浮かべていたのは、すでに番組を去った仲間たちでした。
歌唱力を評価されるだけでなく、誰に届ける歌なのかを考える場面も、早くからあったのです。

海老原鼓(2023年「PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS」)
海老原鼓(2023年「PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS」)。
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2024年|「Click」から「Hi-Five」へ、自分で声を作る

ME:Iのデビュー曲「Click」の録音では、与えられた歌い方をこなすだけではありませんでした。
終盤の高音のフェイクで、すべてを裏声にするのではなく、ある高さまでは地声で歌ってみることを、TSUZUMI自身が提案しています。
その案は採用されました。
持っている高音を披露する段階から、どの声で曲の山場を作るか、自分で選ぶ段階へ進んだことが分かる出来事です。

MOMONAも、「Click」の最後のサビでは、TSUZUMIとAYANEによるアドリブを聴きどころに挙げています。
二人の歌が、グループの曲を最後に押し上げる役割を担うようになったのです。

続く「Hi-Five」でも、AYANEとフェイクを担当しました。
TSUZUMIは、おなかに力を入れることを意識し、「Click」のときより手応えを感じたと振り返っています。
デビュー時の成功で終わらず、次の録音では声の支え方を確かめ直していました。

2025年|戻った舞台で、客席と歌を分かち合う

2024年の活動休止を経て、2025年8月31日、広島でのアリーナツアー最終公演から活動を再開しました。
長く離れていたステージへ戻り、再び仲間と歌を届ける日になりました。

復帰した公演では、「THIS IS ME:I」を披露し、「LEAP HIGH! ~明日へ、めいっぱい~」では、客席に歌ってもらうパートをTSUZUMIが導きました。
一人の高音へ視線を集める場面から、会場全体で同じ曲を歌う場面へ。
その日の歌には、戻ってきた本人を見せる役割と、待っていた人と時間を共有する役割がありました。
「Fan Letter」も含め、歌を届ける相手が目の前にいることを、強く感じさせる復帰の舞台だったのです。

2025年8月31日、広島公演の「THIS IS ME:I」。

2026年|高音の完成度と、言葉の表情を磨く

2026年には、MIU、AYANEとの三人で「Golden」のカバーを公開しました。
TSUZUMIは、ずっと歌いたかった曲で二人と共演できることを喜び、難しい高音を美しく仕上げようと取り組みました。
練習より良いテイクも録れたといいます。
自分の得意な高音であっても、録音の中でさらに良い形を探す姿勢は変わっていません。

AYANEもこの時期、TSUZUMIの伸びやかで明るい声に、以前より多くの表情が加わっていると語っています。
近くで一緒に歌う人の言葉からは、もとの明るさを失わず、出せる声が増えていることがうかがえます。

「花咲く道」では、別の難しさにも向き合いました。
曲の終盤のラップで求められたのは、本人が悲しそうに歌うことではなく、笑って歌いながら聴く人を感動させる表現です。
音の高さに加え、言葉をどういう気持ちで差し出すかが、録音での課題になりました。

本人は、この曲の2番の言葉に、自分の経験と重なるものを感じていました。
共感できるから、そのまま気持ちを出せば完成するわけでもありません。
自分の思いを持ったうえで、曲が求める表情に整える。
「花咲く道」では、歌の中に自分を見つけることと、作品として届けることを、両方引き受けています。

「花咲く道」期のTSUZUMI(2026年)©LAPONE GIRLS
「花咲く道」期のTSUZUMI(2026年)©LAPONE GIRLS。
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2026年|モアナ役で、得意な歌い方を学び直す

同年の実写映画『モアナと伝説の海』では、日本版モアナの声を担当しました。
実は、2024年の『モアナと伝説の海2』でME:Iが日本版エンドソングを歌ったとき、TSUZUMIは活動休止中で参加できませんでした。
本人は、その悔しさから、いつかこの作品に関わりたいと思っていたと明かしています。
グループの仕事の延長というだけではない、自分自身の願いがある挑戦でした。

オーディションへ向けた準備から、モアナとしての発声を一から教わりました。
本人が難しくて弱音を吐いたこともあったというほど、普段のME:Iの歌とは違う準備です。
すでに歌で評価されていても、この役のためには、あらためて学ぶ必要があったのです。

TSUZUMIは、発声方法や意識する点がME:Iのときとは大きく違い、意識しなくてもできるようになるまで毎日練習したと説明しています。
一度教わって、その場だけ声を変えるのではなく、役の中で自然に歌えるところまで繰り返す。
ここで増えたのは、別の曲を歌えること以上に、別の人物として歌うための準備でした。

役に決まってからも、大好きな歌をそのまま歌えばよいわけではありません。
TSUZUMIは、アニメーション版の屋比久知奈によるモアナらしさを残しながら、実写版のキャサリン・ランガイアの演技にも合わせる難しさを語りました。
すでに親しまれている人物像と、目の前の新しい演技。
その両方に、自分の声を結び付ける必要があったのです。

「どこまでも ~How Far I'll Go~」のための楽譜には、歌唱のポイントを細かく書き込んでいました。
憧れの海へ進みたい思いと、迷い、その先の決意。
すでに知っている曲でも、物語の中でどんな気持ちが動くのかを追い直し、歌の形にしていったのです。

2026年の実写版・日本語歌唱。

憧れていた声と並び、自分も誰かへ届ける

日本版エンドソング「旅立とう ~Along The Way~」では、屋比久知奈、尾上松也と共演しました。
TSUZUMIにとって、二人の声は以前から親しんできたモアナとマウイです。
自分が勇気をもらってきた歌い手と並び、今度は誰かへ勇気を渡す側になる。
この共演には、新しい役を得た喜びと、長く好きだった作品へ自分の声で参加する喜びが重なっています。

沖縄でのイベントでは、小禄高校の合唱部と「どこまでも」を歌いました。
一人で歌うときの緊張とは違い、皆の顔を見ながら歌えることが楽しかったと話しています。
グループ、高音の難しいカバー、登場人物としての歌、合唱との共演。
歌う相手や場面が変わるたびに、声を届ける感覚も広がっていきました。

2026年6月、沖縄で小禄高校合唱部と共演。

TSUZUMIの歩みでは、最初から認められていた歌の強さが、新しい挑戦を不要にしたわけではありません。
「Click」で自分から声の使い方を提案し、「花咲く道」では感情の見せ方を探り、モアナ役では発声から学び直す。
得意な高音を持つことと、歌うたびに新しい課題を見つけることが、並んで続いています。
地声と裏声、曲の中での感情の選び方は、TSUZUMI(ME:I)の歌い方で詳しく扱っています。

2026年11月のシンガー人気投票。投票期間は11月1日〜11月30日。11月の投票はこちら。

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