ユンナの歌では、芯のある明瞭な声が、勢いのある曲にも静かな曲にも居場所を持っています。
では、その印象は、いつも同じ強さで歌えば作れるのでしょうか。
「Parade」の軽やかさや、『MINDSET』でのバンドとの録音に目を向けると、声をどう出すかに加え、何に合わせて歌うかという選択が見えてきます。
声の輪郭、質感、言葉との距離から、ユンナの歌い方を考えます。
澄んだ声に芯があるから、ピアノの勢いと並んで歌える
「ほうき星」で知られるユンナの声には、透明感と、音の中心がぼやけない強さが共存しています。
柔らかいか力強いかのどちらかに分けるより、明るい音色の中に輪郭がある、と捉えると分かりやすいでしょう。
その輪郭があるから、澄んだ音色のまま、曲の勢いも担えるのです。
本人がピアノロックの新鮮さとして挙げたのは、速い曲を弾きながら歌う姿でした。
声だけを長く響かせるのではなく、演奏の勢いも一緒に届ける。
観客が楽しくなるなら、理論どおりであることより場が盛り上がる演奏を選ぶ、とも話しています。
「Password 486」のようなピアノロックでは、この歌と演奏を一つの働きとして考える姿勢が、声の強さを理解する手掛かりになります。
感情を強く見せないバラードも、初めから持っていた
初期の「Audition」でピアノに合わせて声を放つ一方、自作の「Waiting」には、淡々としたバラードの表情がありました。
同じ歌手の中に、外へ出す力と、気持ちを大きく飾らずに届ける歌が並んでいたのです。
強く歌える声を持っていることと、全曲で感情を強く見せることは別の選択です。
その選択が明確に表れたのが、2012年8月の番組『私は歌手だ2』で歌った「내 곁에서 떠나가지 말아요(私のそばを離れないで)」です。
光と塩の曲を取り上げたユンナは、今回は静かに語りかけるように歌うと予告しました。
声を張り上げ、高音で押し切る構成を選ばなかったのです。
競い合う番組で、目立つ強さを足さずに歌を成立させようとした。
感情を伝えるには声を大きくしなければ、という考えから自由な判断が見えます。
2012年8月19日放送分の公式配信音源。
「Parade」では、輪郭を押し出すより軽やかな質感へ
同じ歌手の別の面を示すのが「Parade」です。
ここでの声は、息を含んだ柔らかな質感を持ち、軽快な音作りに溶け込みます。
力のある歌手だからといって、どの曲でも強い音を保つ必要はない。
本人も、この明るい曲を歌う際には、かわいらしさを無理に演じて見えないか心配したと話しています。
10代の自分の再現ではなく、大人になった自分が無理なく示せる明るさが、歌の表情になっています。

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声の種類を増やすとき、曲の側から自分を変えてみる
『Someday』でユンナが求めていたのも、まだ使っていない声を見つけることでした。
「Telepathy」の速いピアノロックを軸にしながら、ジャズや電子音を取り入れた曲にも向かっています。
同じ歌い方をどこへでも持ち込むのではなく、違う音楽に触れたとき、自分からどんな声が出てくるかを探す。
一曲をうまく歌えない悔しさも、その発見につながる経験として語っていました。
『Peace Love & Ice Cream』には、重いギターを伴う「Break Out」、バラード、ダンス曲「Luv U Luv U Luv U」が同居します。
その背景には、強い人物像を守るために表情を硬くすることをやめた、という本人の気づきがありました。
声の色を増やすことは、出せる音域を増やすことだけではありません。
その曲の中で、どこまで違う表情の自分を許せるかという問題でもあるのです。
バラードを支えるのは、生まれ持った声と準備の両方
ユンナは、自分の強みを生まれ持った声だと考えています。
ただし『STABLE MINDSET』の制作では、その声に任せきりにはしませんでした。
ボーカルコーチと時間を取り、さまざまな声を試し、練習生のように練習したといいます。
制作全体を抱え込む時期から、歌う身体と声の調子に集中する時間へ切り替えたのです。
「On A Rainy Day」では、自分の声を待つ人へ、よりよい状態で歌を届けることが大切でした。
持ち味を毎回使えるようにする準備まで含めて、歌唱を考えていたのです。
言葉を覚えるだけでなく、誰として歌うかを考える
声に感情を載せる方法について、ユンナは、語り手がどんな空間にいるかを思い描き、その人物と一緒に歌うと説明しています。
自分の気持ちをそのまま強く出すだけでなく、歌の人物のいる場所へ近づいていく方法です。
『END THEORY』の「Stardust」や「Oort Cloud」を受け取る際にも、声の迫力と、誰のどんな思いを運ぶ歌なのかを一緒に考える入口になります。
「Oort Cloud」は、ユンナにとっても次の挑戦へ力を補う歌でした。
ただ元気よく聞かせるための設定ではなく、歌う人自身も、その物語から力を受け取っている。
歌う人と歌の物語が、互いを支えています。
2021年公開の公式ライブクリップ。
昔の歌を歌い直すときも、言葉への向き合い方は動きます。
2015年の日本公演の準備では、以前の歌詞が27歳の自分には違う意味で伝わってくると話していました。
覚えている曲だから同じように歌える、とは限らない。
旋律を覚え直す作業と、今の自分がその言葉をどう受け取るかという作業が、同時に起こっていたのです。

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バンドと一緒に歌う声と、作品の中へなじませる声
『MINDSET』の録音では、歌手と演奏者が別々のブースに入らず、同じスタジオで一緒に演奏しました。
ユンナは、後から直すことのできない緊張感を、経験豊かな演奏者たちとも共有したといいます。
歌だけを独立させて整える制作とは違い、一曲を通して、周囲と同じ時間を生きる声が必要になります。
「Wind」の歌を考えるときにも、この録音の成り立ちは大切な背景です。
一方、『GROWTH THEORY』では、声を前面へ置かないミックスも選ばれています。
声が近く強く聞こえるかは、発声だけで決まるものではありません。
歌の音色と、伴奏に対する音量や質感の作り方が重なって、最終的な距離が生まれます。
海の物語を聴き手自身の冒険にしたかったユンナは、その距離も作品の表現として扱いました。
全体へなじませる判断も、歌手の表現に含まれます。
ユンナの歌い方を捉えるなら、まず、芯のある声がどんな音楽の中に置かれているかに注目したいところです。
ピアノの勢いと並ぶ声、「Parade」の軽やかな声、演奏者と一緒に一曲を運ぶ声。
声の強さそのものより、その強さをいつ、どんな質感で使うかに、彼女らしさが現れます。
こうした選択が増えてきた歩みは、ユンナの歌唱変遷でたどれます。

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