串田アキラの歌声はどう変わった?「サンバルカン」の迷いから「ギャバン」の優しさへ

串田アキラ・日本コロムビア公式プロフィール写真 シンガー

小さい子どもが聴くから、カッコよく歌ってほしい。
1981年の『太陽戦隊サンバルカン』の録音でそう求められた串田アキラは、何度歌っても合格をもらえませんでした。
ソウルのステージで客を沸かせてきた自分の歌が、ここでは通用しない。
最後に気負いを捨て、譜面どおりに歌ったら、ようやくOKが出たのです。

理由が分かったのは、翌年の『宇宙刑事ギャバン』を歌ってからでした。
得意な声をもっと強くするだけでは届かない相手がいる。
その経験から、強さに優しさを加え、笑いも含むヒーローを歌うようになった道をたどります。

ソウルの客席と、デビュー後に与えられた歌の隔たり

串田は十代の頃から米軍基地などでドラムをたたき、歌っていました。
沖縄のクラブでは、ほかのバンドが厳しい反応を受ける中、スティービー・ワンダーの曲を演奏すると客が前へ押し寄せたといいます。
そんな経験がソウルへの思いを強くしました。
相手が目の前で反応を返すライブは、レコードデビューの誘いをためらうほど好きな場所だったそうです。

ところが、1969年のデビュー曲「からっぽの青春」では、自分と歌の人物との距離に困りました。
本人は青春を楽しんでいたのに、曲ではむなしさを表さなければならない。
ソウルを歌う経歴が、次第に暗い人物像として売り出されることへの戸惑いもあったと振り返っています。
歌唱力を認められてデビューすることと、自分の望む歌を歌えることは、同じではありませんでした。

NHK『ステージ101』の集団での活動にも当初はなじめず、辞めたいと申し出たという串田。
それでも、続けるなら楽しもうと気持ちを切り替え、共演者や作曲家・中村八大との出会いに面白さを見つけていきます。
後のヒーローソングを歌うまでにも、求められる歌の中で、自分が楽しめる場所を探す経験があったのです。

1979年には映画『マッドマックス』の日本版テーマ「Rollin’ Into The Night」を担当しました。
この歌を聴いた渡辺宙明が、『サンバルカン』の歌手に推薦したと本人は話しています。
特撮への転機は、そこまでの歌が認められて訪れました。
だからこそ、次の録音で自分の得意な方法が通じなかったことは、大きな戸惑いだったのでしょう。

『サンバルカン』で、得意な抑揚をいったん手放した

子ども向けなら難しくないだろう。
そんなつもりで臨んだ録音は、ディレクターから何度もやり直しを求められる時間になりました。
しかも本人によれば、直す箇所だけを歌うのでなく、一コーラスを通して歌い直す方式だったそうです。
どこが違うか教えてもらえないまま、自分なりのカッコよさを込めては、また戻される。
最後には、もうこれで駄目なら諦めようというところまで追い込まれました。

自分が見せたい抑揚を外し、譜面に沿って歌ったテイクにOKが出ても、その場では納得できなかったといいます。
後になって分かったのは、大人のR&Bの歌い回しを、子ども向けの曲へそのまま持ち込んでいたことでした。
言葉がはっきり聞こえ、拍に合わせて体を動かせるように歌う。
本人の言う「縦ノリ」は、子どもが歌を受け取りやすくするための選び直しだったのです。

『ギャバン』の問いかけと、バラードで抑えた歌い回し

1982年の『宇宙刑事ギャバン』では、主人公の写真にひかれ、録音に来た大葉健二とも話しました。
本人が見つけたのは、強さの奥に優しさを持つヒーローの姿です。
主人公の名を呼ぶところは力強く、相手に問いかけるところは少し柔らかく歌う。
一曲を同じ強さで押し切らず、言葉の働きに合わせて力を変えたと説明しています。

今度は、さほど何度も歌い直さずにOKが出ました。
そこで『サンバルカン』も聴き直し、採用された歌では言葉が伝わりやすかったのだと理解したそうです。
前の曲で偶然できたように思っていたことが、次の曲を通して、自分で説明できる選択になりました。

その変化は、同じ番組のエンディング「星空のメッセージ」にも表れています。
ゆっくりしたバラードなら、得意なR&Bの抑揚を出したくなる。
しかし、ここでも自分流に膨らませすぎず、子どもに伝わるよう、まっすぐ歌うことを求められたといいます。
勢いのある主題歌だけの問題ではなく、静かな曲でも、聴き手の分かりやすさを先に置く必要があったのです。

1983年の『宇宙刑事シャリバン』のエンディング「強さは愛だ」も、強さと優しさを結ぶ大切な曲になりました。
串田は、山川啓介の詞を渡辺が高く評価していたことを振り返っています。
誰かを奮い立たせる言葉を、威勢のよさだけで終わらせない。
この時代の曲が、長く歌う中で繰り返し戻る拠り所になっていきます。

