ジェフ・テイトの歌声の変遷|昔の曲を再録して、変わったことに気づいた

長年歌ってきた曲なら、昔の録音と同じように歌えるのでしょうか。
ジェフ・テイトは2013年に「Silent Lucidity」を録り直し、納得のいくテイクを重ねた後で、1990年の原曲を聴き返しました。
すると、いつの間にか旋律や言葉の置き方を変えていたことに驚きます。
自分では普段どおり歌っていたのに、昔の自分の歌を再現するには原曲を確かめ直す必要がありました。

どうして気づかないうちに変わったのでしょうか。
テイトの歩みを追うと、ライブで歌い続けて生まれた変化と、後に本人が公演を続けるため意識して選んだ変更の両方が見えてきます。

1983年――高音で強く押し出す声

Queensrÿcheの初期EPに収められた「Queen of the Reich」では、テイトの鋭い高音が曲を引っ張ります。
この曲から彼を知る人には、長く伸びる強い声がまず印象に残るでしょう。
当時の録音で、その声は曲の速さと劇的な展開に応える役割を担っていました。

これは初期EPの録音を後年リマスターした版で、2003年に歌い直した声ではありません。

ただ、テイトはその後もすべての曲を同じ調子では歌いません。
一つのバンドの中で扱う曲が広がり、声の高さ以外にも、何を語る歌なのかを伝える必要が出てきます。

1990年――「Silent Lucidity」に残った最初の形

『Empire』に入った「Silent Lucidity」は、悪夢におびえる子どもを安心させる親を描いた曲だとテイトは説明しています。
「Queen of the Reich」の勢いをそのまま持ち込む歌ではありません。
どんな場面を歌うかに合わせて、声の役割も変わりました。

しかし、この原曲を「長い試行錯誤の末に完成した、動かしようのない歌い方」と考えると、後の話が分かりにくくなります。
テイトによれば、新曲の録音時には、ライブで何度も試す前に、そのとき思いついた旋律や歌い回しを形にすることがあります。
1990年に残した一回の選択が、聴き手には繰り返し聴ける原曲になります。
一方で、歌う本人にとっては、舞台で歌い続ける曲の出発点でもありました。

2004年、デュッセルドルフのPolo Festivalで歌うジェフ・テイト
2004年、デュッセルドルフのPolo Festivalで歌うジェフ・テイト。
写真:BlackIceNRW / CC BY 3.0

2002年――歌う場所を、伴奏を減らして作った

1990年と2013年の間には、声を置く環境を自分で変えた試みもありました。
初めてのソロアルバム『Geoff Tate』では、仲間と多くの音を作って録った後、仕上げの段階で必要なものを選び、ほかを取り除いていったといいます。
歌を強く押し出して埋もれないようにする前に、旋律の入る空間を伴奏側から作ったのです。

テイトは、ギターの演奏が常に多く入るQueensrÿcheとは違う作り方を望んでいました。
ドラムとベースが曲を進め、ギターも歌の動きを支える。
本人が求めたのは、聴き手の近くで思いを伝えられるような、開けた音の場でした。

「This Moment」では、ギターのフレーズからロイ・オービソンを思わせる1950年代風の場面を仲間と想像しました。
夜の車のラジオから流れてきたら、どんな音に聞こえるか。
鍵盤の音も、そのイメージを相談しながら探しています。

この制作で本人が選び直したのは、声と楽器の関係でした。
同じ歌手が歌っていても、歌の周囲に何を置くかで、旋律や言葉へ向く注意は変わります。
のちに昔の曲を歌い直したときとは違い、この制作では、最初から別の聴こえ方を探していました。

2013年――「いつもの歌」と原曲が離れていた

2013年、テイトが率いた当時のQueensrÿche名義のアルバム『Frequency Unknown』には、過去の代表曲の再録音が加わりました。
テイトの説明では、レコード会社が求めたのは、できるだけ原曲に近い演奏です。
そこで「Silent Lucidity」の伴奏を整え、本人も何度か歌を録って、納得できるところまで進めました。

ところが原曲を聴き返すと、歌の言葉の置き方や旋律の運びが、自分の録ったものとかなり違っていました。
長年ライブで歌う間に、メロディーやリズムを少しずつ変えていたのです。
本人はその変化を意識していなかったと語ります。
歌う本人には新しい形がなじんでも、1990年のレコードは当時の歌い方のまま残っていました。

公開された2013年の再録音は、昔の形に近づけようとした作品です。
最初にテイトが驚いた、原曲と大きく違うテイクをそのまま発表したわけではありません。
この二つのスタジオ録音の差を、年齢だけによる声の変化として測ることもできません。
再録の目的そのものが、長年のライブで変わった歌い方を原曲へ寄せることだったからです。

2016年――昔の歌を、違う編成で届ける準備

一方で、原曲に近づけることだけが、過去の歌への向き合い方でもありませんでした。
2016年のテイトは、アイルランドで出会った路上演奏のバンドを迎え、アコースティック公演のリハーサルをしていると話しています。
ギターにマンドリン、ヴァイオリン、チェロを加え、本人はサックスも演奏し、全員でハーモニーを歌う構想でした。

歌の由来や旅先での出来事を話しながら曲を届ける。
同じ曲を原盤どおり再現する再録とは、目的が違います。
歌い続ける中で自然に動いた部分がある一方、どんな仲間と、どんな音で聴いてもらうかを、意識して変える方法も選んでいたのです。

2022年――今度は自分で高さを変えた

2013年に発見したのは、意識せずに積み重なった歌い回しの違いでした。
それとは別に、テイトは2022年、昔の曲を公演で歌い続けるため、伴奏のチューニングを半音下げていると明かしました。
半音とは、鍵盤で隣の音へ一つ移る分の高さです。

本人が分けて話したのは、一曲だけ歌う場合と、夜ごとツアーで歌う場合です。
元の高さで一曲を歌えても、同じ条件で公演を重ねるのは難しい。
バックコーラスの歌手にも高い音が続くため、その人たちの負担も考えた変更でした。
「昔は出た音が今も一瞬出るか」だけでなく、曲全体を連日届けられるかで高さを決めています。

2023年、ニュルンベルク公演のジェフ・テイト
2023年、ニュルンベルク公演のジェフ・テイト。
写真:Stefan Brending (2eight) / CC BY-SA 3.0 de

初期の高音と「Silent Lucidity」の静かな歌の役割の違いは、ジェフ・テイトの歌い方で詳しく扱っています。
ここで見てきたのは、一曲の歌い方が長年の演奏でどう動き、本人が何を選び直したかです。

1990年のレコードは、今でも同じ歌を返してくれます。
けれどもテイトは、その曲を舞台で歌い続け、2013年には原曲へ近づくため聴き直し、2022年には公演を続けるため高さを調整しました。
再録音で昔の自分に驚いたのは、原曲を忘れたというだけの話ではありません。
録音後も一曲を歌い続けた時間が、本人の「いつもの歌」を少しずつ作り替えていたのです。

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