ショーン・メンデスの歌声の変遷|一人で張り上げる高音から、仲間と重ねる声へ

2015年5月、デトロイト公演でのショーン・メンデス ショーン・メンデス
GabboT / CC BY-SA 2.0

ギターを抱えて歌う若いショーン・メンデスと、2024年のアルバム『Shawn』で歌う彼。
写真だけを見れば、どちらもギターの似合うシンガーソングライターです。
けれど、声が曲の中で担っている役割は、少しずつ変わってきました。

初期の歌には、若い声で一曲を届けようとするまっすぐさがあり、その後はロックの力強い高音や、R&Bの軽やかな歌い回しへ広がります。
2024年には、一人の声が目立つ瞬間だけでなく、仲間と声を重ねること自体を楽しむ作品にたどり着きました。
歌の迫力が増えて終わる成長物語としてではなく、何を歌う喜びにしてきた人なのかを追ってみましょう。

2014〜2015年――伴奏の中から、若い声がまっすぐ届く

短い動画で歌声が広まり、2014年に「Life of the Party」を発表したショーン。
当時はまだ15歳でした。
この曲では、ピアノを中心とした伴奏が、歌声を静かに支えています。
派手に音を重ねるより、まず歌う人を覚えてもらうような曲です。

翌2015年のデビューアルバム『Handwritten』には、この曲とともに「Stitches」も収録されました。
「Stitches」ではリズムが軽快になり、覚えやすい旋律を、より勢いのある声で聴かせています。
穏やかな曲だけに似合う歌手ではなく、身体が動くようなポップスも歌える人だと伝わる組み合わせです。

後年の作品から戻って聴くと、当時の歌にもすでに、抑えた部分から気持ちを強く出す部分へ進む面白さがあります。
その幅が、次のアルバムではさらに大きくなっていきました。

2016〜2017年――憧れのギターと、切実に張る声

2作目『Illuminate』(2016年)の制作に入るころ、ショーンはジョン・メイヤーの『Continuum』を繰り返し聴いていました。
「Ruin」では、ブルースを思わせるギターと、言葉を急がずに歌う表情が、初期の軽快なポップスとは違う魅力を見せます。
メイヤーから贈られたギターでこの曲を演奏していたという話も、憧れが本人の音楽に近づいていったことを感じさせます。

同じアルバムの「Mercy」では、声を強く張る瞬間が大きな聴きどころになりました。
ロックの響きを増した演奏の中で、相手に届いてほしいという気持ちを歌声へ乗せていきます。
「Ruin」の落ち着いた歌と「Mercy」の切実な歌が並ぶことで、声の強さを変える幅も見えやすくなっています。

2017年の「There’s Nothing Holdin’ Me Back」でも、サビで前へ出る声が曲の勢いを作りました。
ショーンを「爽やかな声の人」とだけ覚えていると、こうした曲での必死さには少し驚くかもしれません。
明るいポップスの中にも、声を思いきり使う見せ場を作る歌手になっていました。

ショーン・メンデスの公演会場
ショーン・メンデスの公演会場。写真:Milenaxsophie / CC BY-SA 4.0

2018年――ロックのサビと、踊るようなR&Bを同じ声で

3作目『Shawn Mendes』では、その幅がさらに広がります。
「In My Blood」で、自分の不安を力強いロックの歌へ変えた一方、「Lost in Japan」では、軽快なリズムに合わせて恋の気持ちを歌っています。
どちらも同じ2018年のアルバムに入っている曲です。

「In My Blood」の張りつめた歌のあとで「Lost in Japan」を聴くと、歌の表情がぐっと軽くなります。
高音で気持ちをぶつけることだけでなく、リズムの流れに乗って歌うことが曲の楽しさになっています。
2018年のCapital’s Summertime Ballで歌った「Lost in Japan」でも、その軽やかな曲調を確かめられます。

ショーン自身、このアルバムでは、自分の声と物語を作品全体の共通点にしようと考えていました。
ロック、ポップス、R&Bのどれか一つへ揃えるより、良いと思った曲を歌う。
ジャンルが変わっても、その人が歌っていると分かる作品を目指していたのです。