『キン肉マン』では、まっすぐな声に笑いが重なった

同じ1983年の「キン肉マン Go Fight!」では、別の驚きが待っていました。
串田は漫画や譜面から主人公を想像し、ヒーローの歌として録音したといいます。
ところが、完成版には、主人公の自信を茶化すような追いかけコーラスが重なっていました。
自分が歌った時にはなかった声です。

串田はその仕掛けを知らず、驚いて笑ったそうです。
本人がまっすぐに歌っているからこそ、別の声の突っ込みが効き、強いのにドジな主人公になる。
歌い手が一人で勇ましさとおかしさを演じ分けるのでなく、複数の声で人物を作る面白さがありました。

やがて、串田といえばこの曲、というほど広く知られるようになります。
『ギャバン』で考えた優しさに加え、ヒーローの歌には笑いも入れられる。
その幅が広がっても、歌い手自身が楽しみ、客と歌を共有したいという思いは、初期のライブから続いていました。

『トリコ』で、歌を支える体づくりも変えた

2011年には『トリコ』の主題歌「ガツガツ!!」を歌います。
串田が本格的に筋力トレーニングへ取り組んだのも、この作品がきっかけだったといいます。
『キン肉マン』の頃から腹筋運動はしていたものの、さらに大きな体を持つ主人公を歌うなら、自分ももっと鍛えたいと考えたそうです。

本人は、走る運動で体重を落とした頃、声も軽くなって低音の手応えが弱まり、筋力トレーニングをするようになって戻ったと話しています。
これは本人が自分の体と声について感じた変化です。
新しい作品を担うことが、長く続けてきた歌を支える準備まで見直すきっかけになりました。

2011年発売「ガツガツ!!」の30秒CMスポット。

2019年の50周年ベスト盤『Delight』には、「からっぽの青春」や「Rollin’ Into The Night」も、ヒーローソングとともに収められました。
子どもの頃に主題歌を聴いたファンにも、そこへ至るまでの歌を一続きでたどれる作品です。

串田アキラ『Delight』2019年公式アルバムジャケット
2019年発売の50周年記念盤『Delight』。
画像:公式掲載元。

2021年、かつて分からなかった注文を自分の言葉で語る

『機界戦隊ゼンカイジャー』の挿入歌「ダイヤル回せ! ゼンリョクゼンカイオー」の録音には、渡辺宙明も同席しました。
ディレクターは短い掛け声を二度の突きのように歌うことを求める一方、串田が普段から話している、強さの中の優しさも注文しています。
力いっぱい歌う部分と、守りたいものへの思いを込める部分が、一曲の中にありました。

録音後の串田は、迫力ある曲の中にも、短い部分でよいから優しさを伝えたいと説明しました。
さらに、戦い終わったヒーローをねぎらうようなエンディングも歌ってみたいと話しています。
1981年には何を求められているのか分からなかった歌手が、40年後には、次に歌いたい人物の姿まで自分の言葉で提案していました。

串田アキラ・2021年録音風景
『機界戦隊ゼンカイジャー』挿入歌の2021年録音風景。
画像:公式掲載元。

自分の歌に励まされ、もう一度ステージへ

2024年、串田は急性すい炎で半年ほど入院しました。
その間に支えになったのが、自分が長く歌ってきた、立ち上がる勇気を伝える曲たちだったといいます。
何度も聴き、自分でももう一度歌いたいと考えた。
それまで人を励ましてきた言葉を、今度は歌い手自身が受け取る時間になりました。

10月26日の復帰ワンマンでは、『サンバルカン』『ギャバン』『キン肉マン』など十曲を歌いました。
本人は立っているのが精一杯と話し、歌にもまだ物足りなさを感じていました。
それでも、喜んでくれた客の反応を受け、再出発の一歩として手応えを得たといいます。
以前とまったく同じに戻ることだけを待つのでなく、今の自分で、みんなと一緒に歌いたい。
その思いがステージへつながりました。

2026年には、高取ヒデアキとBig Band Zとの「宇宙刑事ギャバン」の共演映像が公開されました。
同年の『NHK夏の音楽祭 うたであえたら 2026』でも「キン肉マン Go Fight!」を披露しています。
復帰直後の一公演から、別の歌手との共演やテレビ歌唱へ、歌う場を再び広げていました。

高取との共演では、原点の「太陽戦隊サンバルカン」も歌っています。
かつて何度も録り直した曲を、今は仲間の声や生演奏とともに歌う。
長く残った主題歌は、当時の録音として親しまれるだけでなく、新しい出会いを生む曲にもなっていました。

串田の変遷をたどると、強い声をどう出すかとともに、誰へ向け、何を伝えるために使うのかが変わってきたことが分かります。
ソウルの客席から子どもたちへ、そして、ともに年を重ねたファンや共演者へ。
歌を受け取る相手が増えるたびに、同じ主題歌にも新しい役割が加わっていくのです。
短い掛け声をどう客席まで届けるかは、串田アキラの歌い方で詳しく見ていきます。

シンガー人気投票。投票ページはこちら

こちらの記事もおすすめ

コメント

タイトルとURLをコピーしました