コートニー・ラプラント(Spiritbox)の歌い方|歌声とスクリームを一つの流れにする

コートニー・ラプラントとマイク・ストリンガー(2025年の「Loudwire」掲載写真) コートニー・ラプラント(Spiritbox)
コートニー・ラプラントとマイク・ストリンガー(2025年の「Loudwire」掲載写真)

コートニー・ラプラントは、メロディを歌う声とスクリームを、同じ曲の中で使い分けます。
その魅力は、違う声を出せることと、それらを曲の流れの中につなげられることの両方にあります。
「Rule of Nines」の歌唱を評価した専門家の解説と、本人が語った発声や録音の話から、その工夫をたどります。

2020年公開の「Rule of Nines」歌唱パフォーマンス。

「Rule of Nines」で、二つの声をつなぐ

2020年に公開された「Rule of Nines」の歌唱動画について、Extreme Vocal Instituteは、メロディのコントロールと、激しい声から旋律を歌う声への滑らかな切り替えを評価しています。
ボーカルを指導する側から見た、このパフォーマンスの特徴です。

異なる種類の声を、一つずつ取り出して聴かせるだけでなく、同じ曲を進める声としてつないでいく。
専門家が注目したのは、その移り変わりでした。
コートニーの歌い方を考えるときには、声の強さに加え、次の声へ移るところも手がかりになります。

旋律を歌う声を、伴奏の前に出す

激しい声との切り替えに注目するとき、旋律を歌う側の難しさも見逃せません。
2021年の『BLUNT』のインタビューで、コートニーは『Eternal Blue』の多くの曲で、自分の歌が以前より前面に出たと話しています。
それまでは楽器の音やボーカルのエフェクトに隠れていた部分があり、歌そのものを聞かせることには緊張もあったというのです。

激しい伴奏に声を溶け込ませるのと、歌をはっきり前へ出すのとでは、聴き手の注意が向く場所も変わります。
後者では、旋律をどう運ぶか、言葉をどんな調子で置くかが、より耳に残りやすくなります。
スクリームの強烈さだけでなく、歌い上げる声の表情を引き受けることも、この作品での課題でした。

同じ取材で本人は、歌詞には比喩やイメージを多く使うとも説明しています。
思いを直接的な言葉で説明することには、まだ怖さがあると話していました。
声は前に出す一方、言葉には想像する余地を残す。
コートニーの旋律を歌う声は、その言葉をどんな感情として受け取るかにも関わっています。

本人が説明した、息を吐くスクリーム

2019年の取材では、スクリームを出すとき、息を吸っているのか吐いているのかと尋ねられ、吐いていると答えています。
自分の声に多いものを「false chord fry」という言葉でも説明していました。
これは、その時点での本人による発声の説明です。

同時に、マイクを通さない自分のスクリームは非常に大きく、声を保つ方法をまだ探しているとも語っていました。
迫力ある声を出すことと、それを歌い続けられる形にしていくこと。
本人は、その両方に向き合っていたのです。

この取材で話題になった歌唱動画には「Belcarra」もあります。
公式の説明では、スタジオで歌い、ボーカルをマイクから直接録音したパフォーマンスです。

2019年公開の「Belcarra」スタジオ歌唱パフォーマンス。

Spiritbox(2019年の「Loud Hailer Magazine」掲載写真)
Spiritbox(2019年の「Loud Hailer Magazine」掲載写真)。
画像出典:画像掲載元

歌唱動画の一回を仕上げるまで

そうした動画が、本人にも何の苦労もないものだったわけではありません。
コートニーは同じ2019年の取材で、うまくいくまでに4〜5回歌っていることもあり、音程が低くなった箇所などを確かめてやり直すと話しています。
公開されたパフォーマンスの前にも、歌を整える時間があったのです。

また、立ち止まって歌う時と、ステージで動き回りながら歌う時の違いにも触れています。
同じ歌でも、体を動かしながら通す場面では、別の難しさが加わります。

準備も含めて、歌の表現を作る

歌唱動画に残る一回のために、複数回の試行がある。
この話は、コートニーが尊敬する歌手についての発言とも重なります。
2023年の『Kerrang!』では、ビヨンセを挙げ、才能だけでなく、作品やステージの背後にある労力を堂々と示す姿勢に影響を受けたと話していました。

音楽のドラムの一打から公演の照明まで、表現の細部を自分で把握しようとする姿に惹かれたというのです。
声の迫力が自然にあふれ出ているように感じられるパフォーマンスにも、その声をどこでどう聞かせるかを整える仕事があります。
コートニーが歌唱動画の録り直しを隠さず話すことも、仕上がった歌の裏にある準備を伝えています。

「Ride The Wave」で歌う、自信の揺らぎ

声の強弱を、強い人と弱い人という二つの人物像に当てはめるだけでは、彼女の歌は捉えきれません。
2025年の『PAPER』でコートニーは、「Ride The Wave」のサビに、自分への疑いと、周囲が喜んでくれていても幸福を受け取れない気持ちを込めたと説明しています。
『Tsunami Sea』の後半に置かれた曲ですが、録音した順番では初期の一曲でした。

ここで歌われるのは、何かを勝ち取れば不安も消える、という単純な物語ではありません。
周囲からの肯定と、自分の中の揺らぎが同時にあります。
この本人の説明を踏まえると、歌声の力強さだけを自信の表れと受け取らず、旋律の中にどんな迷いが置かれているかにも耳を向けられます。

コートニーは同じインタビューで、対面では説明しにくい感情も、歌詞なら表しやすいと語っていました。
歌声は、その言葉を人に届けるためのものでもあります。
叫ぶか歌うかという声の種類に加え、その声が何を伝えようとしているかを考えると、曲の表情が見えやすくなります。

「Soft Spine」で、動きながら感情を表す

ステージでは、歌の表情に身体の動きも重なります。
2025年のRecording Academyの取材で、「Soft Spine」の映像にあるダンスについて聞かれたコートニーは、踊ることも自分の感情表現だと説明しました。
ステージでは一つの人物像を演じているとも話しています。

暗い感情を題材にした歌でも、本人が常に沈んだ姿で立つとは限りません。
歌に込めた気持ちと、その歌を観客へ届けるときの振る舞いには、それぞれの表現があります。
動きながら歌う難しさについての2019年の説明も併せると、彼女のパフォーマンスは、声と動作の両方を通して作られていることが分かります。

歌声とスクリームを切り替えること、曲を通して声を保つこと、納得できるパフォーマンスへ整えること。
コートニーの声の使い分けは、それぞれの声を出した先の、歌全体を仕上げる仕事につながっています。
高い声や低い声で自分を証明しようとしていた頃から、その選び方がどう変わったかは、コートニー・ラプラント(Spiritbox)の歌唱変遷で取り上げています。

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