降幡愛のソロを初めて聴いて、キャラクターとして歌う時との違いに驚いた人もいるでしょう。
低めの声を生かした大人の歌は、ソロ活動を始めた時から、迷いなく出せていたわけではありません。
自分名義で何を歌い、どんな声を選ぶのかを探すところから、その歩みは始まっています。
その後は、カバー曲で持ち味を確かめ、高めの声や裏声にも挑戦するようになりました。
大人っぽい歌い方をひとつ完成させて終わるのではなく、そこから使える声を増やしていく。
2020年のソロデビューから、5周年を祝うステージまでをたどります。
2020年、「CITY」で初めて向き合った自分名義の声
降幡は『ラブライブ!サンシャイン!!』の黒澤ルビィ役を務め、Aqoursの一員として歌ってきました。
ソロ活動は、役を通じて知られていた声に、自分名義の作品を加える挑戦でした。
『Moonrise』でソロデビューした頃、降幡は最初の曲「CITY」の準備で、自分の声が分からなくなったと振り返っています。
キャラクターとして歌う経験があっても、降幡愛として歌う時の答えは別に必要でした。
その後、ボイストレーニングを重ね、自分の地声に慣れるにつれて歌いやすくなったそうです。
「CITY」で目指したのは、1980年代の歌手を思い浮かべた、まっすぐで大人の雰囲気を持つ声でした。
自ら歌詞を書いたため、曲のイメージは明確だったといいます。
本人にとっても、自分名義の歌が低めの声になることを、聴き手に知ってもらう機会でした。
ここで難しかったのは、曲の主人公を想像できることと、自分の声を選べることが、同じではなかった点です。
役に合う声を作る経験を持ちながら、その経験を自分の作品でどう使うかは探り直す必要がありました。
ソロ初期は、声の高さだけでなく、歌い手としての立ち位置を見つける時期だったのです。

