BIBIの歌い方|甘い声、低い語り口、鋭い声をどう使い分けるのか

Vogue Singaporeの2025年4月号を飾ったBIBI(写真:Mok Jungwook) BIBI
Vogue Singaporeの2025年4月号を飾ったBIBI(写真:Mok Jungwook)

BIBIの歌を、柔らかい声という一言で説明するのは難しいものです。
「Bam Yang Gang」では軽やかに旋律を運び、「BIBI Vengeance」では冷たさを帯びた言葉を放つ。
曲によって変わるのは、声の高さだけでなく、言葉の長さや話し手の態度でもあります。

語る声と、旋律を伸ばす声

「Lowlife Princess」では、低い音域に寄せた、話すようなラップが現れます。
同じ曲の中に、うめくような声や激しい叫びもある。
低音の深さを一定に保つ歌ではなく、言葉をどう放つかを変えながら、人物の危うさを作る歌です。

一方、「Animal Farm」では、高い音を含む旋律を歌い、ストリングスやギターの広がりと声を重ねます。
短いピアノの刻みに対して、声には旋律を運ぶ役割がある。
同じ暗い世界を描いても、語り口で迫る曲と、歌の線を広げる曲では、必要な声が違うのです。

BIBI自身は、曲の人物になって演じる感覚を説明しています。
歌に登場するものは自分の一部ではあっても、それが自分のすべてではない。
その考え方があるから、いつも普段の声の延長で歌うのではなく、曲ごとに別の態度を取れます。

息の多い声は、距離の近さを作る

「PIRI the dog」には、ささやきに近い、空気を含んだ歌声があります。
音を強く押し出すより、滑らかに続く声を生かし、その周りに重ねた歌が響く。
柔らかい声を使うことは、BIBIにとって「Bam Yang Gang」で初めて加わった方法ではありません。

同じEPの「BAD SAD AND MAD」では、シンセサイザーの音を背景に、ロックを思わせる強い歌い口も出てきます。
すべてをささやき声にそろえず、曲が求めるところでは声の勢いを変える。
初期の作品にも、軽い声と強い声を近くに置く面白さがありました。

「Meat」で前へ出るのも、息を含むような声です。
うなる低音やギターの音、サックスが鳴る中で、歌そのものは柔らかい質感を持つ。
伴奏の強さに、歌を同じ強さでぶつけなくてもよい。
音の隙間へ声を置くことで、曲に独特の近さが生まれます。

2021年のHead in the Clouds出演時のBIBI(写真:Nelson Park)
2021年のHead in the Clouds出演時のBIBI(写真:Nelson Park)。
画像出典:画像掲載元

強さを出すときも、ずっと叫び続けない

「BIBI Vengeance」では、ラテンのリズムを思わせる強いビートに、冷静な言い方の反復が重なります。
声まで常に熱くするのではなく、突き放すような態度を残す。
「JOTTO」で高い音からつぶやきへ引き戻す歌にも、強さを一色にしない発想があります。

『Lowlife Princess: Noir』では、声を加工した叫びや、息を多く含む声が左右へ配置される場面もあります。
録音で感じる恐ろしさには、発声そのものと、音をどう配置したかの両方が関わっています。
声の荒さをすべて喉の使い方だけで説明せず、歌を囲む音の作り方にも耳を向けたい作品です。

「Bam Yang Gang」は、言葉の切り方で表情を変える

「Bam Yang Gang」の歌は、細やかに旋律をなぞる部分と、言葉を短く区切る部分の違いが印象的です。
思い出をたどるところでは柔らかく流れ、相手の言葉に返すところでは、ピアノと一緒に音を切る。
声量を上げる代わりに、長さと歯切れを変えて、気持ちの向きを示しています。

この曲の作り手は、チャン・ギハです。
BIBI自身が作る激しい曲とは違う旋律へ声を預け、柔らかなサビを歌う。
誰が書いた曲かという違いも、声の選択を考える手がかりになります。

対照的な「Sugar Rush」では、ラップを含む歌と電子的な音が曲を進めます。
同じ時期のBIBIでも、言葉を細かく動かす曲と、短い旋律を親しみやすく歌う曲がある。
どちらかが本当の声というより、その曲で必要な話し方を選んでいると考えると、両方の良さが見えてきます。

言葉や共演者が変わると、歌の関係も変わる

『Life Is a Bi…』で英語を増やした理由には、韓国語だと強くなりすぎる言葉を、別の形で表したいという考えがありました。
使う言語から感情の見え方を考える。
歌い方の選択は、マイクの前で声を出すより前から始まっています。

サム・キムと歌う「Loveholic’s Hangover」では、似た歌い方でありながら、愛に対する考え方が違う二人を描いています。
声を合わせることと、気持ちが通じ合うことは同じではない。
歌声の近さが、かえって二人の距離を感じさせるという、デュエットならではの使い方です。

ドラマの挿入歌では、また違う制約があります。
BIBIは、その場面に合うように歌う必要があり、自分の作品より自由が少ないと説明しています。
歌うことへ集中しやすい反面、自分の色を加えて、監督を説得することもある。
先にある物語に声を合わせながら、どこまで自分の歌にできるかを探る仕事なのです。

伴奏を小さくすると、声の役割も変わる

「Midnight Cruise」では、重なるコーラスと管楽器の明るさが、歌を包みます。
その一方、『EVE: ROMANCE』の終盤には、「Hangang Gongwon」のピアノや、「Bluebird」「Winter」の控えめなギターがあります。
同じ歌手の声でも、周りを満たす音が変わると、華やかさにも、ひとりで話すような親密さにも近づきます。

2025年のシカゴ公演で、人物を演じながら歌うBIBI(写真:Paddy Murphy)
2025年のシカゴ公演で、人物を演じながら歌うBIBI(写真:Paddy Murphy)。
画像出典:画像掲載元

BIBIは、まず物語を作り、その後に音楽を考える方法を取っています。
EVEとEVE-1には、自分の経験と、周囲の歌手や俳優を見てきた経験が重なっているといいます。
声の明るさや強さを、歌手の固定された持ち味として決めず、歌の中にいる人物へ戻って選ぶところが、この歌い方の核にあります。

舞台の柔らかな歌にも、声を張る瞬間がある

録音で控えめな伴奏を持つ「Bluebird」も、舞台では静かな声だけで完結しません。
2025年のYouTube Theater公演では、歌い回しを加えながら、高い音を力強く響かせる場面がありました。
曲全体の優しい印象と、要所で声を張ることは両立します。
柔らかな曲だから常に小さく歌う、という分け方では捉えきれない表現です。

この日は体調が万全ではなく、ラップでは声のかすれが強く、言葉が届きにくい箇所もありました。
同じ晩でも、旋律を歌う部分と、言葉を細かく運ぶ部分では、声の出方が違っていたのです。
一度の公演で目立った荒さを、そのまま普段の歌い方の特徴にしないことも大切です。

初めて英語で一曲を歌ったフェスの前には、場面を思い描き、選曲や準備へ時間を使っていました。
本番前には呼吸の運動もしているといいます。
BIBIの自由な表情を支えるのは、客席を想像し、そこへ歌を届けるために準備する時間でもあるのです。

人物や作品ごとに声の選択を広げてきた歩みは、BIBIの歌唱変遷をご覧ください。

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