みあ(三月のパンタシア)の歌声はどう変わった?苦しげな高音から、自分で選ぶ物語の声へ

2025年の三月のパンタシア10周年公演で歌うみあ みあ(三月のパンタシア)

三月のパンタシアの初期の声を、すこっぷは切なく儚いと受け取りました。
ところが、みあ自身は後年、当時は出しにくい高音を喉を絞めて出し、喉を痛めることが増えていたと振り返っています。
高音に悩んだ初期を持つみあは、2023年には、怒りを歌うことの楽しさも語るようになりました。

切なさを失わずに、身体に負担のある歌い方から離れること。
そして、自分で歌いたい人物や感情を選ぶこと。
みあの10年間には、この二つの変化が重なっています。

「day break」公式動画(2015年)。

「day break」で見つかった声と、歌い続けるための見直し

2015年、三月のパンタシアは「day break」で活動を始めました。
みあは、その制作前に「アイロニ」「サリシノハラ」などのカバーをすこっぷへ送り、低い曲から高い曲まで、声の幅を知ってもらおうとしています。
すこっぷは、その声に合うものとして、切なく儚い曲を作ったと説明しました。
最初から決めた歌手像を演じたというより、実際の声から、作り手が物語の輪郭を見つけた出発点でした。

ただ、歌っていた本人には別の問題がありました。
2025年の音楽ナタリーの取材によると、インディーズ時代は発声の仕方が分からず、出ない高音を喉を絞めて出していたそうです。
それが苦しげな切なさとして伝わった面もあったのではないか、とみあは振り返りました。

喉を痛めることが多くなり、ボイストレーナーを頼って、軽く抜ける歌い方へ変えます。
2025年時点では、クリアさや空気を含んだような感触を大切にしていると話しました。
切り替えた年は明らかにされていませんが、本人が語った前後の違いははっきりしています。
苦しさを声に残すことと、苦しい思いを歌で表すことを、同じにしない道を探したのです。

2017年の初ワンマン|届けていいと思えた先で、歌いたいことが増えた

2016年にメジャーデビューしても、みあの自信は十分ではありませんでした。
BARKSの10周年インタビューでは、表では楽しみだと話しながら、内心では、自分の音楽を肯定しきれない不安を抱えていたと明かしています。
大きな転機になったのが、2017年11月25日の初ワンマンでした。

その公演を取材した橋川良寛のレポートでは、朗読から「day break」へ入り、曲の間に物語を挟む構成だったことが分かります。
「ないた赤鬼、わらう青空」や「群青世界」にはアコースティックのアレンジも用意されました。
録音した曲を順に再現するだけでなく、一夜を物語として届けるライブを、最初のワンマンから作っていたのです。

そこで、曲に喜び、涙を流してくれる人を目の前にしました。
みあは、歌を届け続けていいのだと肯定された気がしたといいます。
それ以降、作家の物語を声で伝えるだけでなく、自分が歌いたい物語や、サビで強く訴えたい感情を提案する意欲が膨らみました。
客席から受け取った反応が、次に何を歌うかを考える力になっていきます。

「青春なんていらないわ」から「ビタースイート」へ|主人公を自分で決める

2018年の「青春なんていらないわ」は、その意欲が形になった曲です。
夏の企画を考えていたみあは、曲の雰囲気を口で説明するより、物語の筋を渡したほうがイメージを共有しやすいと感じました。
スタッフの勧めでその筋を小説にし、n-bunaが曲を、ダイスケリチャードがイラストを作る「ガールズブルー」が始まります。

この方法は、制作資料を増やすだけのものではありませんでした。
みあは、小説があると作家とのやり取りが具体的になり、録音でも、自分が歌いたいことを歌えている手応えを得られると説明しています。
完成した曲を自分なりに解釈するところから、歌う理由を先に作って渡すところへ、立場が変わりました。

2019年のアルバム『ガールズブルー・ハッピーサッド』に入った「ビタースイート」では、その違いが歌い方にも現れます。
主人公は、相手から離れられない自分を持て余す女の子です。
みあはすこっぷに、会えない寂しさだけでなく、離れられない自分への怒りや、やるせなさを描いてほしいと伝えました。

本人が歌で選んだのは、ほかの曲の女の子とは違う、気だるさや艶っぽさでした。
こうした恋愛を歌うのは初めてで、歌うこと自体も楽しかったといいます。
初期の「day break」を書いた同じすこっぷと、今度はみあが具体的に望んだ暗い物語を作る。
儚い声として見つけられた歌い手が、儚さだけでは収まらない人物を、自分から引き受けた曲です。

2021年の「夜光」と「101」|大きく歌う曲と、細かく捉える曲

2021年の両A面シングル「101 / 夜光」では、二曲で歌の優先順位を変えました。
自身の長編小説と結び付いた「夜光」は、ホリエアツシと作った曲です。
みあは、細かなテクニックよりもダイナミックに歌うことを重視したと説明しています。
物語の熱を、歌の大きな動きで届けようとしました。

