竹内朱莉の歌い方|音で覚える言葉と、ハモリやリズムを支える感覚

2025年2月公開の取材写真、竹内朱莉(撮影:TOMO TAMURA) シンガー
2025年2月公開の取材写真、竹内朱莉(撮影:TOMO TAMURA)

竹内朱莉の歌を支えているものには、本人にとってはごく自然な感覚もあります。
歌詞を音として覚えること、以前から担当してきたハモリ、曲ごとのリズムの違い。
それらを本人の言葉から見ると、強い歌声という印象だけでは捉えきれない、歌への向き合い方が見えてきます。

竹内は自分を、歌やダンスを感覚で捉えるタイプだと話しています。
本人が自然に行っていることと、歌の中で気になることを分けてたどると、歌い方の特徴がつかみやすくなります。

歌詞を音として覚える――意味を考えすぎない入り方

「泣いてOVER」の失恋する人物について尋ねられた際、竹内は、歌詞を理解しすぎるとかえって歌い方がわからなくなると答えています。
ananのインタビューで説明したのは、曲を繰り返し聴き、歌詞も音で覚えるという方法でした。
言葉の意味を一つずつ考えるより、メロディと一緒に入ってくる音を頼りに歌うのです。

2023年6月公開の取材写真、竹内朱莉(撮影:柿沼琉)
2023年6月公開の取材写真、竹内朱莉(撮影:柿沼琉)。
画像出典:写真掲載元

ただし、意味をまったく感じずに歌うということではありません。
「大器晩成」については、以前の下積みの経験があるから気持ちを込められると話していました。
自分の経験が曲とつながることと、録音時に歌詞を細かく分析し続けることは、竹内の中では別のものなのでしょう。

この違いを踏まえると、本人のいう感覚型という言葉も具体的になります。
歌に入るときは、繰り返し聴いて覚えた音を手がかりにする。
その上で、曲が自分にとってどんな気持ちとつながるかは、作品ごとに変わっています。

「行かなくちゃ」を作った堂島孝平は、竹内の普段の話し方に合う、難しい言葉を使わない歌詞を意識したと説明しています。
竹内自身も、この曲には意味を考え込んでしまう言葉がなく、まっすぐ自分に届いたと話しました。
歌い手が言葉を細かく解釈するだけでなく、作り手がその人に自然に届く言葉を選ぶことで、歌いやすい入口が生まれた例です。

堂島が目指したのは、竹内の卒業だけに閉じず、新しい場所へ進む人にも届く歌でした。
本人の歩みを感じさせる言葉を、自分だけの思い出にとどめず歌う。
音から入る竹内の歌にも、言葉がすっと自分に重なり、その先の聴き手へ渡っていく曲があるのです。

自分の声に合わせてキーを選び、上下のハモリも録る

ソロデビュー曲の録音では、慣れてからは歌いやすいようにキーを調整できたと、竹内は話しています。
一曲の歌いやすさは、声を強く出せるかどうかだけでは決まりません。
曲の高さを自分の声にどう合わせるかも、竹内が実際に選んだ工夫の一つです。

「泣いてOVER」では、できるところは上も下もハモリを録り、たくさんのテイクを重ねたと説明しました。
主旋律を歌うだけでなく、その上下に置かれる声も、自分で重ねていたのです。

ハモリは、ソロで初めて取り組んだものでもありません。
2023年のnon-noの取材では、昔からずっとやってきたことで、自分には普通だったと話しています。
録音映像が公開されて急に褒められる機会が増えたことを、本人は不思議に感じていました。
新しく覚えた技術が注目されたというより、以前からの役割が見えるようになったわけです。

ここでいう上下のハモリは、主旋律とは違う高さの声を重ねることです。
竹内の録音の話は、一つの声の強さだけでなく、複数の旋律を受け持つ面にも目を向けさせます。
主旋律と同じ音を重ねるユニゾンとは違い、別の旋律を歌いながら、全体で一つの響きを作る仕事です。
本人が録ったという上と下の声にも注意を向けると、前面に出る歌声だけでは分からない役割を知る手がかりになります。

ただ、慣れた録音でも、いつでも同じように始められるわけではありませんでした。
ソロデビュー作品の録音では、久しぶりの緊張で思うように声が出ず、まずウォーミングアップをしたと振り返っています。
感覚で歌う竹内にも、その感覚を使える状態に戻す時間が必要だったのです。
その後にキーを選び直したという経緯まで見ると、歌いやすい条件を整えることも録音の大切な一部だったと分かります。

歌い込む中で、録音とは違う表情を育てる

竹内は、CDの歌を後から聴くと、自分には淡々として感じられると話しています。
録音時にはまだライブで歌い込んでおらず、その後に歌い方のアレンジが増えるからです。
これは録音が不十分だったという説明ではなく、一度できた歌にも、実演を重ねることで別の表情が生まれるという本人の実感でしょう。

伴奏の変化に応じる場面もありました。
2021年のバースデーイベントで、堂島のギターと歌った「七転び八起き」や「私の心」では、慣れていないギター一本の編成を、少ないリハーサルで成立させています。
堂島は、その本番での対応を高く評価しました。
大きな伴奏や複数人の歌に頼らず、自分の声とギターで曲を届ける経験からも、歌い慣れた曲を別の形で生かせることが見えてきます。

リズムの違いを、歌い方の違いとして捉える

スマイレージの曲とアンジュルムの曲の違いを聞かれたとき、竹内が挙げたのはリズムと歌い方でした。
2023年の最後のツアーでは、以前の曲を歌う後輩に、もう少しリズムを刻むことや、原曲の感じとの違いを伝えていたそうです。
曲名やメロディを知っているだけでは、曲の持つ感触まではそろわない。
竹内は、その差を歌い方の問題として捉えていました。

2025年2月公開の取材写真、竹内朱莉(撮影:TOMO TAMURA)
2025年2月公開の取材写真、竹内朱莉(撮影:TOMO TAMURA)。
画像出典:写真掲載元

感覚で歌える人でも、ほかの人が歌ったときの違いには気づきます。
どの曲にも同じ勢いや同じ滑らかさを当てはめるのではなく、その曲に必要なリズムの置き方を確かめているのです。
後輩への言葉には、歌ってきた曲を受け継ぐための、具体的な判断が表れています。

また、「アイノケダモノ」については、激しい振り付けに歌も加わるため、とても大変だったと語りました。
メンバーで体力をつけるためのトレーニングをし、曲の後の暗転中には必死に息を整えていたそうです。
力強い歌と踊りの裏には、歌う本人が感じていた負担もありました。
歌いながら踊るための準備と、曲の後に息を整える時間も、その実演を支えていたのです。

音として覚えた言葉、自分の声に合わせたキー、主旋律の上下に重ねる歌、曲ごとに違うリズム。
竹内朱莉の歌い方を知る手がかりは、声の強さをひとまとめにするより、本人が何を自然に行い、どこに違いを感じているかを見ることにあります。

その感覚が実演やソロ録音の中でどう変わったかは、竹内朱莉の歌唱変遷でたどっています。

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