EPOは、自分の声が聞こえにくい場所で、声の出し方を確かめ直しました。
2026年放送の「tiny desk concerts JAPAN」での体験です。
声を力強く出す場面と、繊細に扱う場面を、聞こえてくる音を頼りに選び直す。
そこには、コーラスや共演を大切にするEPOならではの、周囲の音と声を結びつける姿勢も見えてきます。
「ハーモニー」(1985年「HARMONY」収録音源、2026年配信版)
自分の声を聞くための機器がない場所
この公演には、ヘッドホンやモニター用のスピーカーがありませんでした。
モニターは、歌い手や演奏者が、自分たちの音を聞くためのものです。
会場へ音を届けることに加えて、演奏する側にも音を返し、声や楽器を確かめる助けになります。
EPOはその機器がない中で、自分の声が確認できず、どこまで声を押し出してよいのかを探っていたと話しました。
慣れた曲でも、いつものように声が聞こえるとは限りません。
録音を聴いて、声を出す強さを確かめる
変わるきっかけは、リハーサルの録音を確認したことでした。
EPOは、思い切って声を出すと音が安定し、表現の種類も増えるという発見があったと述べています。
「ハーモニー」で、一つ一つの声を丁寧に扱う
1985年のアルバム「HARMONY」のタイトル曲を、この番組でも歌いました。
この曲では、長く音楽を共にしてきた清水信之、佐橋佳幸と、三人だけの編成になりました。
公演を伝えたレポートでも、にぎやかな空気から静かな場面へ移ったことが記されています。
EPO自身も、出す声に責任を持ち、これほど繊細に、丁寧に歌ったのは初めてだったと振り返りました。
EPOが大切だと語ったのは、完璧さを追う以上に、作品の意図を果たすために誠実に歌うことでした。
声を押し出せるとわかっても、すべてを同じ強さで歌い切るわけではありません。
「ハーモニー」の静かな場面で、一つ一つの声を丁寧に扱ったことも、その選択でした。
聞こえる音が、リズムの取り方にも関わる
声を確かめるために何を聞くかは、録音でも大切な問題でした。
清水信之は、EPOのデビュー・アルバム制作を振り返った文章で、まだ録音に慣れていない彼女が、ヘッドホンを使わず、壁越しに漏れてくるドラムを聞いて歌ったことを記しています。
そのため、周囲からリズム感を疑われたという回想です。
この話は、聞く音の条件と、歌のタイミングを切り離せないことを伝えています。
歌い手が何を頼りにリズムを取っているのかは、完成した録音を聴くだけではわかりません。
清水が笑い話として残した出来事にも、歌う環境を知る手がかりがあります。
「tiny desk」での探り直しも含め、EPOは声だけを単独で出しているわけではありません。
自分にはどんな声が聞こえ、周りの演奏がどう聞こえるのか。
その条件の中で出し方を選んだと知ると、同じ曲を違う場所で歌う意味も見えやすくなります。

画像出典:写真掲載元
コーラスでは、重なる声の一つを担う
EPOの声を知るには、メインの歌だけでなく、コーラスへ耳を向けることも欠かせません。
2023年のGOOD BYE APRILとの対談では、友人のアマチュア・バンドに参加し、山下達郎の曲を歌っていると話しました。
三人のコーラスの中で、自分は一番上のパートを担当しているそうです。
ここでは、声の役割そのものが変わります。
曲の言葉を一人で前へ運ぶ場合もあれば、ほかの声と重なり、一つの和音を作る場合もある。
コーラスを聴くときには、EPOの声を追う楽しさに加え、声が重なったときにどんな響きになるかを味わいたいところです。
バンドの目を見て、歌の流れを共有する
同じ対談で、ドラマーのつのけんは、EPOがリハーサル中、メンバーそれぞれの目を見てリズムを取り、演奏を導いていたと話しています。
歌の明るい勢いには、伴奏とのこうしたやり取りも関わっているのでしょう。
「土曜の夜はパラダイス」などを収めた『VITAMIN E・P・O』についても、EPOは自分の中のビートと合う感覚があったと振り返っています。
ソウルの味わいを、外から借りた雰囲気としてだけでなく、自分のリズムとして受け止めていたのです。
歌の元気さを考えるときには、この身体で感じる拍の流れも手がかりになります。
EPO自身は、歌詞を忘れることもあるが、ミスで萎縮して止まるより、仲間が受け止めた先で音楽が面白くなると考えていました。
一つの失敗だけに意識を奪われず、歌の流れを続けることを大切にしているのです。
華やかな歌を聴くときも、声量や高音だけでなく、伴奏との呼吸が途切れず続くところに注目できます。
自分の声へ責任を持つ丁寧さと、その場の出来事を仲間と受け止める余裕。
EPOが語るライブには、その両方があります。
「Gift」では、書いた曲を土岐麻子と歌う
別の歌い手と声を合わせた具体例には、「Gift ~あなたはマドンナ~」があります。
土岐麻子への提供曲として知られていますが、土岐の『sings the stories of 6 girls』には、EPOとのデュエット版が収録されています。
2024年の対談で土岐は、EPOの曲は自然に聴けても、実際に歌うと、思いがけないメロディーの動きがあって難しいと話しました。
さらに、二人で歌った版には、EPOが思い描いていたアレンジが形になっているとも説明しています。
作った人と歌う人が、同じ曲の中で声を交わす作品です。
聴き手にとっては流れるように感じられるメロディーでも、歌い手には細かな判断が必要になる。
土岐の言葉を踏まえると、歌が滑らかにつながること自体にも耳を向けたくなります。
「M」では、声を楽器として聴く
言葉やメロディーを追う聴き方を、さらに広げてくれる作品が「M」です。
公式サイトはこの曲を、幻の大陸をイメージし、EPOの声が楽器として参加する作品と紹介しています。
声も演奏の一部として風景を作る、という入口のある曲です。
意味のある言葉を探す耳から、声の響きそのものを味わう耳へ。
ほかの楽器と並べて声を聴くと、歌詞の内容や歌い上げる迫力とは別の魅力に出会えます。
リードを取る歌、コーラスとして重なる歌、楽器として景色を作る声を行き来できることが、EPOの表現の広さにつながっています。
2025年のラジオでは、いつも元気な自分でいなければという思い込みをほどき、好きな音楽を選ぶことで表現の幅が広がったとも話していました。
「ハーモニー」での繊細さも、バンドと楽しむ明るさも、声を楽器にする発想も、一つのイメージだけには収まりません。
曲の中で何を表したいかによって、声の強さと役割を選ぶ歌い手として聴いてみると、その多彩さが伝わってきます。
声に合う音楽を探してきた歩みと、声が出ない時期を越えた体験は、EPOの歌唱変遷でたどっています。







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