Anlyの歌唱変遷|「太陽に笑え」から「カラノココロ」、声を重ねるライブへ

ソニーミュージック掲載のAnly Anly

「太陽に笑え」と「カラノココロ」では、声の明るさが違う。これは聴き手の後づけの印象ではなく、2017年にAnly自身が二つの録音を比べて話したことです。高校では合唱やイタリア歌曲を歌い、深い声に親しんでいた彼女は、デビュー後にポップスの言葉を自分らしい声で届ける方法を探しました。

ただし、この変化を「暗い声を捨てて明るい声にした」と一行で済ませると、その後の面白さを見落とします。柔らかく歌う曲を残しながら、ラップに近い言葉の運びを試し、ライブでは自分の声を録って重ねるようになる。Anlyが増やしていったのは、一つの理想の声ではなく、曲と場所に応じた声の役割でした。

合唱で育てた深い声を、2015年の「太陽に笑え」でポップスへ向けた

沖縄・伊江島出身のAnlyは、学生時代に合唱とイタリア歌曲を経験しました。2017年のインタビューでは、当時の声は今より深く、ポップを歌う声とは違ったと本人が振り返っています。学校で学んだ歌い方が間違いだったのではありません。自分で書いた歌を録音して人に届けるとき、その響きをどう使うかがまだ定まっていなかったのです。

2015年のデビュー曲「太陽に笑え」は、その模索の始まりとして位置づけられます。Anlyはデビュー準備中、録音した自分の声を聴いて落ち込むこともあり、好きになれる声の出し方を探して長時間歌っていたと話しています。「太陽に笑え」の頃から「Anlyの声」が形になり始めた、というのが本人の説明です。

「太陽に笑え」は2015年に発売され、MVも当時公開されました。ここで確認したいのは技術の優劣ではなく、当時の彼女にとってこの声が完成形ではなかったという点です。デビュー後の作品で、同じ歌手が明るさや言葉の届き方をどう選び直すか。その問いが次の「カラノココロ」へつながります。

2017年、ギターを持つAnly
2017年の取材写真。 出典:音楽ナタリー

2017年「カラノココロ」で、明るい声と言葉の速さを手に入れる

テレビアニメ『NARUTO-ナルト-疾風伝』のオープニングテーマとなった「カラノココロ」は、2017年発売のシングルです。タイトルや詞には当時のAnlyの揺れる心も重なりますが、歌唱面でも本人は新しい引き出しを開けたと語っています。合唱やイタリア歌曲の影響を受けた大きな音程の跳躍をポップスに変え、英語のラップを歌っていた経験を日本語の速い言葉へ持ち込んだ曲でした。

発売後の取材でAnlyは、デビュー曲とこの曲では「声の明るさ」が違うと認めました。以前は明るい曲でも声が暗めに聴こえることが気になっていた一方、この頃には明るい曲を明るい声で歌えるようになってきたと感じていたのです。作曲や編曲の変化だけでなく、本人が声の選択の変化を具体的に言葉にしています。

けれども、明るい声が唯一の正解になったわけではありません。同じシングルの「だから」は高校生の頃に作った曲で、当時の伴奏音源に歌だけを録り直したもの。Anlyは飾らない歌い方を意識したと話しています。強く前へ出る表題曲と、肩の力を抜いた声を置く曲が同じ作品に入っている。これは時期が進むと一方向に声が変わる、という単純な図式に収まらない重要な例です。

「カラノココロ」の速い言葉と高低差を一曲の中でどう扱うかは、別のAnlyの歌い方で詳しく見ます。ここでは、デビュー後の約一年半に本人が声の明るさを意識して変え、同時に静かな表現も残したことを押さえておきます。

同じ年のアルバム『anly one』に収めた「レモンティー」では、声を張らないように座って歌い、手にしたカップのお茶をこぼさないほど力を抜いて録音したとAnlyは説明しています。デビュー前に書いた曲を、デビュー後の録音で別の声の距離に仕上げた例です。明るく歌えるようになった時期に、小さく自然な声も作品へ残した。この両立を知ると、「太陽に笑え」からの変化が単なる声量の増加でなかったことが見えてきます。

2018年以降、ループペダルで「歌う声」と「重ねる声」が分かれる

2018年1月の誕生日前夜の公演で、Anlyは全編をループペダルで演奏しました。ギターのフレーズや楽器の胴を叩く音だけでなく、コーラスもその場で録って重ねたと当時のライブレポートが記録しています。ループペダル自体は高校時代から使っていましたが、本人によれば、この公演の頃からループ中心のライブを始めました。

