田中れいなの歌い方・発声|声の高さと息の表情を、曲の人物へ合わせる

2019年の取材記事に掲載された田中れいな シンガー
2019年の取材記事に掲載された田中れいな

田中れいなには、声量とともに、一節の個性や息の表情を大切にする考え方があります。
自分の声が細いと感じていた頃には、ソロの一節でどう個性を出すかを考え、舞台では息の音まで表現に使うようになりました。
曲に合う声を探し、いつもの歌い回しを控えることも選ぶ歌い手です。

声の高さを、自分のイメージと曲に合わせて選ぶ

グループ時代、田中には自分のスイッチを入れると声を高くする癖があったといいます。
2022年には、バンド活動を経て喉の調節ができるようになり、高橋愛・夏焼雅とのアルバムでも、曲ごとに違う人物を思い描いて歌ったと話しています。
「うどん!うどどん!うどどどどーん!」では少年、「わさびじゃないのよ鰹は」ではキザな人物というように、同じ作品の中でも役柄を変えていました。

高い声を出して自分らしさを示すだけでなく、その曲を誰が歌っているように聴かせたいかを考える。
人物像が変われば、使いたい声の表情も変わるという選び方です。

「愛のドンデン返し」については、本人にとって低めのキーで、素直に声を出せるところが好きだと話しています。
同じ録音に参加した高橋愛と夏焼雅には、歌うのが苦しいと感じるところもあったそうです。
曲の高さと、歌う本人が出しやすいと感じる声との関係は、一人ひとり違っていました。

2019年の取材記事に掲載された田中れいな
2019年の取材記事に掲載された田中れいな。
画像出典:写真掲載元

田中にとって高い声は一つの個性ですが、それだけを使う必要はありません。
自然に出せると感じる声も、人物を思い描いて選ぶ声も、曲の表現に使っています。

高音担当というイメージを広げた例には、LoVendoЯの「イクジナシ」もあります。
ぴあの取材で田中は、岡田万里奈と高いパート、低いパートを曲中で交代することを説明しました。
自分が高音を担当するという役割を固定せず、二人の位置関係を変えながら歌えることを楽しんでいたのです。

2022年の「ラフ・アンド・ピース」では、台詞も舞台や声優を思わせる複数の表現で試し、その中から採用するテイクを選んだと話しています。
声の種類を頭の中で決めるだけでなく、実際に録った表現を比較できる形にする。
録音での試行錯誤も、人物像を具体的な声へ変える方法になっています。

聞こえ方が変わる場所で、発声を探す

舞台では、いつものライブと同じ音の聞こえ方になるとは限りませんでした。
2019年の取材で田中は、慣れた音響の調整に頼れない場所でも歌えるよう、息の出し方や喉の開け方を試したと話しています。
客席に人が入ると伴奏や声の聞こえ方も変わり、以前は戸惑っていた場面に、落ち着いて対応できるようになったそうです。

とくに本人が挙げたのは、声が大きく聞こえる一方で、伴奏のリズムが聞き取りにくくなる場面でした。
自分の声が聞こえれば、それだけで歌いやすいとは限らない。
声と伴奏の両方を頼りにして歌っているからこそ、その聞こえ方の変化にも対応する必要があったのです。

息の音も、人物の気持ちを伝える表現にする

ミュージカルに取り組み始めた頃は、ゆっくりした歌や、リズムに乗る感覚で歌えない曲に難しさを感じていたそうです。
そこで表現の手がかりになったのが、歌詞の前後にある息でした。
悲しい歌にはため息を思わせる息を交ぜ、何かを告げる歌では、吸う息を大きくする。
田中は2019年、マイクに乗る息の音も、歌と一緒に感情を届けてくれるところが好きだと話しました。
息を使って気持ちを乗せられるようになると、しっとりした歌や悲しい歌も好きになったといいます。

声に交じる息まで、人物の気持ちを表す歌の一部として使っています。

この考え方の土台には、芝居と歌の境目を感じさせないようにしたい、という舞台での意識があります。
台詞の後で急に歌手の声へ戻るのではなく、その人物が気持ちを持ったまま歌い始める。
歌う直前の呼吸にも意味を持たせると、音程のある言葉へ移る前から、その人物の心が伝わり始めます。

2024年の本人ブログに掲載された田中れいな
2024年の本人ブログに掲載された田中れいな。
画像出典:写真掲載元

慣れたリズムを当てはめず、歌い始めを確かめる

「赤毛のアン」の曲を覚える際には、普段の感覚なら声を入れる場所で、まだ歌が始まらない難しさがあったそうです。
2020年の取材で前年の公演を振り返り、仮歌がなく、伴奏と譜面を頼りに、ピアノで一音ずつ確かめたと話しています。

耳で曲を素早く覚えられるという自信があっても、自分に馴染んだ流れと違う歌には別の準備が要る。
田中は歌い始める位置まで確認し、演技と合わせる通し稽古の前に覚えました。
人物の気持ちを自由に出すためにも、音と入る位置を先に身につけておく必要があったのです。

「少年」では、普段のビブラートを抑える

2014年の「少年」では、普段出るビブラートを抑え、声を置くように歌うことを目指しました。
本人が説明した、曲に合わせた録音での選択です。
ゆっくりした曲でもリズムは簡単ではなく、録音前にはとくに多く練習したとも話しています。
声の揺れを減らすことと、旋律を置くタイミングを覚えることを、同じ曲の中で進めていました。

曲ごとに別の歌い手を思い描き、その人ならどう歌うかを考え、そこへ自分の歌も交ぜることがあると話しています。
馴染んだ声の動きを控えたり、違う人物を思い描いたりして、曲に合う表現を探していました。

二人の歌い回しと、自分の一節の個性

LoVendoЯでは、二人の声質が異なることでユニゾンに厚みが出る一方、歌い回しを合わせる難しさもありました。
田中はBEEASTの取材で、別々なら問題なく歌えていても、ライブで重なるとうまく合わず、映像を見返して悩んだ経験を語っています。
気づいた点は岡田へ伝え、その都度合わせるようにしていたそうです。

一人ずつの歌が成立することと、二人の声が一緒に聞こえたときに成立することは、同じではありません。
相手の声を自分と同じにするのではなく、異なる声のまま歌の動きをそろえる。
ソロの一節で個性を出す力に加え、重なる部分では相手との関係を調整する力が必要になります。

2021年の本人ブログでは、声量を褒められた喜びとともに、昔の歌のほうがうまいと感じることもある、と書いています。
声が細いと感じていた時期には、一人で歌う部分でどう個性を出すかを考えていたそうです。
声量の変化だけで歌の良し悪しを判断せず、その一節がどんな印象を残すかまで見ているのです。

声の高さを選び、聞こえ方に応じて発声を探し、息や揺れ方を曲の人物へ合わせる。
田中れいなの歌唱は、声量に加えて、こうした声の表情を使うことで広がっています。

グループ、バンド、舞台でその表現がどう変わったかは、田中れいなの歌唱変遷でたどっています。

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