寺西拓人の歌には、高音を響かせる場面と、一つの言葉の発音を確かめる細かい作業の両方があります。
timeleszの楽曲では高音や細かな言葉の処理が印象に残り、ミュージカルでは同じ役の中でも、場面に応じた声色の違いが注目されています。
その両方から、寺西が声に何を担わせているのかを見ていきます。
ワンアンドオンリー — 『FAM』(2025年)収録音源
「ワンアンドオンリー」の高音に使うファルセット
音楽ライターの池田夏葉は、2025年の『Real Sound』のコラムで、「ワンアンドオンリー」での寺西の歌唱に注目しています。
メンバーが歌い継いだ後、サビへ向かって盛り上がる箇所を受け持ち、高音ではファルセットも響かせていると評していました。
ここでの高音は、メンバーから受け取った歌を、サビの盛り上がりへつなぐものです。
同じコラムでは、「Rock this Party」のBメロやブリッジ、「Anthem -episode 1-」の細かい譜割りのパート、最後のサビ前の高音も挙げられていました。
曲の中の異なる位置で、声をどう届けるかが問われています。
「Rock this Party」で、歌い終えてからも発音を確かめる
発声だけでなく、声を言葉にする作業にも、寺西の細やかさが表れています。
2025年3月の『THE FIRST TIMES』は、timelesz公式SNSで公開された「Rock this Party」の録音風景を紹介しています。
そこで伝えられたのは、寺西がサビを歌い終えた後にも、英語の発音を何度か声に出して確かめる姿でした。
歌唱を終えたところで、その言葉の音をもう一度確認する。
声を出すことから、曲の中の言葉をどう聞かせるかへ、作業が続いています。
Rock this Party — 2025年のシングル音源
『HERO』で、優しさも頼りなさも歌声にする
高音を聞かせる歌と併せて注目したいのが、役の気持ちに合わせて変える声色です。
2025年のミュージカル『HERO』で、寺西はカークを演じました。
2月17日の公演を観た、はなもと瑠衣の観劇記には、場面ごとに違って聞こえた声が具体的に記されています。
その記録では、主人公を励ます場面の優しくまっすぐな歌と、ふざけた調子を見せる場面の歌い方が対比されています。
スーザンとの場面では熱を帯び、自信をなくす場面では声が震えるように聞こえたという評価もあります。
これらは観客が受け取った印象ですが、声色の違いを役の感情と結びつけている点が興味深いところです。
明るい声で通すだけでは、頼もしさも不安も同じ調子に聞こえてしまいます。
カークの歌についてのこの観劇記は、誰に話しかけ、どんな気持ちでいるかによって、歌声の表情が変わる楽しさを伝えています。
音程にまっすぐ入るように聞こえる歌い方と、役の心が揺れる表現とを、同じ歌手の魅力として挙げているのです。

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頼りない人物の中から聞こえる、華やかな歌声
別の役では、芝居と歌の間に生まれる印象の差が取り上げられています。
『SPICE』で演劇ライターの松村蘭が報告した、2025年5月10日の『ダンス オブ ヴァンパイア』のゲネプロです。
寺西は、教授とともに旅をする青年アルフレートとして出演していました。
松村は、落ち着かない動きや変わり続ける表情に、一途で頼りない人物像を見ています。
一方、歌い始めると声には華やかさと爽やかさが現れる、と評していました。
弱気な人物を演じていても、歌の聞かせどころでは違う魅力が浮かび上がるということです。
『HERO』の観劇記では、一つの役の中で変える声色が印象に残り、このゲネプロ評では、人物の頼りなさと歌声の輝きが対照になっています。
寺西の舞台歌唱を見るときは、歌の入り口で、直前の芝居から何が変わるかにも注目すると面白くなります。
声だけを切り取ったときの印象に、登場人物の性格や場面が重なってくるからです。
前の人の勢いを受けても、自分の声を見失わない
グループの録音では、隣の歌声との関係も大切になります。
『FINEBOYS』2025年6月号のインタビューで寺西が明かしたのは、前のパートを歌う原嘉孝のラップに感心し、その勢いに合わせたところ、スタッフから自分らしい歌い方に戻すよう求められた経験でした。
この話では曲名は明かされていません。
歌い継ぎでは、勢いをそろえれば必ずうまくいくというわけでもありません。
前の歌い手が強く押し出した後、別の声が入ることで生まれる変化もあります。
寺西の経験は、周囲のノリを受け取りながら、自分の声の持ち味をどの程度残すかを考えさせます。
「Rock this Party」の発音確認と併せると、録音では言葉の細部と、メンバーの中での聞こえ方の両方を調整していることが分かります。
旋律に思いを託し、自分の言葉でも歌う
寺西は、ミュージカルで音楽が果たす役割をどう考えているのでしょうか。
2023年の『ローチケ演劇宣言!』の対談では、言葉だけでは表しきれないものが楽曲によって伝わり、観劇後にも音楽が残ることを、ミュージカルの魅力として語っています。
この考え方は、声色を変えながら人物の思いを表す歌にもつながります。
たとえば同じ相手への呼びかけでも、旋律に乗せることで、ためらいや切実さを長く響かせることができます。
舞台の歌を聴くときに、台詞の先にどんな気持ちが広がっているかを意識すると、音の高さや強さ以外にも耳を向けやすくなるでしょう。
2026年の「half & half」では、菊池風磨とともに作詞・作曲にも参加しました。
『BARKS』に寄せた本人のコメントによると、同期である二人がルーツを巡った体験をもとに、それぞれの思いを楽曲へ落とし込んでいます。
これまでとこれから、葛藤と希望、応援する人たちと自分たちという、複数の関係を感じてほしいと説明していました。
役の言葉を歌う経験に加えて、この曲では自分たちの経験も歌の出発点になっています。
二人の声を聴く際には、声質の違いだけでなく、どの言葉を相手へ渡し、どの思いを一緒に届けているかにも注目できます。
踊りの中でも、声が担う役割
池田は、寺西の歌いながら踊る技術についても、激しく動く中でぶれない声が、曲を落ち着かせ、上品にまとめているように聞こえると評価しています。
これは、歌声が強く印象に残る一方で、周囲の音や歌い継ぎにも働きかけるという聴き方です。
高音で曲の流れを前へ進め、発音を確かめて言葉を整え、場面に応じて声に異なる表情を持たせる。
寺西の歌には、歌い継ぐ相手や演じる人物との関係の中で生まれる細やかさがあります。
役として歌う経験から、グループで自分を見せる歌へと活動が広がった過程は、寺西拓人(timelesz)の歌唱変遷でたどっています。







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