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『メイクアップ』で形になった、艶のある大人の歌
同じ2020年の2枚目のミニアルバム『メイクアップ』では、その迷いが変わり始めます。
本人が手応えを挙げたのは「RUMIKO」でした。
艶や大人らしさを、自分の歌として形にできたと捉えていたのです。
制作をともにした本間昭光も、最初から曲の物語に合うニュアンスを出す力はあった一方、自分の声には戸惑いがあったと説明しています。
それが次の作品では定まり始めたという評価でした。
短い間に音域が大きく変化したという話ではなく、もともとの表現力を自分名義の声へ結びつけられた変化です。
二つの作品を比べる手掛かりは、声が低いか高いかだけではありません。
最初の「大人の歌を歌いたい」という目標に対し、自分で納得できる声を選べるようになったことが大切です。
理想のイメージが、録音の中で具体的な手応えへ変わっていました。
ステージでは、緊張の先にバンドとの呼吸が生まれる
2020年11月の初めてのソロライブでは、降幡は緊張や高揚で力が入っていたと振り返っています。
2021年2月のライブでは、バンドのメンバーとのやり取りに慣れ、以前より落ち着いて臨めるようになりました。
大人の雰囲気を目指しながらも、実際にステージへ立つと熱くなる自分も感じていたそうです。
録音で理想の声を見つけることと、人前でその声を自在に届けることには、違う難しさがあります。
バンドの音や相手の動きを受け取る余裕ができれば、歌い方を選ぶ場面も増えていきます。
この頃には、自分の声を探す作業に、共演者と音楽を作る経験が加わっていました。
2022年のカバーで、原曲と自分の声の間を探る
カバー作『Memories of Romance in Summer』では、知っている曲でも自分が歌うとどうなるかを確かめています。
「夏のミラージュ」は、以前からカラオケでも歌っていた曲でした。
録音で改めてマイクに向かうと、自分の声との相性を実感し、制作陣からも合っていると言われたそうです。
一方、「RIDE ON TIME」は、思っていた以上に低めの声が合う編曲になりました。
原曲や別の歌手のカバーを参考にしながら、取り入れるものと抑えるものを選んでいます。
好きな歌を再現するだけでなく、その曲を自分の声で成立させる判断が必要になったのです。
自作の歌詞には、自分で用意した人物や場面があります。
カバー曲では、すでに親しまれている歌の印象を受け止めながら、自分が担う表情を決めることになります。
低めの声を持ち味として意識しつつ、どの曲でも同じ歌い方にしない経験が重なりました。
2023年、「Fashion」で高めの声とコーラスに挑む
高めでかわいらしい声は、ソロ初期にも使っていました。
『Moonrise』の「ラブソングをかけて」では、キャラクターソングになりすぎない範囲で、高めに歌うことを意識しています。
最初の作品から、大人っぽい曲の間に違う表情を置いていたのです。
フルアルバム『Super moon』の「Fashion」では、それまでとは異なる制作陣と組みました。
降幡が新たに向き合ったのは、かわいらしさや英語のノリを生かす歌です。
それまで重視していた低めで深みのある声に対し、高めの声で歌う難しさもあったといいます。
さらに、この曲ではコーラスまで自分で担当しました。
これまで会原実希の声も加わっていた録音とは、声の役割が違います。
主旋律の歌い方に加え、自分の声を重ねた時の表情も作ることになったのです。
したがって、2023年になって初めて高い声が出せるようになった、という変化ではありません。
初期からあったかわいらしい歌の選択を、違う制作陣との曲や、自分で担うコーラスへ広げたところに、新しい課題がありました。
同年11月のツアーファイナルでは、観客の声を受け取れることも大きな喜びになっていました。
「Super moon」の前には、自分の信じる音楽についてきてくれた人たちへの感謝を伝えています。
作った物語だけでなく、活動を通して生まれた自分の思いを歌に託す場面でした。
裏声の挑戦と、発売順だけでは見えない制作の時間
2024年の「セカンド・ブルー・アワー」では、Tokimeki Recordsらとの制作で、サビの裏声に挑戦しました。
降幡は、難しさがありつつも、自由に歌えて楽しかったと語っています。
低めの声で作る大人らしさに、新たな表情が加わりました。
ただし、同じシングルの「ホホエミノオト」は、発売の約3年前から進められ、2023年の「Super moon」より先に完成していた曲です。
発売が後だから、すべてが直前の作品を経て生まれた歌い方とは限りません。
歌声の歩みには、異なる時期に準備した曲が合流する時間もあります。
高音や裏声への挑戦は、低めの声を捨てることを意味しません。
曲が求める明るさ、夜の雰囲気、言葉の軽やかさに合わせ、別の選択肢を使えるようになることです。
自分の声の輪郭が見えたからこそ、その輪郭を少しずつ広げられたと考えられます。
5周年のステージに、これまでの声を持ち寄る

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2026年3月、COTTON CLUBで開かれた5周年記念公演は、記念EPの表題曲「COLD MOON」で始まりました。
新曲だけでなく、カバーや「CITY」も並ぶ構成です。
「CITY」のイントロには大きな歓声が上がり、終盤には「Super moon」も歌われました。
初期の曲を通過点として置き去りにするのではなく、その後に生まれた曲と同じステージで届ける。
5年間に選んできた歌が、一つの公演に集まっていました。
新しい表現を増やしながら、出発点の曲も現在の聴き手との関係の中で歌い続けているのです。
一方、黒澤ルビィとしての歌も、AiScReamなどを通じて続いています。
本人は、台詞のあるキャラクターソングを歌いたかった思いが形になったことを喜んでいました。
ソロの声を深める歩みと、役として歌う喜びは、並行して存在しています。
降幡愛の変遷は、声優の声から別の声へ一度で切り替わった物語ではありません。
自分名義の声を探し、低めの声の魅力を確かめ、そこへ高音や裏声、重ねる声を加えてきた歩みです。
その曲をどんな自分で歌うかを選べる範囲が、少しずつ広がってきたのでしょう。
曲ごとの声の使い分けは、降幡愛の歌い方でも詳しく掘り下げています。







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