高橋李依は、後藤姫として「君は天然色」を歌ったとき、普段なら裏声を選ぶ高さでも、その方法を使わないと決めました。
一方、ソロ曲では、力のある高音に語りを組み合わせ、曲の勢いを作っています。
同じ声の持ち主でも、誰の感情を、どんな距離で届けるかによって、声の選択が変わるのです。
「君は天然色」で、裏声を使わなかった理由
『かくしごと』の後藤姫は、父親と暮らす小学生です。
高橋が歌うカバーは高めのキーでしたが、アニメ本編で姫の裏声を使っていなかったため、歌だけでその声へ切り替えることを避けました。
高音の出しやすさより、話している姫と歌っている姫がつながることを優先した選択です。
本人が目指したのは、歌詞を深く解釈して情感をたっぷり乗せる歌ではなく、十歳の子が皆と楽しく歌う空気でした。
高い音をどの声で出すかも、その人物の年齢や歌う様子と切り離されていません。
ささやきの量だけでは、高木さんにならない
高木さんのカバーでは、声を小さくすれば親しげになる、と単純には決められません。
高橋は、ささやいても暗くならない程度や、元気な曲をどこまで役の声で歌えるかを、一節ずつ探ったと話しています。
柔らかさと曲の明るさを、同時に保つための調整です。
その声を組み立てる際には、譜面台へキャラクターの表情の資料を置くこともあります。
高木さんなら、丸く開く口から声が出る姿を想像する。
外見をただ声色の飾りにするのではなく、どんな表情で言葉を発する人なのかを、歌にも持ち込んでいます。
逆に、歌い慣れていることが難しさになる場合もありました。
「MajiでKoiする5秒前」は、かつてオーディションのために練習した曲です。
高橋は、歌が安定しすぎてしまい、高木さんがカラオケで歌っている感じへ戻すのが大変だったと振り返っています。
自分がうまく歌えることと、役がその場で歌っているように聞こえることは、同じではありません。
原曲の作者は高木さんを思い描いて作ったわけではないからこそ、歌詞をすべて彼女の告白へ置き換えることも避ける。
歌の中の距離感には、そんな解釈が先にあります。
息や語尾を変えながら、感情を決めつけない

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高橋は、自分の声の感覚を色にたとえて説明したことがあります。
息を多めに混ぜる声、輪郭をくっきりさせる声、語尾を柔らかくする声。
色のイメージと結びつけて話しながらも、それは自分個人の傾向だと断っています。
誰にでも当てはまる発声の分類ではありません。
雁矢よしのを演じる際にも、ピンクの髪から性格を決めず、本人の思いを見ようとしました。
声を変える理由は、人物の内側に探すのです。
その考え方は、音楽を作る人とのやり取りにも通じます。
『LISTENERS』では、楽曲を手がけたじんが、想像してほしい瞬間やシナリオの場面を伝えました。
高橋は、それを感情へ落とし込めたと話しています。
音色を先に決めて当てはめるだけでなく、何が起きたときの歌なのかを共有することが、声を選ぶ手がかりになっていました。
キャラクターの声色より、内面を前へ出すこともある
『Re:ゼロから始める異世界生活』のエミリアが歌う「Door」では、いつもの声質を強く示すこと以上に、内面が届く歌を求めました。
第40話の芝居を終えてから録音できたため、曲が流れる場面を想像できていたといいます。
ただし、その場面のエミリアを、笑顔で演じたわけではありません。
歌の明るさや決意は、画面の表情より少し先を行っていました。
高橋は、どれだけ明るい表情を声へ乗せるかを相談しながら歌っています。
話す声と歌う声を常に同じにするのではなく、歌が物語の中で何を先に伝えるのかまで考えた選択です。
高いサビへ、同じ強さのまま進まない
ソロの「共感されなくてもいいじゃない」は、高音で細かく音が動く曲です。
高橋はサビが強く響く分、AメロとBメロのメリハリを意識しました。
Bメロの語りでは大きな抑揚を付けず、心の中でつぶやく感覚にしています。
そこからサビで旋律へ乗り直す切り替えが、歌の緩急になります。
この曲は、アイリーンに励まされた高橋自身の歌です。
役から気迫を借りながらも、語りを役そのもののセリフにはしない。
その距離が歌にも表れています。
言葉を止める場所も、歌の表情になる
「雁矢よしのの話」のような、音楽に語りを乗せる曲では、声を出していない間も大切です。
高橋は、イヤホンズで三浦康嗣から学んだ空白の扱いを生かし、間がリズムにはまるように考えました。
ただ、言葉を止めすぎると機械的になるため、朗読や芝居としての自然さとの釣り合いも探っています。
同じ役の「リトル・シークレット」では、AメロとBメロを普段話すような声量と距離で始め、サビへ向けて弾むように広げました。
最初から歌い上げるのでなく、言葉を話す声から、曲の高まりへつなげています。
語りの中の感情も、最初に考えた形から動かせます。
イヤホンズの「記憶」では、高橋が悲しい方向に捉えた言葉に、三浦から別の視点が示されました。
本人は、一歩離れた位置から声を出せたと振り返っています。
言葉の意味を強調するだけでなく、その言葉をどの立場から言うかで、歌の表情を変えるのです。

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加工した声では、元の歌い方まで変える
『PSO2』のリュドミラとして歌う「アドミラリ・リュドミラリ」では、音程を補正するオートチューンの加工を、録音中に耳へ返してもらっています。
最初に考えた落ち着いた歌い方では、加工があまり目立ちませんでした。
そこで、音を一つずつ明確に当てるより、つないで動かす方向へ歌を変えます。
音程を曲線のように動かしてから補正されることで、電子的な質感が強まる。
本人は、その反応を確かめながら録りました。
完成した声の効果は、生の声だけの特徴ではありません。
加工に合う歌い方を試すことも、曲の表現になっています。
一方、サビ前では、リズムに合わせて強く当てたくなる箇所を抑えています。
楽しい曲調につられて勢いよく歌うと、飄々としたリュドミラから離れてしまう。
加工を目立たせる音のつなぎ方と、役を守る強弱を、同時に考えた録音でした。
低い声にも、微かな笑顔を残す
2026年の「ひだまり」では、低いAメロに、少し口角が上がっているような音色を求めました。
低音を出すだけでなく、受け取る相手との距離や、細かな心境の動きを声へ乗せる。
高橋が語ったのは、喜怒哀楽を大きく切り替えるより、曲の中で表情を少しずつ変える歌い方でした。
裏声を使うかどうかにも、役の姿が関わっています。
声の選択が広がった歩みは、高橋李依の歌唱変遷でたどっています。







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