ヒョリンの歌には、声を張った瞬間に空気を変えるような迫力がある。
その一方で本人は、早くから「いつも同じ声で歌う人」と思われることを気にしていた。
SISTARで印象づけた力強さを持ちながら、ほかの声も届けたいという願いがあったのだ。
その願いは、ソロ曲を出すだけでは完成しなかった。
どんな曲を選び、誰と作り、どんな姿で歌うのか。
選択に自分の意思を通していく過程に、ヒョリンの歌唱の変遷が表れている。
初ソロで広げた声と、本人に残った心残り
SISTARのメンバーとして活動していた2013年、初ソロアルバム『LOVE & HATE』を発表した。
この時点で、すでに一種類の歌い方では収まらない作品だった。
ダンス曲「One Way Love」と、アコースティックな響きを持つ「Lonely」を並べた二つの表題曲。
アルバム全体でも、力強い高音に加えて、力を抜いて語る歌唱やラップを取り入れていた。
SISTARの中では伝えきれない面を、十曲を通して示そうとしていたのである。
ところが活動を終えた本人には、好きなR&Bの感覚を十分に生かせなかったという悔しさが残った。
グループと違う姿を見せようとするうちに、自分の持ち味を置き去りにした、と感じていたのだ。
表現の幅を広げることと、自分らしい歌になることは、彼女の中でまだ一致していなかった。
仮面をつけて気づいた、勝つための選曲との距離
2016年の『覆面歌王』では、キム・ゴンモの「미안해요」と、チョンインの「장마」を歌った。
出演後、以前の競演ではSISTARと自分を知ってもらうため、勝ちやすい曲を選びがちだったと振り返っている。
今回は名前や外見から離れて声を聴いてもらい、さまざまなスタイルを示したかったという。
名前を隠した舞台は、選曲の目的を考え直す場所にもなった。
同年、ソロ活動でお気に入りの曲を尋ねられたとき、一番に選んだのは自身が制作した「Slow」だった。
SISTAR19の「A Girl in Love」、ジュヨンと歌った「Erase」も挙げている。
ヒット曲の順位とは違うところに、歌い手本人が大切にする曲の並びがあった。
2018年、声を聴かせる曲と踊る曲を、自分の仕事にする

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2017年のSISTAR解散後、ヒョリンは独立して活動を続ける。
翌年の連作『SET UP TIME』は、声を前面に置いた「To Do List」から、ヒールダンスを伴う「Dally」へ進んだ。
独立した歌手として、声とダンスのどちらにも居場所を作った始まりだった。
「Dally」で大きかったのは、用意された曲を歌うだけではなく、メロディを作る段階から参加したことだ。
本人は、歌の旋律作りを楽しかった経験として振り返り、そこに自分の物語も込めたと説明している。
踊りや衣装まで含めて仲間と形にする作業は大変だったが、完成した歌と振付が届いた喜びも大きかった。
2018年の初単独公演『True』では、そうした別々の表情を一つの舞台につないだ。
SISTARのヒット曲からソロ曲へと進め、自分の歩みを伝える曲順にしたのである。
同時期の米国クラブ公演では、すぐ近くの観客が歌詞を知り、一緒に歌って踊ることにも驚いたという。
歌を届ける先が、テレビの向こうから目の前の顔へと近づく経験でもあった。
公演を前にした本人は、耳と目の両方で楽しめる舞台にしたいと話していた。
「Dally」は制作を通じて特に愛着のある曲になったが、準備では、欲張って詰め込みすぎることにも気をつけていた。
歌える曲をすべて並べるのではなく、一晩の流れにする。
単独公演は、異なる歌い方を持つ自分を、一人の歌手として提示する機会になった。
後年、ヒョリンは歌手として大きな成功を得たのはグループ時代だとしながら、自分自身の成功は、挑戦したい音楽やダンスを形にできた瞬間にあると語った。
自作曲を発表し、それを集めて単独公演やツアーへ持っていくこと。
ソロ活動の手応えを、グループ時代と同じ物差しだけでは測っていなかったのである。
「9LIVES」で、声の物語を身体へ広げる
2020年の「9LIVES」では、バラードに裸足のダンスを組み合わせた。
本人が伝えたかったのは、ヒョリン自身の話だった。
声で運んできた感情を、手や足の先まで使って表そうとしたのである。
静かな曲にも動きを与えることで、歌とダンスを分けずに物語を届ける姿勢がはっきりした。
本人が初単独公演を忘れられない経験に挙げたのも、時間の制約に追われず、用意したものを見せられたからだった。
短い出演枠に得意な瞬間を集める場と、自分の物語に時間を使える場。
歌う場所を持つことで、表現を展開する長さも選べるようになっていた。
2022年の『iCE』では、全六曲の作詞・作曲とプロデュースに関わった。
強い印象を与えるステージ上の自分と、普段の柔らかな面。
その両方を含む作品にしようとしていた。
表題曲「NO THANKS」に決まるまでには、冒頭曲「Over You」も候補にあったという。
何を最初に聴かせて自分を紹介するかまで、歌い手自身の判断が及んでいた。
2024年、二人で歌う声と、仮面の下の声
SISTAR19として再びボラと歌った「NO MORE(MA BOY)」では、二人の声の役割にも変化があった。
ボラがラップに代わって歌に挑み、ヒョリンはそのボーカルディレクションを担当した。
ボラは、ヒョリンの助けで安心して挑戦できたと話している。
自分の声で曲を引っ張ってきた歌手が、相手の歌を引き出す側にも回ったのだ。
ヒョリンはこの再始動で、以前より自分たちの考えを伝えやすくなったとも語った。
ただし、すべてが思いどおりになったとまでは言っていない。
二人の制作への参加が増えたことと、作品を相談して作る現実の両方を見ていた。
昔の関係へ戻るだけの再会ではなかったのである。
「MA BOY」で恋の相手を追いかけていた主人公も、新曲では、関係の終わりを以前より落ち着いて扱う人物になった。
ヒョリン自身が、年齢と経験を重ねた二人に重ねて説明している。
声を分ける役割に加え、何をどんな立場で歌うのかも、再会した二人に合わせて更新されていた。
その年の『覆面歌王』では五連勝を記録する。
本人にとって大きかったのは、自分が好きな曲と、ファンが望む曲の重なりを見つけられたことだった。
それまでは両者が違うと感じ、戸惑うことも多かったという。
ダンスを伴うソロ活動を進めてきた時間の先で、声そのものを待つ人とのつながりを確かめ直した。
2024年の別の取材でも、周囲の評価を求めるうちに、自分の音楽が何なのか分からなくなることがあったと明かしている。
そこで大事にするようになったのが、自分から作り、選ぶ姿勢だった。
独立した時点ですべての迷いが消えたわけではなく、その後も曲を届けながら判断を重ねていたのである。
原点へ戻ることが、新しい歌の出発点になる

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2026年の『OriginaLyn』では、デビュー前に夢中になったR&Bやポップを再びたどった。
デスティニーズ・チャイルドやアッシャーらに心を動かされた頃の感覚を、今の作品に持ち込もうとしたのだ。
「ChecK」には、もっとよく歌おうと自分を追い込む姿勢を緩め、作る過程を楽しみたいという変化も重なる。
好きだった音楽を、今度は作品の出発点に選んだ。
その声で何を歌いたいのか。
ヒョリンの歩みをつないでいるのは、その問いに自分で答えようとする姿勢なのだと思う。
曲ごとの強弱や息の扱いについては、ヒョリンの歌い方で詳しく見ている。

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