「NEW KAWAII」ではきれいな裏声、「RADIO GALAXY」ではダミ声。
2024年の同じ公演を取材した赤木一之は、仲川瑠夏の異なる声を書き留めている。
一曲の中で声色を変え、曲が変われば、また違う質感を出す。
仲川の歌い方を、具体的な歌唱場面と、本人が選んだ息の使い方から見ていきたい。
NEW KAWAII — MV(2024年)。
公演評とは異なる収録です。
「NEW KAWAII」のサビ、裏声と緩さのある歌い回し
2024年5月6日、Zepp Shinjuku(TOKYO)で行われた「歌舞伎町 UP GATE↑↑2024」。
FRUITS ZIPPERが歌った「NEW KAWAII」のサビについて、赤木の公演評は、仲川の裏声の美しさに触れている。
続く仲川の歌い回しでは、緩さのある声も、かわいらしい表現として書かれていた。
本人も「NEW KAWAII」について、落ちサビを、歌を聴かせるポイントとして挙げている。
せりふやかわいい動きとともに、声そのものへ耳を向けたい箇所がある曲なのだ。
落ちサビは、一般に伴奏の勢いを一度抑え、歌声を前に出しやすくする場面だ。
仲川本人がそこを見どころにしているなら、音の高さに加え、歌い出しから次の言葉へどうつなぐかにも注目できる。
にぎやかな曲の中で、一人の声が印象に残る理由を探しやすい場所になる。
CANDY TUNEの宮野静も、仲川の高音を、きれいな出し方で海外の歌い方のニュアンスがあると評していた。
同じアイドルとして歌う人からも、高音の表情に個性を感じられていたことが分かる。
アリシア・キーズをまねて、歌い回しと発音に近づく
仲川が憧れの声に近づくためにしていたのは、繰り返し聴き、自分でも歌ってみることだった。
2026年のリアルサウンドの鼎談では、アリシア・キーズのCDを何度も聴き、その歌をまねていたと話している。
歌をもっと頑張りたいと思わせてくれた存在で、洋楽を歌うことや英語の発音を学ぶきっかけにもなったという。
ここで注目したいのは、憧れの相手の声の高さだけに話を限っていないことだ。
英語の言葉をどう口にし、それをメロディーの中にどう置くか。
歌を聴いてまねる経験には、音の連なりと言葉の響きの両方が含まれている。
宮野が仲川の高音に感じた海外の歌い方のニュアンスも、こうした本人の学び方と並べると、関心の向け先が見えてくる。
もっとも、好きな歌い方がすぐにできたわけではない。
2022年の楽天チケットの取材では、海外の歌手のように声を転がす歌い方が難しく、通常のトレーニング以外の時間にも練習していると明かしていた。
本人が課題にしていたのは、声の高さだけでは捉えにくい、音の動かし方や歌の細かな表情だった。
声を転がすという言葉だけから、揺れの速さや特定の発声法までは決められない。
ただ、難しさを感じる箇所を自覚し、聴いて好きだと思った歌い回しを繰り返し試していたことは分かる。
仲川の声の個性を考えるうえで、こうした細部への関心も欠かせない。
「RADIO GALAXY」では、粗い声も表現になる
歌舞伎町の公演で「NEW KAWAII」の次に歌われた曲は「RADIO GALAXY」だった。
そのラップ部分で、早瀬ノエルの勢いある歌に続く仲川の声を、赤木はダミ声と表現している。
先ほどのきれいな裏声とは異なる、粗い質感にも注目した記述だ。
この粗い声は、攻撃的な表現として受け止められていた。
一つ前の曲との声の肌触りの違いが、ここでの聴きどころになる。

画像出典:画像掲載元
RADIO GALAXY — MV(2022年)。
公演評とは異なる収録です。
「Bye-Bye」で聴かせるクールさと、耳へ入ってくる声
仲川と早瀬ノエルによるユニット曲「Bye-Bye」も、声の組み合わせを見るのに面白い一曲だ。
InterFMの番組「TOKYO MUSIC RADAR」の取材を掲載したBARKSの記事で、聞き手のmikakoは、この曲の仲川の歌声をクールで格好いいと評している。
早瀬のラップとともに、普段のグループ曲とは違う色を受け取っていた。
一方、同じ取材で早瀬が仲川の声について挙げたのは、透き通る感じと、耳に自然に入ってくる聴き心地だった。
さらに、その歌の裏には努力の積み重ねがあるとも語っている。
一緒に歌うメンバーが魅力としているのは、強い音を出したときの迫力ばかりではない。
言葉や旋律がすっと届く感覚にも、仲川らしさがあるという評価だ。
「RADIO GALAXY」の粗さと、「Bye-Bye」で評されたクールさを比べると、ラップを含む曲にも一種類の声だけで向かっていないことが分かる。
仲川のパートを追うときは、高音の伸びに加えて、声の輪郭が柔らかい場面と、ざらつきを感じさせる場面の違いにも耳を向けたい。
「Chill out」、夜に似合う曲の中で出す個性
ソロ曲「Chill out」について、仲川はGLITTERの取材で、シティポップ寄りの、大人っぽく夜に似合う曲と説明していた。
明るくテンポの速い曲が多かったFRUITS ZIPPERの中で、少し違う一面を見せられる曲として紹介している。
曲名にふさわしく、ゆったりと楽しんでほしいという思いも語った。
この説明を踏まえると、「NEW KAWAII」の落ちサビで歌を聴かせることと、「Chill out」の一曲を通して雰囲気を保つことには、違う面白さがある。
グループ曲では前後のメンバーとのつながりの中で仲川の声が現れ、ソロ曲ではその声の調子を続けて味わえる。
短い担当箇所に注目したあとでソロ曲へ進むと、同じ歌い手の表現を違う大きさで捉えられるのだ。
「朝にならないで」、深夜2時を感じさせる息の使い方
2026年のソロ曲「朝にならないで」では、本人が声の選択を説明している。
深夜2時の状況と気だるさを感じさせるため、FRUITS ZIPPERではしないような息の使い方を意識したという。
曲には、歌い上げる部分もあると話している。
本人は、曲に共感した自分の気持ちをそのまま乗せるよりも、主人公たちを外から見て物語を伝える語り手の立場で表現した、とも語った。
語り手という立場で考えると、気だるい息づかいも、歌い上げる声も、同じ物語を伝えるための選択になる。
すべての箇所で感情を最大まで押し出すのでは、場面ごとの距離感はつきにくい。
声を張る箇所と、言葉の周りに息を感じさせる箇所を対にして聴くと、本人が説明した夜の情景を声の表情から追いやすくなる。
朝にならないで — THE FIRST TAKE(2026年)
裏声を聴かせるサビも、粗い声が現れるラップも、息で夜の気だるさを伝えようとするソロ曲もある。
仲川の歌い方は、曲の中で届けたい表情と、そこで使う声の質感を結びつけて見ると面白い。
その選択が、グループで歌を強みにしようとした頃から、「Chill out」や個人名義の活動へどう広がったのか。
時期ごとの背景は、仲川瑠夏(FRUITS ZIPPER)の歌唱変遷でたどっている。

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