RYO(ORANGE RANGE)の歌い方|低い声で場面を変えるラップと言葉の置き方

ORANGE RANGEのRYO RYO(ORANGE RANGE)

ORANGE RANGEの三人の歌声の中で、RYOは低い声を担当します。
その声は、ただ楽曲の音程を下で支えるためにあるのではありません。
曲の景色が切り替わる場面に入り、次の歌へ橋を架ける。
本人の取材を読むと、言葉を乗せる前のリズム探しから、録音後のライブでの見せ方まで、一節を働かせるための細かな選択が見えてきます。

低音は「目立たない声」ではなく、場面を変える声

RYOは2022年の取材で、曲の場面が変わる展開で自分が歌うことが多いと説明しました。
低い声で曲に色をつけるのが、バンドでの自分の役割だといいます。
この言葉は「低音ならどの曲でも同じ歌い方をする」という意味ではありません。
三人の声の間に入るとき、前の場面との違いをつくり、次へ渡すという役目です。

ソロを経験した本人は、一人で歌うと全部を歌い切らねばという重さがある一方、三人では歌い切ることと観客を楽しませることのバランスがよい、と話しています。
だからRYOの歌を聴く入口は、高い音が出るかどうかではなく、その声が曲のどの位置に置かれ、何を切り替えるかです。
ソロ挑戦からこの役割を見つめ直すまでの経緯はRYOの歌唱変遷にまとめています。

言葉より先に、体に合う譜割を探す

RYOはデモを受け取ると、空いているラップの区間にすぐ言葉を書き込むだけではありません。
2022年の取材では、音源を流して声を出し、自分の中から出てくる譜割のどこが気持ちよいか、二、三時間探してから言葉を入れると話しました。
譜割とは、拍に対して言葉の音をどう配置するかということです。
意味のある文章を先に完成させ、後から無理に拍へ押し込む順序とは違います。

作る場所を漁港に変えてから詞が進みやすくなった、という話もしています。
音を聴きながら声を試し、そのときの感覚に合う言葉を探す時間を確保しています。
候補の詞を次の曲へ取っておくより、その時の熱が消えないうちに使う、とも説明しました。
ひとつのヴァースが、その曲だけの音と言葉から出来ていきます。

ORANGE RANGEのRYO
2016年のRYO。
『縁盤』での「花」の再録を語る。
写真出典:SPICEの2016年取材・撮影 樋口隆宏

「花」の再録で、ピアノに歌の入口を任せる

低い声をどう曲へ入れるかは、速いラップだけの問題ではありません。
2016年のコラボアルバム『縁盤』で「花」をKのピアノと録り直したとき、RYOは、自分が入るBメロについて、テンポが落ちたので苦労するかと思ったと語りました。
けれど先に録られたピアノが歌をうまく引っ張ってくれた、と受け止めています。
共演者の音に合わせて、言葉を置く位置と入り方を決めた場面です。

共演したKも、あらかじめ誰がどのパートを歌うか教わり、声とピアノがぶつからないよう押し引きを考えたと説明しています。
言葉数のあるラップを邪魔せず演奏することが、自分にとっても学びになったそうです。
RYOが歌いやすいと感じた背景には、伴奏側も声の位置を意識していたことがありました。

声を強く押し出すことだけがRYOの持ち味ではなく、ピアノが作る空間に低い声を置く選択もある。
この例を挟むと、曲を勢いで押すラップと、ほかの音に導かれて入る歌の両方が見えてきます。

2018年のアルバム『ELEVEN PIECE』でも、NAOTOやYOHのデモではRYOのラップ部分が空いて届くことがあると本人が述べています。
「Theme of KOZA」は地元コザを扱うことが決まっており、自分の経験がすぐ言葉になった。
一方で、すべての歌詞をRYOが書くわけではありません。
空白のあるデモと、すでにかなり形になった曲とでは、声に求められる仕事が変わります。

「Pantyna」では、詰まった言葉を一文字ずつ扱う

「Pantyna feat.ソイソース」について、RYOはラップの言葉が詰まった箇所では、一文字ずつ分解するように発音すると、意外にすっきり言えると説明しました。
速さだけを追うほど言葉が絡む部分で、まず何の音を並べているかを明瞭にする考え方です。
この曲を歌う読者へ向けた本人の答えですが、RYO自身の言葉の扱い方を理解する手がかりにもなります。

本人は、チャーリー・ツナの低い声には輪郭のあるアタックがあり、自分もどうすればそれが前に出るか学んでいる、と話しました。
低ければ自動的に迫力が出るわけではない。
声の入り口と言葉の輪郭に関心を向けていることが、ここから分かります。
アタックとは、音が出始めるときの立ち上がりのことです。
RYOが学ぼうとしているのは、低く響く声の中にも、一つの音が前へ出てくる感覚を持たせることなのです。

「Illusion」では、言葉の強さも調整する

同じ『Double Circle』の「Illusion feat.ペチュニアロックス」では、RYOは言葉選びに時間をかけました。
強いメッセージを扱うだけに、選び方を誤れば誰かを傷つけるかもしれない。
それでも言うべきことは言いたいという思いがあり、何度も聴き直して考えたと話しています。

この曲はテンポの感じ方も難しかったそうです。
言葉の内容を整えることと、それを曲の時間の中へ置くことが、一度に課題になりました。
「Pantyna」で詰まった言葉の発音をほどくときも、「Illusion」で言葉の強さを吟味するときも、聴き手へ何が届くかを細かく考えている。
ラップの勢いは、考えずに口から出した結果とは限らないのです。

ORANGE RANGEのRYO
2025年、ORANGE RANGEの新曲制作を語るRYO。
写真出典:BARKSの2025年取材

2025年の二番Aメロ――速さと熱量を折り返す

「マジで世界変えちゃう5秒前」の二番Aメロでは、前のサビが終わってストリングスが来た後、RYOが入ります。
次のBメロは音数が少なくなるため、勢いを保ったまま、そこへ不自然なくつなぐ必要がありました。
本人は、三連符のリズムをどこまで続けるか迷った末、折り返しで分けたと説明します。
すべて三連符にするとスピード感が落ちると感じたからです。

しかも前半には面白い言葉が多い。
RYOは自分の区間までふざけた言葉で埋めず、作品の主人公にある強さと少しの迷いを書く判断をしました。
音数、リズム、歌詞の温度を同時に考えた一節です。
曲が求める低い声とは、特定の音高や声質だけで決まるものではなく、前後の歌との関係で決まってきます。

録音した一節を、ライブで自然に出せるところまで

RYOは2018年、トラックに合う声の出し方をスタジオで探し、詞を書き、ラップする作業を続けないと、ライブで言葉が自然に出なくなると話しました。
レコーディングで一度できたから終わりではない、ということです。
三人のボーカルとスタッフで曲の置き場所や見せ方も話し合う。
歌い方は、一節の発音だけでなく、それを舞台の流れにどう置くかまで含みます。

2025年の「花」の『THE FIRST TAKE』について、RYOは歌い出しが音源とは違っても、ライブで行ってきた形なので手応えがあったと説明しました。
楽曲の構成や会場での経験によって、歌の受け渡し方を選べるわけです。
同じ曲でも、最初に誰の声を置くかが変われば、聴き手が曲へ入る道筋も変わります。

RYOの歌い方を一語で「低音ラップ」と呼ぶことはできます。
でも、音の前で譜割を探し、詰まった言葉をほどき、次の場面へ合う熱量で入るところまで見ると、その短い言葉では足りません。
三人の中で自分に回ってきた数十秒を、曲全体の向きを変える数十秒にする。
その仕事に、RYOらしさがあります。

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