HIROKIの歌い方|ORANGE RANGEの3人の声で、言葉とリズムをどう渡すのか

ORANGE RANGEのHIROKI HIROKI(ORANGE RANGE)

ORANGE RANGEの歌をHIROKI一人の声として説明すると、大事な仕組みが抜けます。
バンドにはHIROKI、YAMATO、RYOの3人のボーカルがいて、同じ曲の中でも歌う部分を分け、言葉を作る人を変えます。
HIROKIの歌い方を知る手がかりは、単独の高音や声量より、どんな言葉を選び、どこでリズムを立たせ、ほかの2人に何を任せるかにあります。

歌う人が詞を書く――ただし、曲に合う人へ渡す

楽曲制作では、NAOTOとYOHが作った曲に3人がボーカルを乗せていきます。
HIROKIによれば、歌う箇所の詞はその人が書くことが基本でした。
ただ、近年は曲調に合う人が詞を担当することもあります。
たとえば「Pantyna feat.ソイソース」はRYOが得意だと考えて任せました。
「歌う場所」と「書く場所」を常に一致させる機械的な分担ではなく、曲の面白さを優先しています。

ORANGE RANGEのHIROKI
2025年のJ-WAVE出演時、中央がHIROKI。
写真出典:J-WAVE NEWSの2025年取材

HIROKIは、3人の個性とキャラクターがそれぞれ違うことをバンドの強みと呼びます。
一人が目立つほどよいという仕組みではなく、ある言葉は自分が作り、別の言葉は相手に預ける。
その選択が一曲の表情を作ります。

同じ取材でRYOは、低い声で曲の場面を変えることが自分の役割だと話しました。
3人が似た声をそろえるのではなく、違う声が入ることで展開を作る。
HIROKIの一節を聴く際にも、前後に誰が歌っているかまで追うと、分担の意味が見えてきます。

「Illusion」――音が同じ言葉を、意味の違いで効かせる

2022年の「Illusion feat.ペチュニアロックス」でHIROKIが特に気に入っているのは、自分で書いた言葉遊びです。
「井の中」と「胃の中」の音を重ね、知らないことの怖さと、知った結果として搾取に気づく怖さを並べました。
文字にすると変換ミスに見え、マネージャーが直そうとしたという逸話も残っています。
それほど表記に違いがあるのに、歌では同じ響きで届くのがこの箇所の仕掛けです。

この曲でHIROKIが重視したのは、難しい単語を増やして技巧を示すことではありません。
聴いたときに流れる言葉の音と、歌詞を読んだときに現れる別の意味を重ねることです。
言葉遊びを「歌唱技術」と呼ぶのは正確ではないでしょう。
しかし、何を自分のパートで歌うかを選ぶことは、3人組の一人としての表現そのものです。

「イケナイ太陽」――大人の駆け引きを、背伸びして歌う

言葉を選ぶだけでは、曲の表情は完成しません。
2007年の「イケナイ太陽」についてHIROKIは、以前の恋愛の曲より一歩踏み込んだ「大人の駆け引き」を描くという方針があったと話しました。
自分の担当箇所にも大人らしさを求められ、詞を書くことに加え、それを歌で表現するのも難しかったそうです。
当時は想像を使って、自分より大人の人物へと背伸びする必要がありました。

ここで必要だったのは、言葉の主人公をどう演じるかという判断です。
2007年の恋愛の駆け引きと、2022年「Illusion」の意味を重ねた言葉は、どちらも歌う前に言葉の役割を考えている。
ただし同じやり方を繰り返したのではなく、前者はまだ自分の経験より先にいる人物を演じ、後者は社会を見る二つの意味を一つの響きに重ねています。

「Pantyna」――細かい技術より、フロウを止めない

「Pantyna feat.ソイソース」を歌う際の要点を聞かれたHIROKIは、難しいことを考えながら歌う曲ではないと答えました。
その上で、フロウの切れを保ち、ノリがたるくならないことを挙げています。
フロウとは、言葉をリズムに乗せて進める運び方です。
一音ずつ慎重に置いて勢いを止めるより、曲全体の動きを保つことを、この曲では優先します。

RYOはラップ部分について、一文字ずつ分けて発音すると言いやすいと説明しました。
細かい発音を整えるRYOの見方と、一曲の勢いを保つHIROKIの見方は、組み合わせて考えることができます。
言葉が詰まった部分を明瞭に言えても、その先へ進むリズムが鈍れば、本人が重視するノリからは離れてしまうからです。
HIROKIはさらに、恥ずかしがらず堂々と歌うことが大事だとも述べました。
歌詞の遊びを客席に届けるには、複雑な技術解説より、3人が曲の調子を崩さず乗ることが要るのです。

練習は曲に即して、目指すのは自由に歌うこと

2022年の取材で普段のトレーニングについて聞かれたHIROKIは、決まった練習はほとんどなく、録音前の準備や制作に入るときに、その曲を練習すると答えています。
毎日同じ発声メニューを積むという説明ではなく、目の前の曲に合わせて準備するやり方です。
同じバンドでも、歌謡曲を歌って声を整えるというYAMATOとは取り組み方が違います。
3人の声を理解する際には、練習の話も一人ずつ分けて捉える必要があります。

目標とする歌手を聞かれたとき、HIROKIが思い出したのは、有名な歌手ではありませんでした。
以前にバーで見た、しゃがれた声で自由に歌う、名前も知らない人だったそうです。
音程の正確さからはみ出すところも含め、その姿をかっこいいと感じていました。
印象に残っていたのは、その人が自由に音楽を楽しむ姿だったのです。

「Pantyna」で恥ずかしがらずに歌うことを勧めるのも、その自由さとつながります。
遊びのある言葉ほど、歌い手がためらっていては曲の面白さが伝わりにくい。
HIROKIは楽しもうとする姿勢が歌にも反映されると話しており、自分のパートを引き受ける気持ちまで表現の一部にしています。

「トワノヒカリ」――一曲を通して、感情の終点を決める

遊びの強い曲と違う判断が必要だったのが、映画主題歌「トワノヒカリ」です。
HIROKIは完成した映画をメンバー全員で観た後、登場人物の葛藤や落ち込みを受け止め、最後を前向きなメッセージにしたいと考えたと話します。
メンバー同士で詞を確かめ、どこで気持ちの強弱をつけるかを検討しました。
結末をRYOのラップで締めるのも、その構成の一部です。

HIROKIの発言から分かるのは、彼一人の声の大きさで感情を表したという話ではなく、3人がどの順に言葉を届けるかを考えたことです。
「Pantyna」では曲の勢いを止めずに歌い、「トワノヒカリ」では葛藤から前向きな結末までの道筋を作る。
曲ごとの目的が、言葉の置き方も他の声との組み方も変えています。

HIROKIは、ライブ全体でも遊びと真剣さの緩急を大切にしていると話しています。
「Pantyna」の勢いをバラードにもそのまま持ち込むのではなく、曲の中で何を伝えるかを切り替える。
同じ3人の掛け合いでも、場面が変われば歌うときの重心も変わるのです。

ステージに立つORANGE RANGEのメンバー
2025年のORANGE RANGEのステージ。
写真出典:オリコンニュースの2025年取材

こうして見ると、HIROKIの歌い方は固定した発声の型では説明しきれません。
自分の言葉で意味を二重にする曲、勢いを保って遊ぶ曲、最後を仲間に託して物語を閉じる曲。
その都度、何を自分が担い、どこをほかの2人に渡すかを選んでいます。
「花」の録音から現在のライブまで、そうした判断がどう変わったかはHIROKIの歌唱変遷でたどれます。

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