デイヴィッド・カヴァデール(Whitesnake)の歌声の変遷|同じ曲を歌い直し、声の聞こえ方を変えてきた

2011年、マンチェスター公演のデイヴィッド・カヴァデール シンガー
Hinton1994 / CC BY-SA 3.0

デイヴィッド・カヴァデールの昔と今を聴くなら、同じ曲を歌い直した録音が役に立ちます。
「Here I Go Again」には1982年と1987年のバージョンがあり、「Soldier of Fortune」はDeep Purple時代にも、Whitesnakeでも歌っています。

ただ、歌手が同じで曲が同じでも、声だけを公平に比べられるとは限りません。
演奏する人も、アレンジも、録音の中で声をどれくらい前に出すかも違うからです。
カヴァデール自身、1987年の声について聞かれたとき、以前よりよく聴こえるようになったのだと答えていました。

歌い方が変わった部分と、歌を聴かせる方法が変わった部分。
両方をたどると、若い声と年を重ねた声を比べるだけでは見えない、彼の歩みが分かります。

1974年:若い歌手が歌った「Soldier of Fortune」

カヴァデールがDeep Purpleに加わったのは1973年です。
翌年の『Stormbringer』には、リッチー・ブラックモアと作った「Soldier of Fortune」が入りました。
激しいバンドの曲の中にある、静かなバラードです。

本人の回想では、この曲は最初からメンバー全員に受け入れられたわけではありませんでした。
ブラックモアとカヴァデールは、思い描く曲を伝えるため、デモを作って聴かせています。
大きなバンドの歌手になったばかりでも、強く張り上げる曲だけを歌いたかったわけではなかったのです。

初めてDeep Purpleの曲に取り組んだ頃を振り返り、カヴァデールは、のちに若さゆえの未熟さも感じると話しています。
それでも「Soldier of Fortune」は、何十年も歌う曲になりました。
声を若いまま保つための曲ではなく、その後の自分でも歌い直せる曲を、すでに持っていたのでしょう。

1982年と1987年:「Here I Go Again」の声は、なぜ違って聞こえるのか

Whitesnakeの「Here I Go Again」は、1982年の『Saints & Sinners』に最初の録音があります。
世界的なヒットとして広く知られる1987年版は、その録り直しです。
同じ録音の音質だけを変えたものではありません。

1982年版は、初期Whitesnakeのメンバーによる演奏です。

その後、カヴァデールはバンドの音を、もっと鋭く、刺激的なものに変えたいと考えます。
ジョン・サイクスを迎えたのも、その方向へ進むためでした。
「Here I Go Again」の再録音は、レコード会社のデヴィッド・ゲフィンの勧めによるものでもあります。

5年後の1987年版は、バンドの音を変えようとしていた時期に、歌も演奏も新しく録音したものです。

この二つを比べるとき、声の太さや強さの印象を、発声の変化だけで説明するのは早計です。
1987年の録音について本人は、それ以前の作品では歌がミックスの奥に置かれていたと話しています。
歌を前に出して聴かせるようになれば、同じ歌手の声でも存在感は変わります。

制作期には、歌えないほどの体調不良と手術も経験しました。
1987年当時の取材でも、前年は声と仕事の先行きが見えない時期だったと振り返っています。
華やかな成功作の裏で、まず歌える状態に戻る必要があったのです。

1987年、Whitesnakeのツアー中のデイヴィッド・カヴァデール
1987年、Whitesnakeのツアー中のデイヴィッド・カヴァデール。写真:Samboob at English Wikipedia / CC BY-SA 3.0

2015年:昔の曲を、いまの共演者と歌う

2015年の『The Purple Album』では、WhitesnakeとしてDeep Purple時代の曲を録音し直しました。
「Soldier of Fortune」も、その一曲です。
最初の発表から41年後、同じ歌手が別のギタリストと作った録音が世に出たのです。

カヴァデールによると、この録音ではジョエル・ホークストラの基本のギターパートと一緒に、歌の多くを録っています。
伴奏がすべて出来上がったあとに声だけを入れるのではなく、ギターの演奏を受けながら歌う場面があったのです。
彼はジョエルの繊細な演奏も高く評価していました。

ここでの音源は、2015年の再録音をもとにした2023年リミックスです。
2023年に歌い直した音源という意味ではなく、録音した歌や楽器のバランスを後年調整したものです。

若い頃の録音と比べる相手は、年を重ねた声だけではありません。
ブラックモアのギターで歌った曲を、今度はジョエルのギターでどう歌うか。
編曲や録音の違いもあるため、声色の差だけを切り取るより、伴奏に対して歌がどう聞こえるかも一緒に比べたいところです。

この企画には、Deep Purple時代への感謝もありました。
カヴァデールは、当時の共演者たちが自分に機会を与えてくれたことを、大切にしています。
昔の曲を再び歌うことには、若い自分を再現する以外の意味もあったのです。

2006年、Lorca Rock Festivalでのデイヴィッド・カヴァデール
2006年、Lorca Rock Festivalでのデイヴィッド・カヴァデール。写真:Raúl Ranz / CC BY 2.0

できることを選びながら、歌を残す

年を重ねても、何も変わらなかったわけではありません。
2021年の取材では、カヴァデール自身、若い頃から自分を試すような難しい曲を書いてきたこと、年齢とともにそれらを歌う負担が増すことを認めています。
できないこともあるため、何を歌うか、どう取り組むかを選ぶ必要がありました。

一方で、強い高音だけが自分の歌ではないとも分かっていました。
本人は、低い声や中音域が好きだというファンの反応にも触れています。
静かな歌や小さな編成での表現については、デイヴィッド・カヴァデールの歌い方で詳しく扱っています。

2025年12月には、音楽活動からの引退に加えて、SNSでの発信からも離れ、家族や友人と過ごす意向を公式に伝えました。
長く続いた歌手としての歩みを振り返れる録音は、いくつもの形で残っています。

カヴァデールの変遷を聴く面白さは、昔と同じ高音が出るかを確かめることだけにはありません。
若い頃から静かな曲を歌い、1980年代にはバンドとともに歌を大きく聴かせ、のちには昔の曲を新しい共演者と作り直した。
声そのものの変化と、声を生かす音楽の作り方の変化が、同じ曲の別々の録音からたどれるのです。

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