弾き語りなら、いま歌っている一声が客席へ届きます。ループを使う場合は、先に録った自分の声が伴奏やハーモニーとして残り、その上に新しい歌を置ける。これは声量が突然増したという話ではなく、同じ声を曲の中で別の役割に配る発想です。失敗した音もその場の構成に影響するため、録音物のコーラスとは違う判断が要ります。

2018年の『LOOP』ツアーを取材した記者は、ソロ公演で高い声と低い声を使い分け、バンド公演では「COFFEE」のラップと歌を行き来し、「Venus」ではリズムの上に声とハーモニーを積んだと記しています。同じ作品をソロとバンドの両方で披露したことも大切です。ループは彼女の表現を一種類に固定する道具ではなく、編成を選ぶための新しい選択肢になりました。

2024年の取材に応じるAnly
2024年の取材写真。 出典:SPICE

その翌年、2019年6月の「Do Do Do」では、ループを使ったソロ公演が公式に記録されました。2018年のスタート時の公演と同じ演奏ではありませんが、一人で複数の音を組み立てるスタイルが、その後も続いていたことが分かります。

2022年『QUARTER』で、ループ以外の曲も一つの声にそろえない

2022年のアルバム『QUARTER』では、沖縄で作った「KOMOREBI」「Alive」の原型や、ロック、ヒップホップ、ループなど、異なる方法で育てた曲が一つの作品に並びます。Anlyは、前作『Sweet Cruisin’』の甘い曲調から、今作ではエネルギッシュにしたかったと説明しました。録音上の音色を一種類にそろえるより、楽曲ごとに表現を選ぶ方向がはっきりしていきます。「KOMOREBI」もその時期に生まれた一曲です。

同じ2022年に「カラノココロ」のリミックスも発表されています。ただし、リミックスがあることを歌の再録や声質の変化と取り違えてはいけません。作品の音作りが広がったことと、Anlyが声で選べる表現が増えたことは、別の根拠で確かめる必要があります。

2023年『26ml』では、異なる声やジャンルを「Anlyらしさ」に含める

2023年のアルバム『26ml』をめぐる取材で、Anlyは、以前は一つのジャンルに絞れないことを弱みと感じていたと話しています。4作目からそれを肯定し始め、5作目では周囲からもAnlyらしいと言われるようになった、と。ロック、オペラ、踊れる曲を同じ人が歌うことを、ばらばらの試行ではなく一人の表現として受け止められるようになったのです。

「好きにしなよ」は、その姿勢が伝わる曲です。最初は本人の焦りから生まれた言葉が、友人の反応やアニメ『Dr.STONE NEW WORLD』との出会いを通じて、聴く人の選択を後押しする言葉へ変わったとAnlyは語っています。心境の変化と歌声の音響的な変化を同一視することはできません。それでも、曲を外へ出す意味を考え直したことは、何を、誰に向けて歌うかという表現の選択に関わります。

2025年「ニヌファブシ」で、故郷の物語を歌う

2025年には故郷・伊江島を舞台にした映画『木の上の軍隊』の主題歌「ニヌファブシ」を発表しました。公式サイトによれば、台本、撮影現場、監督との対話を踏まえて書いた曲です。この制作背景だけから「声がさらに変わった」と決めつけることはできません。ただ、初期アルバムの最後に伊江島を思う「Come back」を置き、「やっぱり伊江島の人」として終わりたかったと語っていた彼女が、今度は故郷の歴史を扱う映画に自分の言葉を差し出したことは、歌う対象の広がりとして見ることができます。

2026年の地元紙取材では、東京での制作に打ち込んだ時期を経て、沖縄へ戻り、人との交流が増えてから曲がふくよかになったと振り返りました。これは本人の曲作りについての説明です。声質の測定結果として扱わず、作品に向かう視点の変化として受け取るのが妥当でしょう。

深い声を失ったのではなく、必要な声を選べるようになった

Anlyの変遷で最も確かな出発点は、本人が認めた「太陽に笑え」から「カラノココロ」への声の明るさの変化です。2018年からのループライブでは、いま歌う声と先に録った声を組み合わせる役割が増えました。『QUARTER』『26ml』の多様な曲や、故郷を歌う「ニヌファブシ」までを一直線の声質変化として説明する必要はありません。

むしろ、明るい声を探した時期にも柔らかい歌を残し、一人のステージで声を重ね、ジャンルをまたぐことを肯定してきたところに、この歌手の面白さがあります。Anlyは「一つの声」に近づいたのではなく、曲に応じて自分の声をどう置くか、その選択を増やしてきたのです。

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