TAEHYUNの歌の歩みを追うと、上達の意味が少しずつ変わっていきます。
難しいパートを歌えるようになることから、曲にふさわしい声を選び、ライブで繰り返し届け、一人で一曲の感情をつなぐことへ。
ここでは2020年から2025年の本人と制作側の言葉を手掛かりに、その変化をたどります。
「0X1=LOVESONG (I Know I Love You) feat. Seori」— MV(2021年)
自分の声を探しながら、曲の入口を任される
初期のTAEHYUNは、高音が出ることと、その高音を魅力的に歌うことを同じには考えていませんでした。
2020年には、高い音へ届くようになっても、どうすればきれいに歌えるのかはまだ模索していると話しています。
音域の広さを完成の証しにせず、声の聞こえ方を課題として捉えていたのです。
2021年の「0X1=LOVESONG (I Know I Love You) feat. Seori」では、冒頭の声を任されました。
TAEHYUNは、その声で続きを聴きたいと思わせたかったといいます。
難所をこなすだけでなく、曲の入口をどう作るかが大切になっていました。
この時期、自作のメロディを歌って録音する過程でも、上達を感じていました。
どんな歌にしたいのか、自分の声で提案する経験が加わったのです。
2022年、一曲を通して歌うことが自信になる
2022年の「リムジンサービス」では、グループの担当パートとは違い、曲全体を一人で歌う経験をしました。
本人も緊張を語っていますが、その経験を自信へとつなげました。
象徴的なのは「Over And Over Again」です。
練習生時代には一小節ずつ区切って録音していた曲を、この番組では一度に通して歌いました。
同じ曲でも、断片を仕上げることと、一回の流れの中で届けることは違います。
昔の自分との比較ができる曲だったからこそ、できるようになったことを具体的に感じられる機会になったのでしょう。
「リムジンサービス」第4回 — TAEHYUN出演回(2022年)
ここでの変化は、ソロ歌手へ転向したという意味ではありません。
グループで歌ってきた人が、メンバーへ受け渡さずに歌を保つ経験を得た、ということです。
この違いを押さえておくと、後のソロ曲で本人が語る、曲全体の感情を組み立てる面白さも見えてきます。

画像出典:画像掲載元
2023年、教わった表現から、自分でも選ぶ表現へ
2023年の「Sugar Rush Ride」では、普段好むきっちりした歌い方だけでは曲の味が出せない、という課題に向き合いました。
必要なのは、少し粗く、誘惑的な表情です。
本人はこの頃、録音中に自分から歌い直しを申し出て、一つのパートを作ってから制作側の意見を聞くようになったと話しています。
制作へ関わることで、声をどう生かせるかが見えてきたのです。
「Sugar Rush Ride」— MV(2023年)
同年の日本ツアーを振り返ったTAEHYUNは、会場で返ってくる歓声や、客席の表情にも強く心を動かされていました。
歌やダンスとともに、作詞作曲にもさらに関わりたいという思いを語っています。
完成した歌を届けて終わるのではなく、届けた先の人たちが、次に作るものへの意欲を支えていました。
一方で、公演を重ねるほど、歌うための条件も変わってきます。
2023年秋には、20曲以上のセットリストを何十回も歌うため、よい状態を維持できる声を探すことを課題に挙げました。
さらに、録音で出せる繊細なニュアンスをライブでも表現したいと話しています。
一度できたことを、異なる日や場所でも届けられるか。
表現の幅とともに、再現性への意識が育っていました。
2024年、声の可能性と、繰り返し歌える安定を両立する
2024年の「Quarter Life」は、BEOMGYU、TAEHYUN、HUENINGKAIによるユニット曲です。
BEOMGYUは、ロックが好きな三人でこうした音楽をやりたかったと話し、TAEHYUNの声の魅力と音域にも触れています。
三人でロックを表現する機会が、新たに加わっていました。
歌う条件を整えることは、表現の冒険をやめることではなかったのです。
「Quarter Life」—『minisode 3: TOMORROW』収録音源(2024年)
同年秋のTAEHYUNは、ライブでは十回歌えば十回とも安定させたい、という趣旨の考えを語りました。
そのために、リハーサルで音響の調整を相談し、自分の状態も確かめています。
録音でよい一回を選ぶことと、公演ごとに届けることを区別して考えるようになっていたのです。
声だけを孤立した能力として扱わず、歌う環境も含めて整えていく姿勢が見えます。

画像出典:画像掲載元
ここまでの歩みでは、歌える曲が増えることと、同じ曲をよりよく届けることが並行しています。
曲ごとに違う声を探しながら、その細かさをステージでも失わないようにする。
高音の記録だけで変化を測ると、こうした仕事の広がりは見落としてしまいます。
2025年、一人の声で曲の感情をつなぐ
制作側からも、音楽への関わり方を伝える言葉があります。
2025年、Slow Rabbitは、音楽について特によく話す相手としてTAEHYUNを挙げています。
多様な音楽を聴くだけでなく歌うことも好きなため、よい曲があればまず連絡したくなる相手だといいます。
指示を受けて歌う関係に、音楽の好みや可能性を共有する対話が重なっていました。
同年のソロ曲「Bird of Night」では、その力を一曲全体へ向けることになります。
本人が面白さとして挙げたのは、一人で感情の変化を組み立てることでした。
五人で歌う曲では、担当する人が替わること自体が流れの変化になります。
ソロではそれを自分で作り、始まりからサビへ向かう気持ちの動きを追ってもらおうとしました。
曲作りでも、サビの手前に当たるプリコーラスを発展させてほしいと求められ、三つの案を提案しました。
その中から一つが採用されています。
声を出す役と曲を書く役が離れたものではなく、次の場面へどうつなぐかを考えるところで結びついているのです。
「Bird of Night」— MV(2025年)
ただし、ソロ曲を発表したことで、自分の方向性をすべて決めたわけではありません。
2025年のツアーに際しても、さまざまなジャンルが好きで、自分の強みを探している途中だと話しました。
歌を前面に出せる曲を選んだのも、その探索の一つです。
一人で舞台を担う難しさを認めながら、その経験がグループにもよい影響を与えると考えていました。
TAEHYUNの変化は、得意な高音へさらに力を足していく、という一本道ではありません。
一つのパートを磨き、曲に必要な声を選び、その表情を公演でも保ち、一曲の流れを自分で動かす。
歌の中で引き受ける範囲が広がってきた歩みとして見ると、ソロとグループの両方がつながります。
それぞれの曲での声の選び方は、TAEHYUN (TOMORROW X TOGETHER)の歌い方で詳しく取り上げています。

こちらの記事もおすすめ

具体的な曲と録音時の発言から、TAEHYUNが歌の表情をどう選んでいるかを読み解きます。





コメント