「The Final Countdown」の歌手が、ブルースを歌うようになった。
再結成後のEuropeに初めて触れたとき、その違いに驚いた人もいるでしょう。
ジョーイ・テンペスト自身も、2012年の『Bag of Bones』で得た歌の表情は、若い頃には出せなかったものだと話しています。
では、昔の声が変わってしまったので、音楽のほうを合わせたのでしょうか。
彼の話をたどると、声そのものの変化に加えて、高音を試した経験、ソロで出会った音楽、バンドでの録音の仕方が関わっています。
年代ごとの歌を、その違いと一緒に見ていきましょう。
1980年代:大きなギターの音から、高音を探した
ジョーイによると、初期の練習でジョン・ノーラムのギターが大きく鳴っていたことが、高いキーで曲を作るきっかけになりました。
大きなギターの音に埋もれず、自分の声も聴かせたかったのです。
さらに『The Final Countdown』の頃には、好きだったスティーヴ・ペリーのような高音を試し、そこに力強さを見つけていきました。
そうして歌の高音を試した成果が、1986年の「The Final Countdown」のスタジオ録音に残っています。
あの歌声が最初から完成していたと思うと、こうした試行錯誤は見えにくくなります。
共演するギターの音と、憧れの歌手がいた。
その中で自分の声がどこまで使えるかを確かめたことが、Europeの代表曲につながっていました。
一方、録音期に声の調子を崩し、ストックホルムの指導者に習った経験もあります。
2016年の回想では、そのときに教わった練習を、後年も必要なときに使ってきたと説明していました。
高音の魅力を見つけていく時期に、調子を戻すための練習も覚えていたのです。
1990年代〜2002年:ソロでは、違う歌を歌ってみた
バンドが1992年に活動を休止すると、ジョーイはソロでも作品を作るようになります。
1995年の最初のソロ作『A Place to Call Home』は、Europeの続きを期待したファンを驚かせました。
本人も、初期のソロではバンドとまったく違うことをしたかったと振り返っています。
この時期、彼が熱心に聴いたのは、ジャクソン・ブラウン、ランディ・ニューマン、ニール・ヤング、ボブ・ディランなどでした。
レコードを買い、ライブに足を運ぶ。
そうして得た歌詞への新しい見方は、のちにEuropeを再開してからも残ったといいます。
大きな会場を沸かせる歌手が、別の音楽を聴き、別の書き方を覚える時間を持った。
ソロ活動を単なるバンドの休憩と考えるより、歌いたい言葉を増やしていた時期と考えると、その後へのつながりが見えてきます。
2002年のソロ作『Joey Tempest』では、以前より高い声になったと聞かれ、本人もEuropeに近い強さを認めていました。
落ち着いたソロ作品を作ったあと、ミック・ミカエリらと演奏する中で、また重い音楽へ近づきたくなったのです。
声の歩みは、高音から低音へ一方向に進んだわけではありません。

再結成後:変わった声を、録音でも生かす
2004年の『Start from the Dark』から、Europeは新作の制作とツアーを再び重ねていきます。
2009年の『Last Look at Eden』を経て、2012年の『Bag of Bones』では、ジョーイの声の変化が本人の話にもはっきり現れます。
ジョーイはツアーのあと、自分の声が少し低く、ざらつきやかすれを帯びたと感じました。
それはスタッフやメンバーも気づいていて、好意的に受け止めていたといいます。
変わった声をどう思うかと聞かれたジョーイ自身も、気に入っていると答えました。
『Bag of Bones』の「Not Supposed to Sing the Blues」は、その頃の歌唱です。
1986年の曲とは楽曲も演奏も異なるため、声の違いすべてを年齢のせいにはできません。
本人が言う、ざらつきを含んだ表現を知る手がかりになる曲です。
録音の仕方も、それまでと変わりました。
プロデューサーのケヴィン・シャーリーは、ドラム、ベース、ギターと各パートを順番に仕上げていくより、全員で演奏したテイクを生かす方法を選びました。
ジョーイも、演奏を録ったあとの気分が残っているうちに歌を入れたと説明しています。
細かい部分を別々に作る時間より、バンドで曲を演奏したときの勢いを重視したわけです。
声に加わった荒さと、録音に残した演奏の勢いが、同じ作品の中にある。
このアルバムの変化は、歌手一人の声だけを切り離して考えるより、バンドがどんな演奏を残したかったかと一緒に見るほうが分かります。
同じ作品の「Drink and a Smile」では、自宅で夜中に気楽に録った歌も使いました。
ジョーイの記憶では、声にはレズリーという、音を出す部分が回転するスピーカー装置の効果も加えられています。
録音で聴こえる声には本人の歌い方だけでなく、こうした音の加工も関わるのです。
昔の声を否定せず、今の曲を増やしていく
2016年、ジョーイは若い頃の声を、細く、よく動く声として振り返りました。
対して2016年の自分の声には、より丸みとかすれがあると説明しています。
高音が出るかどうかだけでは、本人が感じていたこの違いは十分に言い表せません。
新しい歌い方は、新しい作品にもつながりました。
『War of Kings』を作ったあとには、同作と『The Final Countdown』を、それぞれ丸ごと演奏する公演も行っています。
ジョーイにとっては、新作で今のバンドを見せ、そのあとで懐かしい曲を楽しめる構成でした。

若い頃の華やかな高音を好きな人は、その録音を今も楽しめます。
同時に、再結成後のジョーイには、昔と同じ歌声を再現すること以外にも、歌う理由ができていました。
ソロで広がった歌詞の見方や、変化した声で試したい表現が、新曲に結びついていったのです。
2026年9月時点では、新作『Come This Madness』の発売が9月25日に予定されています。
先行曲「One on One」についても、ジョーイは、初期のような空想の世界だけでなく、いま生きている時代を歌詞に反映したと説明しています。
各時期を通じて見えてくるのは、高音を得て完成し、その後は維持するだけ、という歌手の姿ではありません。
違う音楽を学び、変わった声を使い、その声に合う新しい歌を作る。
曲の中で声の強さや表情をどう使い分けるかは、ジョーイ・テンペストの歌い方で詳しく扱っています。
Europeの昔と今を聴き比べる面白さは、声の変化と一緒に、歌いたいことも変わってきたと分かるところにあります。
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