だから、この時期を「ロック歌手になった」とだけまとめると、半分を見落としてしまいます。
同じ歌手が、緊張した声と楽しそうな声を、曲に応じて行き来できるようになった時期でもありました。
「In My Blood」で弱さを力強い高音に乗せる意味は、ショーン・メンデスの歌い方で詳しく扱っています。

2020〜2022年――大きな音の作品の中にも、静かな歌があった

2020年の『Wonder』では、厚い音や大きな展開を持つ曲が並びます。
その一方、「Song for No One」には、穏やかな歌声とフォークを思わせる響きがありました。
2021年の「It’ll Be Okay」でも、ピアノを中心に、言葉と声を近くで聴かせる歌へ向かっています。

この流れを知っていると、2024年の作品で音数が減ったことも、突然まったく違う歌手になった出来事には見えません。
大きなサビを歌う活動と並行して、静かな声がよく似合う曲も作っていたのです。

2022年にはツアーを中止し、活動のペースを見直しました。
そこから再び音楽を作る中で、ショーンが見つけ直したのは、歌を人と一緒に楽しむ感覚でした。

2019年のAmerican Music Awardsでのショーン・メンデス
2019年のAmerican Music Awardsでのショーン・メンデス。写真:Cosmopolitan UK / CC BY 3.0

2024年――何人かで声を合わせるだけで、歌いたくなった

『Shawn』の制作で、ショーンはギターを持ち、数人の仲間と同じ部屋で歌う喜びを、改めて感じたと話しています。
自分には単純すぎるように思えた曲にも、楽器やハーモニーを加えると、求めていた音楽が現れたのでした。
長く大きな舞台で歌ってきた人が、目の前の二人と声を合わせるだけで感動していたことが、この作品を理解する手がかりになります。

「Isn’t That Enough」では、ゆったりした歌に、ハーモニカや口笛、重なる声が加わります。
一人の歌手が力いっぱい曲を引っ張る場面とは違い、何人かがその場で歌を楽しんでいるような親しみやすさがあります。
自分の声を前へ出すことだけでなく、別の声と一緒になる響きも、歌の魅力として聴かせるようになりました。

このアルバムは、昔から歌っていた曲を選び直す作品でもあります。
最後に収めたレナード・コーエンの「Hallelujah」は、ショーンが15、16歳のころにもカバーしていた曲でした。
当時は十分に分からなかった歌詞が、26歳になった自分には響くようになったと話しています。
声の出し方に加えて、同じ言葉をどう受け取って歌うかも変わっていました。

ギターと声を中心にした姿は初期と似ていても、同じ曲の歌詞から受け取るものは変わっていました。
『Shawn』では、仲間と歌う喜びに加え、以前は分からなかった言葉を自分の経験に照らして歌う深まりも感じ取れます。

声を強くすることも、人と合わせることも知った

ショーン・メンデスの歌は、穏やかなピアノ曲から、ロックの張りつめた高音へ進みました。
そこに「Lost in Japan」の軽やかさが加わり、さらに『Shawn』では、仲間と声を重ねる楽しさが前に出てきます。

「Mercy」や「In My Blood」の切実な声が好きなら、2024年の歌は、最初は少し控えめに感じるかもしれません。
でも、本人が何を楽しんで歌っているかへ目を向けると、別の発見があります。
一人の声が大きく伸びる瞬間から、何人かの声が重なった瞬間へ。
高音を歌い切ることに加えて、仲間とのハーモニーを楽しむことも大切になった、と考えると聴きどころも変わってきます。

初期の曲を聴けば、あの声が一曲を届けようとする勢いを楽しめます。
『Shawn』を聴けば、その声が周りの人や楽器と一緒になり、歌を続けたくなる時間を作る様子を楽しめます。
ギターを抱える姿が似ているからこそ、その中で変わってきた歌との付き合い方が、よく分かる歩みです。

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