一方、じんが手掛けた「101」は、アニメ『魔法科高校の優等生』のオープニング曲です。
みあ自身がバトル場面に合う曲を考え、じんへ声をかけました。
録音では、リズムがずれると曲のかっこよさが失われるため、技術的な正確さを重視したといいます。

特に難しかったのは、言葉が続いて息を継ぐ隙間が少ない、2番のラップ調のAメロでした。
じん本人の仮歌を参考にしながら歌い、Aメロの冷静さから、Bメロ、サビへと広がる流れを考えています。
同じ一枚に、勢いを前へ出す曲と、細かい言葉を捉えたうえで勢いを作る曲が並んだのです。

同年11月の有観客ライブでは、客席との関係にも変化がありました。
「はじまりの速度」の途中で紗幕を落とし、素顔で歌う姿を見せます。
みあは、物語の語り手としてだけでなく、みあとして思いを届けたい気持ちが強くなり、聴き手ともっと近い距離で音楽を渡したかったと振り返りました。
歌う内容を自分で作る歩みが、舞台で人と向き合う方法にもつながっていました。

2023年の「ピアスを飲む」|怒りにも、一曲の中で段階を作る

2023年に掲げたテーマは「青春を、暴く」でした。
「ビタースイート」のような暗い曲はすでにありましたが、それでも、三月のパンタシアには合わないかもしれないと避けてきた感情があったそうです。
みあは、青春のきれいなところだけでなく、人のみっともなさや滑稽さまで描こうとしました。

「ピアスを飲む」で栗山夕璃と制作した際は、主人公の気持ちを、怒り四割、悲しさ四割、諦めきれない思い二割と伝えています。
さらに、栗山の歌詞を受け取り、自分で情景を加筆しました。
曲を依頼したあとも、人物の気持ちを細かくすり合わせていたのです。

歌唱でも、怒りを最初から最後まで同じ強さにするわけではありませんでした。
みあは、一曲の中で怒りに段階を付け、終盤のまくしたてる展開に頂点を置く計画をしたと話しています。
主人公は、嫌われたくなくて不満を言えず、最後に爆発してしまう人物でした。
その不器用さまで考えて、歌のどこで感情を強く出すかを決めています。

関連する「レモンの花」には、その女の子へ片思いする男の子が登場します。
周りから見れば強すぎる執着でも、本人にとっては純粋な恋だという人物です。
こちらはみあが先に歌詞を書き、栗山が言葉の収まりやリズムの面から手を加えました。
小説の言葉を、そのまま歌へ移せばよいわけではないことも、共同作業で学んだといいます。

初期には、苦しげな声が切なさとして届いた面もあった。
ここでは、人物の言えない気持ちを考え、怒りの頂点や言葉の置き方まで選んでいます。
声に感情がにじむことから、一曲の中で感情の進み方を作ることへ、表現の選択が広がっていました。

10周年には、初期の曲と今の言葉を同じ舞台に置いた

2025年のベスト盤『多彩透明なブルーだった』は、明るい「彩青」と、暗い感情も含む「憂青」の二枚に分かれています。
暗い方向へ進んだから明るい曲を捨てたのではなく、両方を歌ってきた10年を、一緒に見渡す作品になりました。

8月16日の10周年公演は、「day break」から始まります。
後藤千尋の公演評によると、中盤では「ピアスを飲む」から「ビタースイート」まで、暗い感情の曲をメドレーで続けました。
「夜光」や「青春なんていらないわ」も含め、ベスト盤の全曲を披露しています。
時期ごとに増やしてきた人物と感情を、一人の歌い手が同じ夜に行き来する公演でした。

2025年の三月のパンタシア10周年公演で歌うみあ
2025年の10周年公演で歌うみあ。
画像出典:BARKSの公演写真

新曲「LuMiNA」に込めたのは、これからも歌い続ける思いです。
みあは、三月のパンタシアとして過ごした10年そのものを、自分の青春と捉えていました。
小説の中の誰かを描いてきた人が、ここでは聴き手と過ごす自分の時間を歌っています。

「LuMiNA」公式MV(2025年)。

公演のアンコールでは、みあ自身が「day break」と、2024年の「愛の不可思議」を重ねて振り返りました。
初期にはうまく伝えられなかった愛情を、聴き手との出会いを経て、まっすぐ歌えるようになった気持ちがあるというのです。

「愛の不可思議」公式MV(2024年)。

喉を傷めていた頃の声を、そのまま守ることが10年間の答えではありませんでした。
歌い続けられる声を探し、自分が伝えたい物語を作り、聴き手との関係から新しい言葉を得る。
切ない声として始まったみあの歌は、怒りも、明るさも、直接伝える愛情も選べるものへ広がっています。
一曲ごとの声やリズムの使い分けは、みあの歌い方で掘り下げています。

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