SiM MAHの歌い方はなぜ叫んでも歌になる?シャウトとクリーンの発声を分析

SiM MAHのシャウトとクリーンな歌い方・発声を分析する記事のアイキャッチ MAH(SiM)

SiMのMAHさんを説明する時、最初に挙がりやすいのは激しいシャウトです。
ところが本人は、シャウトしたいから曲を作ることはなく、感情がそこまで達した時に必要だから叫ぶのだと話しています。

この順番を逆にすると、MAHさんの声は「喉が強い人の特殊な大声」にしか見えません。
本当の面白さは、クリーンな歌、語りに近い声、レゲエの軽い節回し、荒れた叫びを、曲の感情に合わせて配役していることにあります。

MAHはシャウトを入れるために曲を作っていない

強いシャウトを持つ歌手には、どの曲にも見せ場として叫びを置くイメージがあります。
MAHさん自身もヘヴィな音やシャウトが好きだと認めていますが、曲作りの出発点はそこではありません。

悲しみや怒りが高まり、普通の歌声では足りない瞬間にだけ、荒れた声が現れます。
言い換えると、シャウトは装飾ではなく、感情が声の形を変えた結果です。

だからSiMの曲では、クリーンな旋律から叫びへ移った時に意味が生まれます。
最初から最後まで同じ強さで押すのではなく、歌えるところを歌として届けた後に、言葉では収まり切らない場所を別の声へ渡しているのです。

叫びが強く聞こえるのは、叫ばない声が入口を作るから

MAHさんは、SiMの武器をシャウトだけだと思われることに違和感を語っています。
本人が重視してきたのは、激しい音楽であっても、歌とメロディーが自然に耳へ入ることでした。

ヘヴィな演奏は、聴く人を選びます。
そのままでは近寄りにくい音の中へ、覚えやすい旋律やクリーンな声が入口を作るから、荒れた部分まで一つの歌として届きます。

シャウトとクリーンな歌を曲の感情に合わせて使い分けるSiMのMAH

2020年のアルバム制作では、歌から曲を作る方法へ移ったことで、必要のない重さやシャウトを自然に差し引けるようになったと説明しています。
声を先に置けば、曲の都合で無理に叫ぶ場面を作る必要がなくなるからです。

この変化は、激しさを弱めたという意味ではありません。
静かな声が増えた分だけ、本当に必要な一声の輪郭が濃くなりました。

一人の声ではなく、曲の中に何人ものMAHがいる

発声解説では、MAHさんの声をクリーン、ミックスボイス、がなり、デスボイスなどに分類する見方があります。
用語は理解の助けになりますが、一つの名称だけでSiMの歌を説明することはできません。

同じ曲の中でも、旋律をまっすぐ運ぶ声、言葉を短く刻む声、低く抑えた声、荒い音色が次々に役割を交代するからです。
声の種類を増やす目的は器用さを見せることではなく、曲の場面を変えることにあります。

たとえば「The Rumbling」のような巨大な音像でも、叫びだけが曲を支えているわけではありません。
一方、「Same Sky」の日本語では、それまで使ってこなかった歌い方を探し、音の上がり下がりと言葉の区切りを細かく考えました。

英語と日本語で同じ声を当てはめない点も重要です。
英語の歌詞で高音が出にくい理由と重ねて考えると、声の高さより先に、言葉の長さやリズムへ合わせて口調を変えていることが分かります。

技法名が食い違うのは、声が境界を行き来しているから

MAHさんの高音を、地声寄りのミックスと説明する記事もあれば、シャウトやデスボイスを中心に整理する記事もあります。
これは必ずしも、どちらかが完全に間違っているという話ではありません。

強い芯を残した高音と、音程より質感を前へ出す叫びでは、同じ曲でも役割が違います。
しかも実際の歌では、その間に話し声、息の多い声、短い掛け声が挟まります。

読者が知りたいのは、声帯の名称当てより「なぜ苦しそうな音まで歌として成立するのか」でしょう。
答えは、荒い声の前後にも旋律、リズム、言葉の意味があり、叫びだけを孤立させていないからです。

京さんのデスボイスを扱った記事と比べても、歪んだ声は一種類ではなく、歌手ごとに曲の中で担う仕事が異なります。

MAHという人格が、普段なら言えない言葉を声にする

MAHさんは、ステージ上の自分を、普段の冷静な自分から生まれた別人格のように説明しています。
メイクやヒーローに憧れ、自分ではない自分になりたかったことが、MAHという存在につながりました。

ここを知ると、声色の多さが単なる発声テクニックではなくなります。
普段なら飲み込む言葉を表へ出すため、歌う声と叫ぶ声のあいだに、人格のスイッチまで組み込まれているのです。

一方で、後年は日常の自分とステージ上のMAHを、無理に一つへまとめなくてもよいと思えるようになりました。
怒りだけでなく、明るさや家族への感情も曲へ持ち込めたことで、クリーンな歌が担う範囲も広がっています。

荒い声が増えたのではなく、MAHという人物が歌に出せる感情が増えました。
その結果、シャウトも以前より強く見えるという逆転が起きています。

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「KiSS OF DEATH」に現在のSiMが凝縮されている

世界で知られた「The Rumbling」について、MAHさんはSiMという大きな図書館の中の一語にすぎないという趣旨で語っています。
代表曲一つだけで、長い活動を説明されたくなかったのでしょう。

本人が現在のSiMらしさをより明確に表す曲として挙げたのは「KiSS OF DEATH」でした。
レゲエの間、パンクの鋭さ、親しみやすい歌、荒い声が、どれか一つを主役に固定せず並んでいます。

世界へ活動を広げてもレゲエとパンクを声の中心に残すSiMのMAH

この曲を聴く時は、何秒叫べるかより、声が切り替わる直前に注目すると面白くなります。
軽く弾む部分があるから重い部分が沈み、旋律があるから叫びが言葉として残ります。

同じラウドロックでも、10-FEETのTAKUMAさんの歌い方は母音と言葉の距離を軸にしています。
MAHさんの場合は、声を登場人物のように入れ替え、曲の感情そのものを場面転換させる点が大きな個性です。

表面のざらつきだけを真似しない方がよい

MAHさんらしさへ近づこうとして、喉を締めたり、音量を上げたりするのはおすすめできません。
本人が長年の活動で獲得した荒い音色を、短時間で安全に再現できるとは限らないからです。

参考にしやすいのは、同じ声で一曲を押し切らない考え方です。
歌う場面、語る場面、リズムを刻む場面、感情を爆発させる場面を分けるだけでも、曲の立体感は変わります。

痛みや強いかすれが出る発声は、表現ではなく不調の可能性があります。
高い声を出すとすぐ枯れる場合の見直し方も確認し、荒い声を出せたことより、普段の話し声へ戻れることを優先してください。

まとめ

SiMのMAHさんの歌い方が、激しく叫んでも一つの歌として聞こえる理由は、シャウトを最初から主役にしていないからです。
クリーンな旋律、言葉のリズム、レゲエの間、語りに近い声が入口を作り、感情が必要な場所だけ荒い声へ渡されます。

MAHさんの強みは、特殊な声を一つ持っていることではありません。
一曲の中で声に複数の役を与え、普通の歌では足りない瞬間だけ、叫びを物語へ参加させることです。

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