カイ・ハンセンの歌声は、きれいに整った高音という説明だけではつかめません。
荒々しさのある響き、高いシャウト、皆で歌いたくなるメロディ。
そして、ピアノを背に静かに歌を始める場面もあります。
何でも同じ力で押し切るのではなく、その声が生きる曲や場面を選ぶことも含めて、彼の歌い方を見ていきます。
鋭いシャウトが、曲の入口を一気に開く
「Ride the Sky」の冒頭は、カイの高いシャウトを知るためのわかりやすい場面です。
高い音を滑らかに聴かせるより、鋭い声が曲の勢いを呼び込む。
速い演奏の中で、その声が強く耳に残ります。
初期からある荒々しさは、彼の歌を見分ける目印の一つです。
カイの響きには、鼻にかかったように感じられる特徴もあります。
『Hell Yeah!!!』のライヴ評でも、その質感が長年の歌唱を通じて本人の持ち味になったと捉えられていました。
丸く滑らかな声とは違う輪郭が、メロディの中でも歌い手の存在を残します。
高い音が出ることと、その音がどんな質感で届くかは、別々に見るとわかりやすくなります。
カイの場合、音の高さに加えて、声の角や粗さが印象を作る。
高音の長さだけを追うより、曲に入った瞬間の声の輪郭に注目すると、その特徴がつかみやすいでしょう。
粗さのある声で、旋律の楽しさを届ける
『Land of the Free』に参加したヤン・ルバッハは、カイの声をラルフ・シーパーズより角があり、荒々しいものと捉えていました。
同時に、カイ自身が歌うときの姿勢や気持ちを評価しています。
声を均一に整えることだけが、曲を伝える方法ではないと感じさせる証言です。
『Land of the Free』では、その力強い声が、希望や楽観性を持つ曲と組み合わさっています。
荒い声だから暗い曲になる、という関係ではありません。
声の質感は強くても、メロディが向かう先は明るい。
その組み合わせが、GAMMA RAYの歌の魅力になっています。
カイ自身も、『Land of the Free』とその続編に通じるものとして、聴き手が前向きになり、メロディを一緒に歌える感覚を挙げていました。
本人だけが高い音を出して終わるのでなく、聴いている側も歌へ入っていけることを大切にしています。

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自分の声に合う曲を選ぶことも、歌い方の一部
『Skeletons in the Closet』につながるツアーでは、ファンが選んだ曲の中から「Lust for Life」を外しました。
カイ本人が、自分の声にはあまり合わないと考えたためです。
自分のバンドの曲であっても、すべて同じように歌えるとは扱っていません。
声の上達について聞かれたとき、カイは、長く歌ったことで自分の声でできることと、するべきでないことがわかるようになったと答えています。
経験は、声を強く出すためだけに積まれるのではない。
自分の声が最も生きる範囲を判断することにもつながります。
この考え方を知ると、カイの歌を音域の広さだけで比べる必要はなくなります。
どの曲で、どんな表情を受け持つのか。
歌う量を増やすことより、声と曲が合う場面を選ぶほうが、歌い手の個性がよく伝わることもあります。
一人の声で押し切らず、違う声と表情を作る
『XXX – Three Decades in Metal』の「Making Headlines」では、カイとトビアス・サメットが歌を交わします。
「Left Behind」では、クレモンティーヌ・ドゥロネーのクリーンな声がバラードへ加わる。
曲ごとに相手が変われば、カイの声の聴こえ方も変わります。
歌の迫力は、一人が声を大きくする方法だけで作られるものではありません。
異なる声が順番に出てきたり、同じ曲の中で別の表情を受け持ったりすることで、聴き手の耳が切り替わります。
粗さを持つ声は、違う質感の声と並ぶことで、さらに輪郭がわかりやすくなるのです。
三人で歌うHELLOWEENでは、曲の途中で役割が変わる
「Skyfall」は、キスク、デリス、カイが一曲に参加する例です。
異星人をめぐる追跡劇を、複数の声で描いています。
単独のシンガーを聴く曲とは違い、声が変わること自体が曲の展開の一部になります。
「Giants on the Run」では、カイが持ち込んだハーモニーの案を、デリスが本人に歌ってほしいと頼みました。
ダニ・ルブレは、曲の展開が変わる部分でカイがリードを取る経緯を説明しています。
声を配置する場所が、メンバー同士の制作のやり取りで決まった例です。
現在のHELLOWEENでは、歌い方を何通りか試し、その曲に合う声を選ぶこともあるとカイは話しています。
彼の歌が前に出る瞬間は、単に順番が回ってきたというより、その部分に声の個性が必要とされた場面として捉えられます。

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「Feeding the Beast」は、静かな声から始まる
「Feeding the Beast」の導入は、ピアノとカイの歌が中心です。
重いギターを最初から前面に出さず、静かで感情のある歌から入り、その後に演奏の重みが増していきます。
最初の声を聴かせる時間があるからこそ、後の厚みとの違いも伝わります。
同曲でカイはギター・ソロを弾き、リズム部分は仲間へ任せています。
また、このソロ作ではカイの歌を入れたデモを聴いたメンバーが、ゲスト歌手を加える必要はないと判断したそうです。
歌を自分が受け持つ一方、楽器の仕事は仲間へ任せる形も選んでいます。
ギターを弾きながら歌う人として知られていても、いつも同じ配分で二つを担うわけではない。
声の出番を決めることと、演奏をどう分けるかがつながっています。
静かな歌を聴かせる場面も、そうした作品全体の組み立ての中にあります。
軽快な歌、合唱、鋭い声を曲ごとに使う
『Born With a Hammer』の「Welcome to Life」には、スカやレゲエの感触とコーラスのハーモニーが重なります。
「Don’t Care」では軽快なアレンジに遊び心のある歌が合わさり、「Wonderland」には初期を思わせる鋭い高い声も出てくる。
ひとつの声の個性を、違う曲調へ持ち込んだアルバムです。
タイトル曲では、ピアノを弾く中から生まれたメロディを、QUEENを思わせる大きな展開へ育てたとカイは説明しています。
本人にとっても、決まった曲の形から外れることが楽しさにつながっていました。
声の表情も、そうした自由な曲作りの中で生きています。
ただし、カイが曲の核に求めるものはシンプルです。
ギターを弾いて歌うだけでも魅力があること。
2021年のHELLOWEEN制作でも、合唱や装飾を加える前に、歌と基本のバンド演奏で曲が成立するかを確かめていたといいます。
大きな音作りの中心には、声で伝わる旋律があります。
舞台では、声を分けることで自由を残す
カイは、ツアー後に声の調子を崩した経験を経て、フランク・ベックとリードを分ける形へ進みました。
マイクの前に張りついたままになる時間を減らし、ギターをもっと楽しみたいとも話しています。
持ち味のある声を、長いステージの中でどう生かすかという判断でした。
本人にとって、歌詞とメロディを伴って曲を作ることは自然な営みです。
長年の経験で声のさまざまな使い方を知ってきた一方、二時間にわたって歌とギターの両方を背負うことは望んでいない。
声を使えることと、すべて自分で歌うことを分けています。
カイの歌い方の面白さは、荒い声をきれいな声へ近づけることだけでは説明できません。
鋭く曲へ入る声、旋律を一緒に歌いたくさせる声、静かに始める声。
その個性が生きる場所を選び、必要なら仲間と分けることまで含めて、彼らしい歌が作られています。
表現が広がってきた歩みは、カイ・ハンセンの歌唱変遷でたどっています。

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